26.5.指揮
一日遅れ申し訳ない!
今回短い&アリー視点です。
カイトがアンデッドメイルに向けて走っていく。その後ろ姿を私はただ見つめている。
「さて……」
私の現在地と周囲の状況を確認する。ウォーリアーに対処する冒険者、アンデッドメイルとカイト。その中間地点に私はいる。状況は劣勢。コルナは無事。
ただ冒険者達は皆バラバラに動いていて統率は取れていない。
「これを纏め上げろとは……。カイトも無茶を言うものだ」
だが、どうしてだろうな。やらなければいけないと思うと自然と笑みが浮かんでくる。
「皆!顔も手も足も、全てをそのままの状態で聞け!」
何処かで敵の親玉が見て、聞いているかもしれない。ならばこそ、私という存在を強く惹きつけなければいけない。
「私はアリー・ブラッド!ブラッド家の人間だ!今からこの場の指揮は私が執る。サングリアを想うのなら協力してくれ!」
どこからともなく、おう!といった声が聞こえた。私が指揮を執る事についての異論はないらしい。まあ貴族だと知っていて楯突く冒険者も珍しいものだが。しかも今は非常事態。無駄に争ってる場合ではないのを理解しているのだろう。
「この場に冒険者は何人いる?」
「あんた含め41人だ!」
41人……。多分カイトを含めていない数字だろう。だがカイトにはアンデッドメイルを抑えてもらわなければならない。頭数には入れない方がいいか。
「ならば東西南北にそれぞれ5人ずつ、北西、南西、北東、南東にもそれぞれ5人ずつで当たってくれ」
円で囲まれている以上はこちらも円で対処しなければ裏を取られる。細かい穴は出来てしまうがこれが完璧な筈だ。
「どうする?俺は奴の加勢でもするか?」
「あなたは……拳聖士のマッシュラー、だったか」
「ああ。他はパーティーでな。俺だけソロだ。あそこで一人大立ち回りをしているのはあのスケルトンであろう?いや、今はデミリッチだったか」
そういえばカイトが進化したあの場にこの人もいたか。カイトに文字を教えていたのもこの人だったな。
「あなたがこの場にいるとなると人数が1人足りない所があるのでは?」
「なに、俺1人がいなくとも4人で抑えられる様な者達がいる。そこは4人でも問題ないのでな。それにこのまま耐えるだけではジリ貧だろう?」
「そう、だな。ウォーリアーが倒せない以上、私達の内側にいるアンデッドメイルがいると戦線が崩壊する。カイトも強いが……」
「1人では、な。数の暴力で押し切られる可能性もあろう」
今、カイトは防御を固めている所だ。光の盾の様なもので自分とアンデッドメイルとの距離を開けている。『ドレイン』を使っているみたいだが……。
「攻め手が無くなってきている?」
「アンデッドメイルは学習する。どうやら自分の手をいくつか学ばれたようだな」
私達には当てないように配慮して『ドレイン』をしているな。まさか『ドレイン』で削りきるつもりか?
「これは……」
「どうやら、一気に追い込むつもりのようだな。自分ごと」
私達の身体が癒されていく。ウォーリアーが含まれないギリギリの範囲で『治癒魔法』が展開されている。
「カイト自身もアンデッドだろう!?『治癒魔法』なんて使ったら……」
「あぁ。だが、奴のローブ、あれがあるなら普通のアンデッドよりはマシな筈だ。元々『治癒魔法』なんて使えるアンデッドだ。耐性もあるだろう」
……だが、それでもアンデッドに変わりはない。自分にとっても毒な筈だ。
「マッシュラー、カイトを頼んでいいか?」
「任されよう。奴には借りがあるのでな」
そう言ってマッシュラーはカイトの方に駆けて行った。本当は私が行きたいが私が行ってもどうにもならない。それに、カイト直々に指揮を執れと言われたのだ。自分は自分の役目を果たす時だ。
「マッシュラーがいない部分だけは注意して戦況を見極めなくてはな」
コルナも大丈夫だし、頑張らなければな。
「基本は4人、1人の交代制で当たれ!常に誰か1人は休みつつも自分達の状況を把握しろ!自分達の両隣が危険だったら直ぐに援護に入れ!」
こっちは任せてくれカイト。だから、頑張ってくれ!