表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/38

26.学習だからこそ

問題の土曜は過ぎました。

一週間投稿頑張ってみますが、卒業控えてるとこんなにも忙しいのかってくらいに忙しいです。頑張ります。

「この場の指揮を頼みたい」


 別に俺は何の理由もなくアリーに決めた訳じゃない。


「何で私なのだ?ここには私よりも強い人もいるだろう」


「ああ、確かに『簡易閲覧』で見た限り、アリーより強いのはいる。でも、この中でアリーだけは()()だった。俺がなにを言いたいか分かるか?」


「名前、か」


 そう、なんて事はないただの名前。だが、世界が違えば名付けの仕方なんかも変わる。


「今見た名前を言うぞ。コルナ、タカキ、カリナ、クルト、ハンク、ニーナ、レン。誰も彼もがただそれだけの名でしかない。でもアリーは違う」


 俺が『簡易閲覧』で最初に名前を見た時、アリーの名前は『アリー・ブラッド』だった。そしてそれは今も変わっていない。


「アリーは貴族なんじゃないのか?」


「……あぁ、そうだ。別に隠していた訳ではないんだがな」


「いいよ、別に。わざわざ言う事でもないしな。でも、貴族は貴族の義務みたいなのがあるんじゃないのか?」


「私が冒険者をしているのもその義務の一環だ。貴族社会も甘くはない。胆力や精神力が必要だったりするからな。それを身に付ける為の冒険者稼業だ」


 ふむ。そんな理由だったのか。てっきり私は戦いたい!って感じで反対を押し切ってやってるのかと思ってたが。


「それでだ。こういう時、貴族か騎士団だか兵だか知らないが、戦場で指揮をする人間がいるんじゃないか?」


「そう、だな。つまり、貴族の私にここを纏め上げろと、そう言いたいんだな?」


「あぁ。パッと見ただけで連携が取れてないのが分かる。これじゃいつ崩れてもおかしくない」


 バキィィィと音が鳴る。俺がその音が鳴った方向を見れば『聖華樹』が折れていく所だった。


「悪いが、頼む。俺はアンデッドメイル達で手一杯だ。ここが崩れたら北も西も崩れる事になる」


 俺はそれだけ言ってアンデッドメイルの方へ走り出す。奴らのヘイトは完全に俺に向いている。アリーと一緒だとマズイからな。


「来いよ、鎧ども!また樹にしてやるぜ?」


 アンデッドメイル相手に煽りが通用するのか分からないが、それでもやらないよりはいいだろう。


「ヴヴヴヴゥゥゥ」


 アンデッドメイルの数は9体。武器持ちは5体。4本は『聖華樹』が取り込んだ事でアンデッドには毒の聖の武器と化している。あれは俺でも触れない。俺は聖属性を使えるが本質はアンデッドなのだから。


「『治癒魔法』」


「ヴゥゥッ!」


『神聖魔法』は使い過ぎた。学習が早い奴らのことだからもう『神聖魔法』自体を警戒しているはず。そう思って『治癒魔法』を使ったが躱された。


 奴の大剣を剣で受ける。なんとか受け切るが受け流す事は出来なかった所為で剣が傷む。


「くっ……。お前らと膂力勝負とかしてられっかよっ!」


『神盾縛』を複数展開。俺を囲むように、そしてアンデッドメイルは通れない幅になるように配置していく。大剣は縦に振れば幅的に通るが、距離を離せば俺に届かない。勿論投げてくればそうはいかないが……。


「投げられないよなぁ?」


 既に武器を失ったアンデッドメイルが4体。そいつらは大剣というリーチを失った所為もあって殴る事しか出来ない。でもそんな距離に来させる程俺も甘くないし、何より他のアンデッドメイルの邪魔になる。それに動きを見ればわかる。あいつらは大剣を持った動きが主体で武器無しでの動きが出来てない。


「学習する事が必ずしもいい事じゃない。そうやって手を狭めるのも学習のせいだからな」


 武器を手放さないと攻められない。だが、攻めたら後の攻めに続かない可能性がある。魔法もないお前らには今の俺を攻められないよ。


「『ドレイン』『ドレイン』『ドレイン』」


 とにかく『ドレイン』を『神盾縛』の間から連発していく。アンデッドメイルに当たるならいい。周りのウォーリアーに当たるでもいい。味方、周りの冒険者にだけ注意して『ドレイン』しまくる。


『ドレイン』は受けると対象から体力値を継続的に奪い、自分の体力値にするものだ。これは自分の体力値が減っていない時でも奪い続ける。俺の回復手段はこれしかない。


 俺の攻撃と防御値ではアンデッドメイルと剣を交えただけでこっちの体力値が削れる。俺の体力値だと東地区でのアンデッドメイルとの戦いを思えば体力値が少し削れるだけでも危うい。一発死があり得る。


「でもだからって減らさないって訳じゃないのが学習する()()って奴だろ」


 俺たちの位置関係は全体を円で囲むようにしてウォーリアー。それらに対処するように冒険者。そしてその内側に俺とアンデッドメイル。そうなるように少し調整したからな。


 だから、ウォーリアーに届かないくらいの範囲で『治癒魔法』を()()すれば──


「ぐっう゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁ」


「ヴヴヴヴゥゥゥゥウウウ」


「回復してるぞ!」


 俺とアンデッドメイルには毒が、冒険者には薬が齎される。ウォーリアーを殺せばせっかく無力化してくれている奴らが無傷で戻ってくる。そんな事になったら絶望的だ。だからウォーリアーは含まなかった。だが、殺さない程度には体力値を貰っていく。


「さあ、癒して、やるぞお前らぁ!」


 お前達からも体力値を貰うが、どちらが先に体力尽きるか、勝負と行こうじゃねぇか!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ