3.スケルトンは敵
能力値で文字稼ぎして2千後半……。
大変です……。
「魔石があるのは確認出来たが、これ壊されたらどうなるんだ……?」
もし壊されて魔物生終了!とかだったらじいさんに『膨大な体力』を貰った意味が無くなるんだが……。いや、そもそもアンデッドになる確率を低く見積もってた俺が悪いんだけどさ。
「とりあえず移動するか」
いつまでもこんな所にいては危険過ぎる。武器としてさっきのスケルトンの骨と魔石のカケラを持って出てみよう。
一つしかない出口を進みながら俺は自分の身体について考える。
(俺の耳には俺がちゃんと喋ってるように聞こえてるが、どうやって声を出してるんだ?それと、アンデッドだからか腹が減るというような事もない。食べ物に追われないっていうのはアンデッドになっての良い点か)
そんな風に考えていると、左右に分かれた道に行き着いた。
「まあ右でいいか」
人は無意識的に左を選びがちらしいからな。なら俺は右を選ぶぜ!
右側の道を進み、しばらく歩くと、またしても音が響いてきた。しかし、今度の音はかなり多い。通路の陰に隠れて様子を伺ってみる。
「っくぅ……!」
いたのはだいぶ重そうな鎧を纏って剣と盾を持った女性とそれを相手取るスケルトンの集団だった。
(なにっ…!?スケルトンは仲間意識がないのではないのか!?)
さっき気さくに話しかけたのに攻撃された俺は目の前のスケルトンの集団に驚愕する。
(というか、あいつら手から火出したり弓持ってたり剣持ってたりで普通のスケルトンじゃない?)
気になって『簡易閲覧』をしてみた結果。
『スケルトン・ウィッチ』
体力5
魔力15
攻撃5
防御1
素早さ2
『生への残滓』『火魔法』
『スケルトン・アーチャー』
体力5
魔力3
攻撃2+4
防御1
素早さ2
『生への残滓』『弓技』
『スケルトン・ナイト』
体力10
魔力2
攻撃2+5
防御2
素早さ3
『生への残滓』『剣技』
スケルトンはスケルトンでもこいつらそれぞれ違う種類なのか!しかもそれぞれがそれぞれで能力値が違う!スケルトンはただのクソ雑魚じゃなかったんだな!
(さて、スケルトンの確認は済んだけど、あっちの女騎士の方はっと)
『アリー・ブラッド』
体力100
魔力30
攻撃15+75
防御15+120
素早さ80−55
『剣技』
ふむ……。この世界の一般的な能力値が分からないからなんとも言えないが、こんなスケルトンに苦戦するようには見えない能力値をしているのは確かだ。まあけど何となく俺の体力の多さはわかった。10万はやばい。
それで、なんで苦戦してるんだ?
「クソッいつになったら魔力が切れるんだ…!」
「ぼ、僕の事はいいから……」
「いいわけあるか!子供を死なせるなんて出来るはずないだろう!」
あの女騎士に隠れて見えないが会話的に子供がいるみたいだな。探検でもしてここに入って来たはいいが、スケルトンの集団に遭遇してしまって、そこを偶然女騎士が助けに入った、と。そんな感じだろう。
(さて……。俺はどっちに加勢すべきかな?)
本来なら魔物としてスケルトン側に付くのが正しい選択だろう。だが、自分は意思もあるし、目標は人間になる事だ。人間になりたい者が人間に害を為して果たして成る事が出来るのか?それに今ここでスケルトンに加勢してこちらには一体どんな利益がある?スケルトンはさっき自分に襲いかかって来た魔物だ。自分は喋れる分、まだ女騎士の方が後々の対応が楽そうではある。話し合いが出来れば、だが。それに人間をここで助けておけば何かしらいい方向に転ぶのではないか?なら、決定だろう。
今、自分の目の前がスケルトン集団、その奥に女騎士、子供という構図だ。多分、女騎士が本気でやればスケルトンは瞬殺出来る。でも、一発でも流れ弾が子供に当たれば死ぬ可能性を考えて女騎士は動かないのだろう。だから、女騎士はスケルトンの魔力切れを狙ってるとみた。
だが、女騎士の疲れ様からそれなりに時間は経っていると思われる。ウィッチの魔力が15しかないから本来ならもう魔力が尽きていてもいいはずだと思う。アーチャーの方も矢が尽きる気配は無い。というかなんか矢がアーチャーの手元に出てきている。あれも魔力を使った何かしらの技なのだろう、きっと。アーチャーの魔力は3しかないのにそれで尽きないのはおかしい。
(ならきっと、魔力を回復させる奴か手段があるはずだ)
まずは周囲を見回すが、魔力を回復させている様なスケルトンはいない。いるのはさっきの3種類のスケルトンだけであっている様だ。
なら何か使っているかといえば、スケルトン等は特に何かアイテムの様な物を使っている様子も伺えない。
(もしかして、『生への残滓』ってやつか?)
自分以外のどのスケルトンにも必ず備わっているそれはいったいなんなんだろうか?『治癒魔法』や『火魔法』『剣技』『弓技』と持っていれば何かしらを行える物と一緒の欄にあるのなら、それも何かしらを行え、何かしらの効果があると見るべきだ。それが魔力の回復、か?
(もし、魔力の回復の正体がその『生への残滓』なら)
他に増援はおらず、伏兵もいない。目の前には苦戦中の女騎士と子供。これは恩を売る絶好のチャンスだ!
能力値的に自分の攻撃じゃスケルトンどもをワンパンで倒すのは賭けになる。耐えられでもしたら反撃を食らう事になるだろう。体力はあるが、防御はないので突っ込むのは愚策だろう。
しかし!俺にはアンデッドに弱点である攻撃手段があるじゃないか!
そう、回復は自分にもかけるが、まず、他の奴にかける場合が多い!なら俺の『治癒魔法』も他へかける事が出来るはずだ!
「いくぜ!『治癒魔法』」
俺は通路の陰から飛び出し、スケルトン集団目掛けて『治癒魔法』を放つ。俺の手から放たれた『治癒魔法』は無事スケルトンに届き、その身を消滅させていく。ついでに俺の手もジワジワと痛みがぁぁぁぁぁぁ!?
「なんだ!?『治癒魔法』か!一体どこから!?」
女騎士はスケルトンがいきなり消滅していくのを見て、俺がやっている事に気付いた様だ。俺もスケルトン集団の中に入ったから俺がやってるとは思われてないみたいだけど!
数分でスケルトン集団は壊滅し、その場に残ったのは俺と女騎士と子供だけとなった。女騎士は途中から俺が『治癒魔法』を使っている個体だと気付き、驚いた後に、俺がウィッチとアーチャーばかりを狙っている事を理解し、遠距離手段を失ったスケルトン集団へ突貫してナイトの方を減らしてくれた。
俺の『簡易閲覧』じゃ現在値は分からないが、それなりに体力を減らされているだろうから痛みに耐えて女騎士と子供に『治癒魔法』をかけてあげると、ちゃんと効果はあったようで、二人とも元気になった。貰ってよかった『治癒魔法』である。
第2回目はスケルトンの各種類について。
今回登場したナイト、ウィッチ、アーチャー以外にも種類は存在します。スケルトンの未来は明るいです。彼らは進化前のスケルトン時代に剣を、弓を、魔法を練習した事でその存在へと進化します。ただ、弓は奇跡的に勝ったスケルトンが戦利品として、または落ちていた物を拾うなどしないと入手出来ず、魔法に至ってはスケルトンになる前の人間が魔法の才能を持っていないといけない為、もっぱらナイトばかりになります。ナイトは自分の骨をブンブン振り回していればいいので楽勝です。子供が木の棒とかでチャンバラごっこしたりするのと一緒ですね。
とまあ第2回目はこの辺りで。
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