入軍の日
だんだん一話が短くなる不思議
手紙をよく読んでみると、ガーベラの槍へ勧誘されたのは獨だけではなかった。そこには、兄である汪久の名前もある。
汪久は魔法に関して本当に天才だった。獨が物心ついた頃には、誰にも負けないくらいの魔法を操っていた。亜人の産まれであったため国の大会に出場は出来なかったものの、もし魔法闘技で国体に出ていたならば優勝したのはほぼ間違いない。それほどの強さだった。
そして現在、二十一歳になった汪久はこれまで徴兵されなかったのが不思議なくらいの力をつけていた。父ももちろんそれを分かっていて、軍からの手紙を見せた時、ついにこの時が来たかといった風に頷いた。むしろ彼が驚いたのは、徴兵に獨の名前が挙がっていたことだった。
父は二人の入軍に反対しなかった。実を言うと、薊羽家が人間の戸籍を貰うためには獨と汪久のどちらかが入軍するだけでいい。それでも三人で話し合って、二人ともが入軍することに決めた。
汪久は、元々ガーベラの槍に憧れていた。根がやんちゃな彼のことだ。魔法を持て余していたのだろう。すぐに父に入軍すると言った。
獨がそれに続いた。このまま父に負い目を感じて生き続けるのが辛かった。そんなことを父本人に言うことなど、出来るわけがないけれども。
しかし三人とも、この時まだガーベラの槍について何も知らなかった。そこが想像以上の激務だということも。新兵の一年間の生存率が十パーセントに満たないということも。それは一切の情報が公にされていなかったからである。
「なぜ公開されてないかー。分かるやつはいっ!」
ガーベラの槍、入軍初日。縦にも横にもやたら大きな体格をした男の挨拶から入軍式は始まった。新入軍者はざっと五十人くらい。横一列に並べられ、その正面にちょうど先輩たちが並び終わったところでその質問が投げかけられた。
獨の隣に立つ桃色の髪の少女が手を挙げ、死亡率が高すぎて誰も入軍しなくなるからです、と可愛らしい声で答えた。
「新入軍者の死亡率は九十パーセント。昨年入軍して死んだ姉に聞きました」
獨は耳を疑った。九十パーセント。すなわちそれは、今ここに並ぶ新入軍者のうち来年あちら側にいるのは……たったの五人だということだ。
だがしかし一番驚かなければならないのは、その情報を知っていながら入軍してきたその少女の度胸である。どんな心情で彼女は入軍を決めたのだろう。そう思い横目で見た彼女の目は、強い光を宿していた。
案の定、新入軍者たちはざわめき立つ。一年後、五人のうちの一人になれる自信がある者など存在するのだろうか。いやそもそも、五人が生き残る保証など何もないのだ。しかし
「はいっ、皆さんが静かになるまでに先輩は五秒も待ちましたー」
やっと、と言うには短すぎるざわつき。そして、今なら入軍辞めてもいいよとの言葉にピクリとも反応しない新入軍者。先輩たちがニヤリと笑った。
そう。自分に自信の無い臆病者など、端からここに呼ばれやしないのだ。
「……ようこそ諸君。ガーベラの槍へ!」
名前:薊羽 汪久
オークから命名。花言葉は強さ。
性別:男
年齢:21
身長:187
体重:75
容姿:切れ目 イケメン
生日:9/27
魔法:火(身体強化、遠距離放射、近距離爆破)
身分:日本軍-ガーベラの槍
自称:俺
家族:薊羽 獨(弟)、(父)
性格:獨には甘い。得意げで恨みを買いやすい
長所:なんでもこなす。特に魔法は世界レベル
好き:獨(弟)
得意:戦闘