23.東地区防衛戦7
遅れて申し訳ありません。
東地区はこれで終わりです。
「どうだ?」
「うまいこと釣れましたねぇ!」
俺たち3人は今、東地区から中央区、ギルドがある方へ足を向けている。
鍛冶屋の前の人形は防衛用としてそのままに、さらに監視用として小さな指人形程度の大きさの人形を各所に配置している。人形の得た情報はそのままサイサイに流れ、サイサイから俺たちに伝わる。
俺が確認したのはスナイパーの動向で、奴はうまいことこっちの策に乗ってくれたらしい。鍛冶屋から出てきて俺たちの方を狙うと同時に俺たちと反対方向へ向かっている。
確定ではないが、矢が目である事の信憑性も少し高まった。
「なら作戦通りに行くぞ」
「了解だろうて!」
3手に分かれる。ガンテツはそのままギルドに、俺とサイサイは迂回して奴の下へ。
「ふっ!やっぁ!とうっ!だろうて!」
明らかに距離を離しているガンテツを狙って矢を放ってきているが、それも読み通り。情報は武器になる。だからそれを潰そうとするし、潰そうとするのが分かる。
ガンテツが狙われるなら、ガンテツへの偏差射撃が行われるだろう事は想像出来る。だからそこは対処済みだ。避けられないものはアンデッドメイルの鎧をバラしたもので受ける。あの鎧の耐久度は倒した後でも健在だった。一発だけなら無傷で矢を受け切れる。
「さぁその姿、見せてもらおうか!」
スナイパーの位置はリアルタイムで確認出来る。普通の人形とは違うチビ人形をバレないように各所に配置している。だからこそ、地区の構造も把握しているし、どこに向かっているのか、そこへの先回りの仕方もわかる。
「『治癒魔法』」
「『ッ!』」
接敵した瞬間に治癒魔法で先制攻撃。直撃はしなかったが腕に掠った。
「『オマエェ』」
「よぉ、よくやってくれたな。お返しはどうだ?」
「『シネ!』」
おっと前にも撃てるよなそりゃあ。ただ、そこまで速くない。あの狙撃に比べれば雲泥の差だ。
おっと、『簡易閲覧』
『リッチ・スナイパー』
体力100
魔力50
攻撃50+20
防御15
素早さ30
『生への残滓』『弓技』『矢視』
ふむ?あんまり強くない?攻撃値は奴の方が高いが他の値は装備を含めれば俺の方が全て高い。あの上からの狙撃も『弓技』によるものだろうし、『矢視』も推測通りの矢から視界を確保するものだろう。
「これならアンデッドメイルの方がまだ強いんじゃ?」
「『コロス!』」
おや、地雷だったらしい。だけどもお前はアンデッドメイルとの戦いを見ていなかったのか?
『神盾縛』
俺の前に透明な輝く正四角形が形成される。それが矢を受けた瞬間に正四角形が崩れ、細い鎖状になり、スナイパーの身体を縛り付ける。
「『グァァァァ』」
「サイサイ!」
スナイパーの背後からサイサイが近づくと、その手に持ったハサミでスナイパーの腕を切り刻む。
「『ギギャッァ』」
スナイパーが持っていた弓を腕ごと落とす。これで奴はもう弓を使えない。弓を使えない射手に的同然だ。
「そろそろ死ね!『剣技』」
「『グゥゥゥゥゥ『弓技』『弓技』!』」
腕を失ったスナイパーの傍らに矢が出現し、俺とサイサイ目掛けて射出される。『弓技』の『矢生成』と『矢弾』だな。カオリからその存在についてはしっかりと聞いている。
『矢生成』は魔力を消費して矢を生み出し、『矢弾』は周囲にある矢をただ直線に射出するというだけの『弓技』だ。
「その二つを使ったなら『曲射』も使わないとだぜ素人」
直線に来る矢を全て避け一歩前へ。それだけで空いていた距離が詰まる。さっき発動した『剣技』の『加速』だ。その効果は至極単純、一回分の行動を加速する。今回は俺の踏み込みを加速させて距離を詰めただけだ。さあアンデッドメイルでは活躍させてやれなかった『剣技』の見所だ!
「『クロスエンド』!」
「『ガッ……』」
右斜め斬り下げ、左斜め斬り下げを連続で即座に行う『剣技』。バツ印が傷跡として残るから『クロスエンド』。
そんな『クロスエンド』をくらったスナイパーは『神盾縛』のダメージ、サイサイのハサミのダメージもあり完全に息絶えた。
「これは貰っておく」
スナイパーの胸から生える魔石を回収する。その魔石は今までのどの魔石よりも大きい。こんなんでも強かったという証だ。実際、こいつは距離を詰めないと厄介なことこの上ない。スナイパーというだけあって遠距離主体の狙撃手なのだから当然といえば当然か。その代わり距離さえ詰められればその対応はお粗末なものであったが。
「終わりましたねぇ!」
「ああ。ガンテツに連絡を。それとそのままガンテツとギルドに向かって報告をしてくれ。俺はそのまま別の地区へ向かう」
「わかりましたぁ!ではこれはそのままにしておきますねぇ!」
そう言ってサイサイはチビ人形を数体預けてくれた。
「いいのか?」
「連絡が取れた方がこっちとしてもいいんですよぉ!ギルドにも提供する予定ですしぃ。連絡中継役として活躍しますよぉ!」
「ありがたい。話はまた今度な。ガンテツも交えて」
「えぇ。お気をつけてぇ」
サイサイと別れ、俺は次の地区へと向かう。とりあえず街の門がある南地区だ。




