10.文字
遅くなって申し訳ない!
これも全て週7学校、週4バイトとかいうのが悪いんだ。
はい、頑張ります……
なあおっさんや。僕達はいったい何をしているのだろうね?
「何かいったか、スケルトンよ」
うん、そうだね、言ったね。言ったけど伝わらないね、悲しいよボカァ。クッソが!早く猫耳帰って来いや!
あれから俺達はあの行き止まり部屋でずっと待機している。何時間経ったか?知らねぇよ!一応、おっさんを『簡易閲覧』しようと試してみたが、見る事は出来なかった。俺の中では実力差があると見れない説が有力な為、あのおっさんは意外にも強いのではと思っている。そうするとなぜ俺達が助けに入るくらいに接戦をしていたのかが疑問だが。
「スケルトン、構えろ」
部屋の出入り口付近からカランカランという音が聞こえる。スケルトン集団のお出ましのようだ。
おっさんは武器を持たずにその身一つ。俺は杖を前方、出入り口に構える。
スケルトンが見えた瞬間に俺の杖から『治癒魔法』が飛び、数体を物言わぬ骸に変える。いや、元から骸だしなんも言わないけども。
おっさんの方はというと俺が『治癒魔法』を飛ばした時点で既に駆け出しており、集団に自ら突っ込んで行っていた。おっさんの手はキラキラと輝き、俺が飛ばす『治癒魔法』と同じ輝きだった。原理としては『治癒魔法』で回復し続けるか、『治癒魔法』を手に留まらせているのかのどちらかだと思う。
にしても、ナイトやアーチャーもいるのに被弾せずにバッタバッタなぎ倒していくって事はやっぱり実力はあるんだな。もしかして、俺釣られた?
その可能性は十分あるよなぁ。沢山の人間を助けたし、それらがギルド?とやらに報告されてる可能性があるしな。
「終わったぞ」
っと、俺が考え事をしている間にスケルトンは殲滅されたらしい。おっさんが大量の魔石を空中に浮かせていた。うん、なんで浮いてるのかな?
「これらはやる。これで強くなって慈善事業に励んでくれよ」
なんか、このおっさん、女騎士と猫耳がいた時より言葉数少なくない?なに?俺とは話したくないとか?まあ魔石の方はありがたく貰っておきますけども。
にしても、もう合計で何十個と魔石を取り込んで来たのに進化する気配がないなぁ。もう一段階進化しとけばこの上層とかいうのでは安心出来そうな気がするんだよな。ここらで出てくるのナイトやアーチャーとか今の俺と同じぐらいの強さの奴らだし。
にしても、遅いな女騎士達。ここ街の近くって言ってたし、報告とやらにそこまで時間はかからないと思うんだが……。まさか、俺の処遇についてで揉めてるとか?ありうるな…。
「スケルトン、そこまで考え過ぎる事はないぞ」
は?いやいや、考え過ぎて悪い事なんかあるか。今の俺には文字通り命がかかってるんだからな。
「ああ、いや、言い方が悪かったか。今のギルド長ならいざ知らず、今頃は初代ギルド長が街にいる筈だ。初代ギルド長ならスケルトンの命を取る事はあるまいて」
はぁ?俺はそのギルド長とやらも初代ギルド長とやらも知らないし、なんでそんな事言えんのかも分からないんだぞ。
「すまん、何を言っているのかわからん」
ぐぬぬ…。これだから骨は……!
「ふむ、スケルトンよ、文字を学んでみる気はないか?言葉を理解しているなら文字を覚える事くらい出来るであろう?」
文字?文字ってこの世界の文字か!?確かに、伝える手段は声だけじゃない!イエス!イエスだ!ナイスだぞおっさん!
「おお、学ぶか。それでは早速教えるとしよう」
そう言っておっさんはスケルトンの死骸から骨を取り、地面を削っていく。それに倣うように俺も死骸から骨を取り、見様見真似で同じように削っていく。それらを幾度も幾度も繰り返していった。
「えーっと、何してるの?」
おや?猫耳じゃないか、いつのまに。
「何これ文字?」
ふっふっふっ。君達が遅いのでな!俺はこのおっさんから文字を習っていたのだよ!その成果を見せてやろう!
『遅い』
「これでもちゃんと急いで来たしー」
「おお!ちゃんと文字が書けているじゃないか!これで会話が出来るな!」
ほら、素直な女騎士を見習えよ猫耳!文字を覚えた俺を敬いたまえよ!
「まあスケルトンが文字はどうでもいいの!それよりお客さんだよ〜」
ん?お客さん?そういや後ろに誰かいらっしゃいますね。ははーん、わかった、ギルドのとこの人だろ。待って殺さないで!
「あ、怯えないで下さい。貴方に危害を加えるつもりは一切ございませんから!」
あ、そうなの?ほんとのほんとに?
「申し遅れました、私初代ギルド長のカオリ・タチバナです。種族はハーフエルフ。貴方のことを私はずっと待ってました」
俺を待ってた?この前転生した俺を?
「私は貴方の事情を全て把握してます。貴方に助けられたから」
俺が、助けた?いや、俺が助けた奴の中にこんな、ハーフエルフなんていうやつなんて…。いや、まさか……。
「ええ、私はここじゃないどこかで、貴方に助けられた人間なんです」
カオリ・タチバナ。橘 香織か。まさかの御同胞さんだとはね。
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