表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/200

結婚相手

案内役のメイドにいざなわれて

食堂へと四人で入ると、全員

一瞬、声を上げそうになった。

なんと、テーブルの最も奥の席に

豪奢な格好をした女帝の隣に

似合わない貴族服姿のマクネルファーが

居心地悪そうに座っていた。

テーブルの左右には恐ろし気な武人や

眼光鋭い大臣や高級官僚らしき文官たちが

綺麗に五人に分かれて着席している。


マクネルファーは俺たちを見つけると

「おーい!みんなーひさしぶ……」

救われたような顔をして、声をかけてこようとして

隣の女帝から

「おいマック、駄目だ。神聖なる会だと言っただろう?」

きつい口調で言われて、俯いて黙る。


トレイをもって立ち尽くしながら

「皇帝からマックとか言われてたぞ……」

「ごめん、料理に集中しすぎて悪魔センサー

 使ってなかった……予測しておけば……」

「こ、恋人っぽい雰囲気ですわ……」

「ふーむ、じいさんはほぼ枯れてるにゃ。エッチな雰囲気はしないにゃ」

「いや、気になってるのそこかよ」


皆で混乱しながら

小声で喋っていると、前方の立つメイドが

軽く咳払いして

「では、優勝者の方々による配食を開始いたします」

と毅然とした声で告げてきて

俺たちは慌てて、用意した二種類の食事を

皇帝とマクネルファー

そしてその臣下たちの席に分けて

一皿ずつ置いていくる


臣下たちのために作った料理は

決勝戦で使ったダイオウイカの残りの肉を

塩漬けにしていたものを焼いて

そして不味いスパイスを絶妙な加減で

振りかけたイカ肉のステーキである。

量が多いし、恐らく食べ過ぎると健康に悪いので

ファイナに食べさせるわけにもいかずに

処分に困っていたので

一石二鳥だった。


そして皇帝とマクネルファーへと送る料理は

俺にとっての一番旨い献立のひとつ

茶碗に盛り付けたご飯と、みそ汁

そして普通の焼き魚である。

頑張って野菜の浅漬けも作って添えた。


正直、和食なので通用するかは分からないが

だが、ここは捻らないで素直に

俺が旨いものを作ろうと

仲間たちと皆で下準備と、食材を揃えるところまで

頑張った。ただ、悲しいかな

味噌と白米は帝都でも手に入らなかったので


ご飯は麦飯で、味噌はピグナの

悪魔センサーを活用して、限りなく近い

大豆の発酵食品を使って

似せた味を出した。

試作を何度も繰り返して、

限りなくみそ汁に近い味になったので

それで良しとしたのだ。


配り終えたので食堂の端に四人で並んで

女帝たちが食べ始めるのを見ることになる。

女帝は、見たことのない味噌汁に

一瞬嫌な顔をして、そして顔をしかめながら啜った。

「あ、悪くないな」

と言うと、麦飯も食べ始め

そして塩味の焼き魚にも口をつけ

「旨い……」

信じられないという顔をする。


臣下たちはダイオウイカのステーキが

旨すぎるのか号泣している人たちも出始めた。

マクネルファーはホッとした顔で

静かに食べ始めて

「さすがじゃな」

と俺たちを見て頷いた。


女帝はすべて食べ終わると

自分の側近たちを見回して


「私はこのマクネルファー・ドラル・ナルアドと

 結婚する!良いか!反対は許さぬ!」


と毅然とした声で言い放った。

隣のマクネルファーは渋い顔をしている。


俺たちは目が飛び出るほど驚いたが

側近たちは料理のあまりの旨さで

それどころではないらしく、必死に頷くだけである。

女帝はニヤリと笑い

「現時点からこの情報は解禁とする。

 配下たちに伝えて、帝国中へと周知させよ!」

と言うと俺たちに

「おかわり!大盛りだ」

と告げてきた。


二時間後。

色々とあったが、一応

つつがなく捧食会は終わり

俺たちは近くの応接間で待たされることになった。

窓の外はよく晴れていて

俺たちも問題なく終えられたので

同じような気持ちである。


あとはワールドイートタワーに向かって……

「マクネルファーさんは、あのままで良いのでしょうか……」

ファイナが真面目な顔で言ってくる。

「いいんじゃないかにゃ?

 皇帝の夫だから、大事にはされるにゃ?

 あの爺さん、放っといたらろくな実験しないからにゃー」

「放っておこうよ。あたしたちは

 もう次の目的があるし」

「ゴルダブル様は……?」

「うーん……様子を見た方がいいかなぁ」

話していると部屋の扉が開いて

女帝とマクネルファーが一緒に入ってきた。


女帝は扉の近くのメイドに人払いをさせると

「……非常に旨い食事をありがとう」

マクネルファーと隣り合って

ソファに座って、俺たちに深く頭を下げてくる。

俺たちも下げ返すと、マクネルファーが

「マリーよ。ちょっと言わせてもらえんかの」

女帝に不満げな顔を向ける。

「結婚に了承した覚えはないといいたいのだろう?」

余裕の表情で女帝は見返して

「嫌だと言ってもしてもらうからな。

 私と冒険していた時の約束だ」

「いや、あれは若気の至りで……。

 今のわしには、どうしてもやりたいことが

 あるんじゃよ……」


「ちょっと待ってくださりますか?

 お二人は冒険仲間だったのですか?」

ファイナが首をかしげて尋ねて

女帝は頷き、

「ああ、そうだ。余が……いや、私が

 皇位継承権が低く、まだ自由だった時に

 帝国に遊びに来た同い年のマックと出会ってな。

 そして、世界中を冒険の旅に出たのだよ」

「何十年も昔の事じゃろ……」

マクネルファーは顔をそむける。


「その後、兄上や姉上たちが紛争や病気

 事故などで相次いで亡くなった後に

 私が、皇帝になることになり

 それからマクネルファーとは別れたのだが……」

「諦めきれなかったのですね?」

「そういうことだ。この様に各国のあらゆる法術を使って

 美容にも気を使い

 若々しい体を保ちながら、この時を待っていたのだ」

確かにマクネルファーと同年齢ならば

とっくにお婆ちゃんのはずなのに、妙に若い。

「マリーよ、ゴルダブル君とかどうかね?

 将来有望じゃぞ?夜の相手も若い彼なら……」

「だめだよ!」「だめですわ!」「エッチなのはいげないにゃあああ!」

三人から烈火のごとく怒られてマクネルファーは黙った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ