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料理大会三日目、決勝戦

結局、昼過ぎまでファイナの介抱に

時間を取られることになった。

バムがわざわざ市場で買ってきた

腐りかけの果物や、不味いスープなどを

少しずつ食わせていると

ファイナは元気を取り戻してきた。


「お、お二人は、あのような辛い修行を

 毎日なさっているのですか?」

ベッドで上半身を起こして、尋ねてきたファイナに

「そうですよ。だから同行は無理だと思います」

はっきりと告げると


ファイナは何と首を横に振り

「私はこれでも、エルディーン王家の女です。

 やると決めたらやる。それがうちの家訓の一つです。

 必ず、辛い修行も乗り越えて見せます!」

決意はどうやら固いようだ。


とにかく決勝の時間が迫っているので

俺たちは出かける準備を始める。

立ちあがろうとしたファイナに

「休んでいてください」

と声をかけると、なんと、また首を横に振り


「決勝戦には私も従者として出場します!

 お父様とお母さまに無理を言って入れて頂いたのです。

 伝説の食王従者としての第一歩を

 我が国で、踏み出したいのです」

強い意志の顔で俺たちに言ってくる。


ああ、ダメだ。地獄の果てまで、この人ついてくるぞ……。

バムは俺にしか聞こえないように

小さく、ため息を吐いて

「三人で行きましょうか……」

肩を落とし、準備の続きにとりかかりだした。


ファイナが、かなり手間取って準備が長引いたので

三人で急いで、コロシアムへと向かうと

時間がギリギリだったようで衛兵たちから

素早く舞台へと先導される。


大歓声の中、俺たちはコロシアムの舞台が

綺麗に半分に仕切られたキッチンに立つ。

向こう半分では、決勝の相手チームが

食材の確認を丹念に行っているのが見える。


「緊張しますね。あ、アネット!ビオラ!

 私はここよー!」

ファイナはのん気に、舞台の端に早くも出てきた

多数の審査員たちに手を振りだした。

バムは、隣のファイナを見ずに


「決勝戦は、全審査員が遠目からですが、私たちの

 料理工程を最初から最後まで監視します」

「不正が無いようにだな」

「そういうことです。

 ところで今回の作戦ですが……」

今度は観客席の知り合いにまで手を振りだした

ファイナは放置して、二人で今度の料理を話し合う。


話が纏まったころに

「決勝戦開始!持ち時間は二百四十分です!」

試合開始の審判員の笛が吹かれた。


二人で作業を進めていると、ファイナがいきなり

造りかけの料理にスプーンを突っ込んで

そのまま自分の口に放り込むと

「うーん、まだまだですわね。

 また、味見が必要でしたら言ってくださいな」

そう言って、また友達たちに無邪気に手を振りだした。


わざわざついてきておいて、

味見しかする気が無さそうなファイナに

一瞬、イラっとしたがよく考えると

ある意味、最高の反則技がそこに居るのに気づく。

バムも察したようで

「いけますよ。これは」

ニヤリと俺を見つめてくる。


じっくりと時間をかけて、俺とバムは

これ以上は無いほどの不味い料理を作り上げていく。

五回戦で作った不味いホットケーキの上に

練り上げた生ゴミを、じっくりかけて

何種類も混ぜた不味いスパイスを振りかけて

さらに汚らしく混ぜるというものである。


出来上がったものを試しにファイナに

食べさせると、彼女の味覚では旨すぎたらしく

「んくっ……うぅ……こ、こんな至福の時が……」

泣き始めたので、二人でもう

その予感は確信に変わった。


「それまで!審査員の方々の試食タイムに入ります!」


審判員の笛が鳴り響き、

緊張の審査タイムの開始である。

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