13.ヴェルヘルミナとの模擬戦
ライブとかゲームのイベントとかやってたら書くの遅くなった……。いや、学校の方とかも忙しかったんですよ?本当ですよ?
ヴェルヘルミナ君と戦うのにギルドの地下に通された。どうやらギルドの地下が闘技場になっているらしい。なぜそんな作りにしたのかカオリに聞いてみたら、「共同製作者の意向です」と言われた。闘技場作らせるとかどんな戦闘狂だ。
「さて、俺のために倒されろ!」
「待て待て。カオリ、ちょっと」
模擬戦で実戦用の武器は使わない。その為に模擬戦用の武器を用意してもらう必要がある。全て木製で安全性も確認済みの物をな。防具に関しては自身が使っている物を使用する事にした。その方が動きの確認がしやすいからな。
「確かに持ってきましたが、本当にやるんですか?」
「ああ、もちろん」
俺の後ろには数多くの武器が用意されている。ヴェルヘルミナ君には剣が大量だ。俺はこれからやる模擬戦で色んな武器を試そうと思っている。というのも、攻撃手段の数の他に女騎士やヴェルヘルミナ君が持っている『剣技』というのが気になっていたからだ。俺は特にそういったものを持っていないし、スキルも進化した時にしか増えていないが、『剣技』などなら努力次第で手に入れられるものなのではないかと思ったのだ。進化しない人間が持っているスキルな訳だし。
そして『剣技』の他にもスケルトン・アーチャーは『弓技』というのを持っていた筈だ。なら武器の数だけそういった対応するスキルがあるのではと考え、自分が一番使いやすかったものを習得しようと考えたのだ。
「自分の後ろに用意された武器は幾らでも使っていいですが、武器が尽きるか、降参するか、私が戦闘続行不可能と判断した場合は模擬戦を終了します」
審判はカオリにやってもらう。本当ならエンヴィーとかいう人の方がカオリより中立的な立場なのだが、カオリは最高責任者だし、エンヴィーとかいう人はカオリに色々仕事を押し付けられていて、頼める雰囲気ではなかった。
「それでは始め!」
カオリの合図で模擬戦が始まった。俺が最初に選んだのは片手剣。
ヴェルヘルミナ君が開始と同時に真っ直ぐ突っ込んできて、上段から剣を振ってきたので、俺は女騎士がやっていた技術を真似るように剣を斜めにし、受け流しを試す。しかし、見様見真似でしかも初めてやる事が当然上手くいく筈もなく、腕に剣を受けた衝撃が走る。そして、剣先を下に向けていたために失敗した時の致命的な隙が出来る。
「とどめだ!」
「それは早いぞ!」
これが実践なら確かに俺は死んでいたかもしれない。武器も魔聖のスタッフしか持ってないのだから。しかし、これは模擬戦で、しかも武器を幾らでも使える。なら当然片手剣以外も持っているに決まっているだろう?
俺は空いている左手を腰に回してそれを掴み、ヴェルヘルミナ君の剣の軌道上に置く。俺の身体は魔物だ。右手でも左手でもそこまで握力も筋力も変わらない。だから、一回なら受ける事が出来る。
「なっ、短剣!?」
「おいおい、驚く暇なんかあるのか?」
片手剣は既に下からヴェルヘルミナ君の右横腹に向けて流れるような軌道を描いている。ヴェルヘルミナ君の剣ではこれは防げない。
「ぐっ……」
短剣で剣を受けたから体重や力があまり入っていないとはいえ、模擬戦用の木製の剣を腹にまともに受ければ痛いものは痛いだろう。証拠に、右横腹を押さえたヴェルヘルミナ君が蹲っている。軽装なのがいけなかったな。
「模擬戦じゃなかったら今ので腹を裂かれて終わりだったぞ」
片手剣と短剣の変則双剣だがなかなか面白い。普通の双剣はどうしても剣の間合いで相手をしないといけないが、これは剣の間合いを詰めて短剣の間合いで相手をする事もできるし。
「まだ、だ!」
「おう、頑張ってくれよ」
片手剣と短剣は一旦おしまい。今は色々と試す場だ。
次に手にしたのは斧。剣より大きく取り回しが難しいし、両手を使わないとしっかり持てない武器だ。
「馬鹿にしてるのか!」
「何がっだよっ!」
痛みに歪んだ顔をしたヴェルヘルミナ君が振るった上段斬りを力一杯に斧で押し返す。本当ならここで斧を捨てておっさんみたいに無手でやりたかったが、それをすると武器で危険を極力無くしている意味が無くなるので、仕方なく距離を取る。
そして武器を交換する。次は杖だ。といっても、杖に関しては魔聖のスタッフを使っているので、取り回し等は問題ない。が、今回は杖で戦うわけではない。
「っ、また!」
「今の上段、あんまり力が乗ってなかったからな。俺からのプレゼントだ。『治癒魔法』」
ヴェルヘルミナ君の右横腹に治癒魔法をかける。これで先程受けた痛みは消えた筈だ。
「何なんだよ!何で治した!」
「手負いとやっても俺の意味がないだけだ。やるなら俺にも利がないとな」
正直、今までの打ち合いでヴェルヘルミナ君の技量はある程度把握した。低い能力値を補うだけの技量もない。それは剣や斧を初めて使った俺が相手でも剣を通せない事が証明している。能力値的には素早さで負けているが、そこまででもない。しっかりと対応可能な速度だ。
「ほら、来いよ勇者様。誰よりも強いんだろ?」
「このっ……!後悔させてやる!」
ヴェルヘルミナ君が持っている剣を俺の方に投げ、後ろに下がる。俺は来た剣を杖で弾き、杖を投げ捨てる。わざわざ持ってた武器を投げたんだ。何かある筈だしな。だから俺も武器を変える。今度は盾だ。それも大盾。
「行くぞっ!」
ヴェルヘルミナ君が剣を腰に2本、手に2本持って駆け出して来る。俺はしっかりと地に足を付け、ヴェルヘルミナ君の初手を見る。すると、ヴェルヘルミナ君の左手に持った剣が光り始めた。
「待ちなさい!」
「止めるな!」
それを見たカオリが模擬戦を止めようとするが、俺はこれに挑みたい。カオリも俺を様付けしてるくらいだからな、俺の言う事は聞いてくれる筈だ。
「せぇぇぇぇぇい!」
ヴェルヘルミナ君は左手の剣をまたしても上段から振るう。流石の俺でも3回目ともなれば受けずに避ける事は出来る。出来るが、今回は受ける。その方が、面白い!
「っ……!」
受けた大盾がミシミシという音を立てる。しっかりと受けた筈の大盾は剣の威力が今までのものとは違う為か、受けた部分からひびが入っていく。
「うぉぉぉぉぉ!」
このままではマズイと思った俺はすぐに大盾から手を離し、その場を離脱する。その瞬間、抑えていた剣の勢いが一気に解放され、大盾が粉々に砕かれた。そして、それにとどまらず右手に持っていた剣を投げてくる。
俺はその剣をヴェルヘルミナ君から目を離さないように上半身を捻って避ける。ヴェルヘルミナ君は俺が避ける間に腰の剣を引き抜いて距離を詰めて来ている。ヴェルヘルミナ君の右手の剣が先程のように光り輝き、前に進む勢いを乗せた突きを放ってくる。俺はそれを右に飛ぶ様に避けるが、ヴェルヘルミナ君が左手の剣を薙ぎ払う様に振るうと、避けきれずに聖魔のローブが破れ、俺の左手が宙を舞った。
「っ!海斗様!」
おい、こらカオリ!様付けになってるぞ!と突っ込む余裕もなく、俺は捨てた短剣を口に咥え、片手剣を右手に持って体制を立て直した。
「血が……出ない……?」
俺の左手を見て、ヴェルヘルミナ君が驚愕している。まあ、当たり前か。ここに来ている他の奴らは俺が魔物だと知っている。しかし、ヴェルヘルミナ君は俺が魔物だという事は知らなかったし、今の身体は土で構成されている。実際に血が通っている訳じゃないから血が流れる様な事はない。
「お前……魔物、アンデッドなのか!?」
血を流さない人間などいない。そして、魔物でも血を流すのはいるだろう。なら、その答えに行き着くのは当然だろうな。
「……今は模擬戦中だろ。話は後だ」
「あ、あぁ…」
だが、その後のヴェルヘルミナ君からは先程までの様な覇気が感じられず、動きも悪くなってしまい、これでは話にならないとカオリに中断してもらった。
魔物相手だとバレたのはまだいい。もうしょうがないと思っているしな。だが、それで動きが鈍るのは納得がいかない。普通なら魔物を倒すべく、実戦のように動きが良くなる筈なのだ。ヴェルヘルミナ君には魔物と何かあるのか?