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パーティー

最奥には一メートルほど高い階段付きの

玉座が設けられていて

昨日会った白髪の女帝が、にこやかに

そこに座って、会場を見回している。

俺は玉座の階段下まで連れてこられると

女帝がパッと立ち上がり

「皆の者!昨日優勝したメルレンゲ侯国代表チームの

 主将、ゴルダブル氏が来てくれた!」

立食パーティーが行われて

楽し気にざわついていた会場が一斉に静まり

そして視線が俺の背中へと集まった。


「ゴルダブル!素晴らしい戦いであった!

 余はここに、チームゴルダブル全員への

 莫大な褒章を約束し、そして

 ワールドイートタワーへの道を開こう!」

会場中が沸き立っているが

俺は固まった動けない。

「そして、近日、さらに余への捧食会を

 行う!その場で余の婚約者も紹介しよう以上だ!」

女帝はそういうと、サッと玉座の背後にある

扉を開けて別室へと去って行った。


俺は慌てて、キクカから習った礼儀作法を思い出し

サッと片膝を立て座って、深々と頭を下げるが

もう遅い。というか皇帝が速すぎた。

こちらが受ける間もなく、優勝を称えられた気がする。

そのまま頭を上げるタイミングを逸していると

背後から、先ほどの中年の男の声で

「皇帝陛下とゴルダブル氏に大きな拍手を!」

そして、会場中は大きな拍手に包まれて

「以上でございます。褒美の品は宿泊されている場所へと

 我々がお届けします。お疲れさまでした」

俺は彼から出された手を握って、何とか立ち上がる。


深く頭を下げると

「パーティーはまだ続きますので、お楽しみください」

にっこり微笑んで、男は去って行った。

いい人だった……助かった。ギリギリ

恥をかかないで済んだようだ。

もう帰ろうと、会場端で寝ているはずの

バムに声をかけに行くと、居なかった。

仕方ないので、一人で中庭まで帰って

近くの係員に帰ると告げると

送迎用の蒸気自動車に案内してくれたので

それに乗って帰る。


ホテルの部屋へと戻ると

誰も帰ってはいなかった。

みんな、入れ違いでパーティーに向かったのか

それとも竜の巣から戻ってこなかったのかは分からない。

とにかく、疲れた。来ていたスーツを脱いで

そしてそのまま寝袋へと入る。

パーティーの喧噪と打って変わって静かだ。

ところで、なんでバムはあそこに

居たんだろうな……いや、深く考えるのは止めよう。


「色んな身分があるんですよ」

「そうなの?」

「そりゃ世界中に色々と」

「……!」

驚いて寝袋から飛び出るとバムがそこにいた。

皮パンと皮ブラのいつものバムだ。

「すいません。あんなにお酒が

 人間の身体に効くと、忘れていて」

「う、うん。なんで来たんだ?」

バムは俺の身体を柔らかく抱きしめてくる。


「やっとこれで

 二人きりになれましたね」

「……そうだけど、なんで……」

という俺の口を、バムはキスで塞いできた。

「言葉はもう要らないでしょ?

 ゴルダブル様を、他の人にとられるなら

 私が……」

バムから床に押し倒される。


「……いいのか?」

コクンと頷いたバムの体を触ろうとすると

近くの何もない空間がピシッと音がして

一気に裂ける。バムは慌てた顔をして

立ち上がり

「た、確かに催眠は消したはず……」

次第に大きくなっていく空間の裂け目から

出てくる虹色に全身が輝く女性……

いやペップだ……ペップが何と空間を裂いて

この部屋に戻ってきた。


「……キシャアァァ……エッチ……いけ……な……い……にゃ」

ペップの両目は真っ赤に光っていて

口を開くと、虹色の吐息が溢れてくる。

昨夜より、さらに化け物染みて見えるのは

気のせいではないだろう……。


そして異常な形相のペップは辺りを見回すと

バムに手をかけて

あっという間に空間の裂け目へと引きずり込んでいった。

バムの姿が消えると、空間の裂け目は自然に閉じて

俺は唖然として部屋に一人

取り残される。

なんだあの化け物……おかしいだろ……。

なんなんだよ……なんで毎回こうなるんだよ……。

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