寿命
「ありがとう」が最後だった。好きとの返事に、そう答えた先輩。軽くあしらわれた屈辱に、俺は唇を強くな噛んだ。
彼女とは、学校の廊下で出会った。すれ違った。彼女は覚えていないだろうが、かもしれないが。
俺は、その言葉を胸に焼き付けた。まるで鉄板に押し付けられるような鈍い痛みがした。
彼女には、彼氏がいた。顔も端正で、女子からちやほやされる。そしてその彼氏は先輩も魅了させたのだ。
顔も、性格もよろしい。勉強だってできる。俺にはないものを、あいつは全て持っていた。
正直、先輩を好きになったのは顔だ。だが、いけないか?顔から入ったが、愛してることには変わらない。
なにか、俺がいけないことをしたのだろうか。
俺は、踵を返して学校から出た。取り憑かれたように、俺は勝手に歩いていた。
自動ドアが開き、中へと足を進める。コーナーにあるのは、赤い栞。俺はそれを一枚買い、白い修正液も買った。
赤い栞の使い方は簡単。白い文字でその名前を書くのだ。この作業にも慣れたもので、俺はにやりとした。
川面に、栞を流せば俺は優越感に光ることができた。
虚しい?、今更さらだよそんなの。
川面に流されていくのを見ていると、過去を思い出す。好きな女の名前を書いて流したことを、フラッシュバックのようにありありと思い出すのだ。
そうすれば、彼女等は俺を最後に思い出しながら死んでいくんだ。