5.5.一方その頃
今回は海斗視点ではないです。
サングリア。それは海斗がいる洞窟のすぐ近くにある街の名前だ。
「ありがとうございます……。ありがとうございます……」
「いや、礼はいい。これも依頼だからな」
礼を告げるのは妙齢の女性で、それを受け取ろうとしないのはあの女騎士、アリー・ブラッドであった。2人の間に挟まれているのは弓を大事そうに抱えた子供だ。
「ごめんなさい……。ありがとうございました!」
あの洞窟にいた時のたどたどしい言葉遣いはなくなり、はっきりとした言葉遣いをしている。
「その弓は大事にするといい。だが、武器だからな。使ってあげる事も武器を大事にするという事だ。私は出来ないが、弓は毎日射らないと感覚が鈍ると聞く。これから頑張るといい」
「はいっ!」
アリーはそう言うと2人に別れを告げて、その場を去った。その足でアリーが向かったのはギルドと呼ばれる魔物討伐組合だ。アリーがギルドに入ると大勢の人が声を大にして会話していた。
「ほらな、やっぱアリーならこれくらい余裕なんだって」
「つってもまだ新人だろ?」
「アリー、お疲れ!」
「お待ちしてました!」
アリーは喧騒をそれなりに流しつつ、受付に依頼達成の旨を伝え、ついでの情報も伝える。
「アンデッド、特にスケルトンが大量発生している。しかも集団も出来つつある。至急調査をお願いしたい」
「っ!スケルトンがっ!?分かりました!」
アリーの報告に受付嬢はギルドの奥へ急ぎ、そしてギルドの喧騒はさらに激化した。
「スケルトンってぇことはリッチか!」
「男性型か女性型かで強さが段違いだからなー」
アリーは男性型と女性型の所でピクッと反応を示す。自分が会ったあのスケルトンはどちらだっただろうか、と。アリーは骨格でスケルトンを見抜ける程人体に詳しいわけじゃない。だが、仕草や動きでなんとなく想像をつける。
(あれは恐らく、男性型な気がする)
言葉が通じるならそれなりの知能があるという事だ。知能がある女性がするような動きをしていなかったとアリーは記憶している。
「アリー!」
「コルナ」
ギルド内のむさ苦しい雰囲気とは一転した無邪気な女性がアリーに声をかけた。その女性の頭にはフサフサとした猫耳が、お尻には尻尾が生えている。
「依頼終わったなら一緒にお茶しよ〜」
「悪い。これからすぐに向かいたい場所があるのだ」
「えー……。じゃあ私も付いてく!」
「……場所は蔓延る死の洞窟だぞ?」
「うぐっ……。い、行くもん!」
場所を聞いてコルナの猫耳がペタンと下に向き、上向きだった元気な尻尾もしょぼんと下に垂れ下がる。
蔓延る死の洞窟とは海斗がいる洞窟に付けられた名前であり、初心者向けのダンジョンとしてギルドが管理をしている。蔓延る死の洞窟に限らず、ダンジョンと呼ばれる魔物が生息し、産まれ落ちる場所はギルドが管理、調査、間引き等を行なっている。これはまだ存命の初代ギルド長が決定したものだ。
「無理しなくともいい。アンデッドは苦手だろう?それに私はアンデッドに用があるのでな」
「大丈夫……。それにさっきの報告が本当ならアリー1人だと危ないじゃん!」
実際にスケルトンの集団に追い詰められていたアリーだが、あの時は子供が一緒にいたからである。1人でならあの程度の集団はアリーの敵ではない。
「それに私『治癒魔法』使えるんだから!アンデッドには効果的なんだよ!……怖いけど」
「はぁ……。わかった、付いて来てもいいが私の判断には従ってもらうからな」
「勿論だよ!でも、すぐじゃなくてもいいでしょ!今日1日はお休み!何の用があるのかは分からないけど、ちゃんとお休みしないと目的も達成出来ないんだからね!」
「……わかった。また明日な」
すぐに向かって海斗と交流を持ちたかったアリーだったが、コルナはこうなると止まらないという事を知っていたので、素直に従っておく事にした。
(色々と、持っておきたい物もあった事だ、ちょうどいいか)
そうして、アリーは1日の休みを取って、再び蔓延る死の洞窟へと向かって行った。
第4.5回目は猫耳と猫尻尾。
コルナのように感情で動くのもあれば、全く動かないのもいます。ただし、嬉しい事があると尻尾が激しく揺れるのは全員共通です。
第4.5回目はここまで。今回みたいにくだらない事もここに書いていきたい。じゃないと物語の設定がどんどん出ちゃう。……まあ、毎回このコーナーする必要はないんだけどね?それより早く書けという話ですし…。
もし面白いと思って下されば、ブクマ、評価の程、お願いします。励みになりますので……