14.気になる事
「なあ、少しいいか」
模擬戦を終わらせてすぐ俺はヴェルヘルミナ君へ詰め寄った。聞かないといけない事があるのだ。
「なっ、なんだよっ……」
先程の急な動きの変化を気にしているのか、それとも俺を警戒してか、少し後ろに体重が傾いているヴェルヘルミナ君に俺は一番聞きたい事を聞いた。
「さっきの剣が光ってたあれ、あれは『剣技』でいいんだよな!?」
「そ、そうだけど……」
やっぱりか!じゃあ『剣技』とかは剣の技術とかじゃなくて剣の技って事だ!種類があるのかわからないが木製の大盾を木剣で砕ける一撃の強さが出せるのは分かったし、何としても取得しておきたいな。
しかし、まだまだ試せていない武器も多い。弓なんかもいいし、鞭や薙刀なんてのもある。鉄扇(まあ模擬戦では木扇だが)もあるらしいし、選り取り見取りで困るくらいだ。木扇ってどう使うんだろうな……。
「お、おいっ!」
「ん?何だ?」
まさかヴェルヘルミナ君の方から声をかけてくるとは。いったいどうしたんだ?
「お前は、聞かないのかよ?」
「え?何を?」
別に取り立てて聞くような事ももう……。あ、そうだそうだ。これを聞いとかないと。
「『剣技』とか『弓技』とかって武器使い続ければ手に入るのか?」
「えっ?あ、そうだけど……。じゃなくて!」
うん?わからん。ヴェルヘルミナ君は俺に何を聞いて欲しいんだ?
「その、勇者だ、最強だ、とか言っておいてあんな動きして、その理由とか、聞かないのかよ?」
あー、なんだ、そのことか。まあぶっちゃけ気になるっちゃ気になる。
「聞いて欲しければ聞くし、言いたければ言えばいい。でも、俺から聞こうとは思わない」
これがなんて事ない事情なら俺だって普通に聞く。でも、話しかけた時に警戒するかのような態度を取る程の事なのだ。なら、無理に聞こうとは思わない。俺に徳がある訳では無いだろうしな。
「そう、か……」
俺の言葉に驚き、目を見張ったヴェルヘルミナ君はそう言い残して、闘技場から去って行った。うーん、聞いて欲しかったのか?いや、でもなぁ……。
「よかったんですか?」
「何がだ?」
「彼の事情、調べようと思えばギルドでも調べられます。彼の能力値、低いには低いですけど、『剣技』を使ったスタイルは中々のものでした。動いて、戦力として当てにするのもありですよ?」
カオリもヴェルヘルミナ君の能力値知ってたんだな。いや、それで俺にぶつけるのもどうよ。
「あれは個人の問題だろう。俺たちが口を出していいもんじゃない」
下手な口出しは余計な問題を抱え込む事になる。俺はカオリの言う通りならリッチに殺される運命が待っている。時間がないのだ。時間は有意義に使わなければならない。
「カオリ、やるぞ」
「はい、わかりました。それより、その、手を元に戻した方が……」
あぁ、そういえば斬られた手を繋いでなかったな。……これ、骨まで綺麗にスッパリいってるけど治るのか?
「あー、『治癒魔法』で骨を繋げば多分土の部分は自然に戻ると思います」
つまり俺に痛い思いをしろというわけだ。というかアンデッドなのに『治癒魔法』で骨繋がるんですね。
とりあえず『治癒魔法』を使い、痛みに耐えて手を元通りに復元させる。でも、少し違和感があった。一番初めに自分にやった時より痛くなかったのだ。ホーリー・デミリッチになった影響か、それとも進化していった影響か、どちらかだと思う。アンデッドの弱点が弱点じゃなくなるって凄くね?
「さて、気を取り直してやろうか」
「はい、わかりました。他の皆さんは上へ。そろそろエンヴィーが皆さんを呼ぶはずですから」
そう言われた周りの人間がみんな上へと駆けて行く。ギルドという組織だからお金が発生するんだろうな。だからみんなしてああやって我先にと行くのだろう。
「見る人もいなくなりましたし、実戦形式でやりましょうか。その方が海斗様の為になりますし」
人がいなくなった途端様呼びかい。だが、その配慮はありがたいな。
「いいぞ。ただ新しい武器を用意するのも面倒だから武器は木製の物を使用するぞ」
実戦形式といってもここでお互いの身に何かあったら問題だからな。使用感を味わうなら木製で十分だ。
「いつでもどうぞ」
ほう、舐めてくれるじゃないか!
「始め!」
カオリと海斗の戦闘はカットで……。いや、まあ書いてって言われたら次の話として書いて投稿しますけどね……。