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友達

翌朝、俺は寝られないまま

皆と朝食を食べて、さっそく五回戦の作戦会議に

加わる。キクカとクェルサマンも

当たり前のようにテーブルを囲んでいて

ピグナが次の相手についてまずは説明し始めた。

今回出場できない、ペップも話の輪に入っている。

ファイナは寝室で休養だ。


「優勝候補の一角だったチャ・ソヤ国代表を

 あっさり破ったウサギ戦隊が次の相手だよ」

「……戦隊?」

「ウサギ族だけで構成されている傭兵部隊です。

 南の島に集まって住み、そして雇われたら

 世界中に派遣されていくという、戦隊という名の傭兵国家ですね」

クェルサマンが補足してくれる。

今までも変な国が対戦相手だったので

一々驚くのはもうやめにする。


「ウサギ戦隊は、五人のウサギ族の代表チームで

 それぞれ赤青黄色緑桃色の五色のスーツを着ていて

 全員ハイラビット拳の達人だよ」

「にゃ、にゃんだそれ……ハイキャッター拳の

 パクリっぽい名前だにゃ……」

「とにかく、その武術の力で勝ちあがってて……」

そこでピグナが急に疲れた顔をして

「ダメだ。クェルサマン、あと頼む」

クェルサマンに説明を投げた。

昨日の疲労がまだあるらしい。


彼は苦笑いしながら

「ウサギ族、正式名称はハイラピッター族です。

 彼らはとても古くからこの星に住んでいて

 強かな種族です。今回の大会にも

 チームメンバー以外にも、七体の神を

 守護として連れてきています」

「なっ、七体……」

キクカがいきなり

「大したことない。神の名がついた

 古い亡霊どもの集まりだ。私に任せろ」


「……」

クェルサマンはしばらくキクカを見つめると

「いえ、一人で対処してはなりません。

 我々はチームです。入ったからには

 あなたも我々のやり方に馴染んでください」

「……」

キクカは黙ってそっぽを向いた。


「いや、やって貰えるのなら

 任せた方が良いのでは?」

そう俺が言うと、クェルサマンは難しい顔で

「逆の意味で心配なのですよ。

 キクカさんが強すぎて、やりすぎてしまわないか」

「……そうなのか?」

キクカ本人は首を傾げている。


そこから俺たちは

ウサギ戦隊への対策を話し合い、

疲れて寝ているファイナ

そして疲労が出てきたピグナは

の休養させて、午後はキクカと俺と

クェルサマン、そしてペップの四人で

買い出しに行くことになった。


腐っていない食材を選んで買っていると

キクカがポツリと

「……楽しいな……」

と呟く。ペップがリンゴを買い物かごに入れながら

「キクカちゃんは普段はどんな生活を

 してるんだにゃ?」


「沢山の臣下に囲まれて

 毎日葬式をしている。色んな国の遺体が

 運ばれてきて、休む暇がない」

「嫌にならにゃいのか?」

「これが、私の使命だから嫌にはならない。

 でも時々、ノルノルが私を気遣ってくれて

 こうして大会に出たりしてた」

ノルノルとは恐らく昨日見た死神長のことだろう。

そんな名前だった気がした。


俺が昨日、狂ってない味覚のものも

料理が作れると聞いたとペップに話すと

「おお!キクカちゃんのお料理食べたいにゃ!

 私たちの味覚のものもできるよにゃ?」

ペップ嬉しそうに尋ねると、キクカは小さく頷いた。


ホテルへと帰って、調理室を借りて

キクカと共に、四人で料理をする。

良い匂いが辺りに立食べ寄ってきて

旨そうな野菜スープが出来上がった。

「滋養強壮に良いもの使った。

 あの二人に食べさせるといい」

キクカはそう言いながら、ファイナ用に

味を調整したものも、出してくれる。


ペップが喜んで

宿泊室で休んでいる二人へともっていく。

キクカと俺とクェルサマンはさらに

二品ほど作って、麦飯も焚いて

宿泊室へと持って行き

皆の夕食とすることにする。

ファイナとピグナはそれぞれの寝室で

先ほどのスープを食べたらしい。


「……みんな、死ぬ前は

 こんな風に食卓を囲んでいたんだな」

キクカはそう言いながら、感慨深げに食べている。

「やっぱりあれかにゃ?

 偉いけど、友達いないタイプかにゃ?」

キクカは少し間を置いて、頷いた。


「じゃあ、今日から私たちが友達だにゃ!」

「……友達……」

キクカはペップの差し出した手を

握り返した。

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