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学園編-2

もやもやと考えを巡らせていたグローディアをよそに、神父が「あ!」と声をあげた。


「二人とも、少し待っていてくれないかな?グローディアに渡したいものがあるのだ」


そういって教会の奥へと引っ込んでいった神父を見送ると、グローディアは深い深いため息をついた。



「母さん、そんなに不安がらないでよ、僕まで不安になってきちゃう」


くぼんだ目の上を撫でながら、ヴェインは自分の娘へとそう告げた。


「不安にもなろうよ、妾はこれから単身、妾を殺した王の息子と肩を並べて学びを共にすることになるのだからな…」


グローディアは、柱に手をつきさらに深いため息をついた。


グローディアがこの世に生まれ変わったことを知っているのは3人、

一人は生まれ変わらせた張本人であり、モルガンの魔術の師匠でもあるマーリン。


そしてそのマーリンが赤子のグローディアを預けた、モルガンが産み出したホムンクルスのヴェイン。

もう一人も、モルガンが産み出したホムンクルスで、今は王都に騎士団として詰めている、ヴェインの弟でありグローディアの叔父であるガレス。



ヴェインに関してはモルガンが国政を担っている時に、奴隷制度の是正のため視察に訪れた奴隷市場で、主から虐待を受けもう助からないであろうというところの少年を引き取って、

自身の血を使い創ったホムンクルスの器に魂を乗せ変えて産み出した存在だった。


グローディアが一番最初に産んだホムンクルスであり、自分の血肉を元に造ったため、見た目はグローディアそっくりである。



この国では直接命に作用する魔術は高等技術でもあり制限されており、使用する場合は法で定められた免許を持つ者が許可を得た状態でないと使うことができない。


中でも『魔術で命を産み出す』『魔術で魂を抜く』というのは禁忌とされており、それを成し遂げようとする者は「呪術師」の烙印を押され、捕まり次第処刑される。


それで過去のモルガンは処刑されたのだ。


グローディアがモルガンとして生前産み出したホムンクルス、つまり魔術で作り出した人造の人間は3人、3人とも自分の弟として世間には紹介していた。


ゲーム内のモルガンも、このホムンクルスづくりが原因で糾弾されるのだか、この中の二人は何を隠そう攻略対象キャラなのだから多目に見てくれても良かっただろう、と今だから思う。



「まぁ学園の騎士科の講師としてガレスもいるから何とかなるだろうが」


ともいえ不安は不安である、とグローディアは肩を落とした。


ヴェインはそんなグローディアの手をとると、目を伏せたまま呟いた。


「守ってあげられなくてごめんなさい……こんなとき、モードレットがいたら母さんを守ってやると胸を張っていっていただろうね」


ヴェインが躊躇いがちに口に出した名前に、思わずピクリと反応してしまう。


「ヴェイン、妾を守るというのは嬉しい、しかし、己の人生を一番に考えねばならないことは充分に理解せよ。折角妾が拾うてやった命、充分に謳歌するのだ、……モードレットのようにはなるな」


ヴェインの腕をはがし、たしなめるように頬を撫でた。

ヴェインはグローディアを見つめたまま、なにか言いたそうな顔をしていたが、

フ、と息をつくと困ったように笑った。


「母さんはさ、」

遠慮がちに紡がれた言葉、その先を促すかのようにグローディアは、ヴェインの額に掛かった前髪を指で払い、「ん?」と瞳をのぞきこんだ。


「母さんは、今でも国を憎んでいる?」


そういって真っ直ぐ見つめ返してくるヴェインは、幼かった頃のものとなんら変わらない、思わずグローディアは微笑んだ。



「妾は今まで国を憎んだことはないぞ、ただお互いが、お互いを好きになれなかっただけだ」



だから、と続けようとしたがその必要も無いだろうと思い直した。


「今度はただ、年老いて死にたいのだ」


一度目も、二度目も、人から与えられた人生の終わりを経験してここに立っている。

今は人並み以上の幸せも、名声もいらない、天国にも行けなくてもいい、ただ自分の人生を全うしたいというのが今のグローディアの望みだ。



「この話はお仕舞いですわ『お父様』笑顔で見送ってくださいませ」


「フフッ、そうだね、私の可愛いグローディア」


教会内から響く足音を聞き、グローディアはヴェインの頬から手を離すとニッコリと笑った。







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