9.5.動く者
また海斗視点ではないので.5話です。
物語をしっかり作ろうとするとどうしても違う視点でどう動いてるかが欲しくなっちゃうんですよね…。
アリー達がダンジョンから持ち帰った情報はすぐにギルドに知らされ、ギルドの上層部は大慌てだった。
「知能を持つ魔物なら上位種でも確認出来ますが、スケルトンが、ですか……」
「どう考えてもタイミングが良過ぎる」
銀髪の青年、エンヴィーが情報の真偽に頭を捻っているその横で、ギルド長であるグリアスは情報元のアリー達に疑いの目を向けていた。
それは、このリッチ騒動をアリー達が意図的に起こしたのではないか、という考えのもとであった。
「マッチポンプだとしたらお粗末過ぎますよ。それにスケルトンがいくら知能を得ようとも集団を作る筈がない」
しかし、エンヴィーはその考えを一蹴する。スケルトンが集団を作る理由はリッチのスキルによるものである。決してスケルトンが出来る芸当ではない。
「そも、それはスケルトンではなくリッチの間違いであった、という事はないのか?」
「いえ、情報提供者の言によれば、あのマッシュラーがスケルトンと断定したそうです。リッチと見違える筈がない、と」
「拳聖士のマッシュラーがか」
グリアスは情報の誤ちを疑うが、それもエンヴィーが手にしている情報によって正される。
拳聖士マッシュラー。海斗がおっさんと呼んだあの人間は意外と名の知れた人物であった。しかし、海斗はそれを知る由もない。
「ならば、スケルトンで確定か」
「そうなりますね。にしても『治癒魔法』を使うスケルトンですか…」
「アンデッドにとって『治癒魔法』は毒。その毒を使いこなすスケルトンというは危険かもしれぬな……」
「しかし、そのスケルトンは今の所こちらに友好的で、スケルトンを倒し、冒険者のピンチを救っているらしいですよ?」
ギルドの方にも正体不明の辻ヒールが出たという情報が入ってきており、その姿がアリーから齎された情報と合致している。
「今は友好的かもしれんが今後どうなるかわからん。不安の芽は潰す方がよい」
「ですが、これはチャンスかも知れませんよ?あちらが友好的ならこちらも友好的に接すれば駒になる可能性があります。それに未だ詳細の分かっていないテイムについても分かるやもしれません」
「使い捨ての駒に実験か……。確かにタダで捨てるには惜しいか」
知能があり、友好的。今回の件に対しての有効打を持っていて、そして誰でも倒せる最弱のスケルトン。あまりにも良い条件が揃い過ぎている。これを利用しないという考えは2人にはなかった。
それが、現れるまでは。
「面白い話をしてますね」
凛とした透き通るような声。それがギルド長室に響いた。その声が聞こえた瞬間、2人は肩をビクッとさせ、冷や汗がダラダラと流れ始めた。
「ギルド長?私が言った事、覚えていますか?エンヴィーも、まさか忘れたりだなんてしていませんね?」
グリアスもエンヴィーも下唇を噛み、黙り込む。
「はぁ……。だんまりですか。私はこう言ったんです。スケルトン、特に知能を持つ存在が確認されたなら私に報告、保護しなさい、と。手紙にもそう書きましたよね?」
2人の服の内側には確かにその手紙が入っている。しかし、封は開いていない。
「全く……。貴方達に任せたのは失敗だったかもしれませんね」
「も、申し訳ありません。こちらも色々と忙しく、確認が取れていなかったのですよ」
「そ、そうだ。最近は実力を過信してランク制度に物申す輩も増えてきてその対応に、な」
「なら貴方達はそちらの対応を優先して下さい。この件は私が預かります。初代ギルド長権限です」
金色に輝く美しい髪。耳は尖り、整った顔立ち。緑を基調としたドレスを身にまとっているその女性こそ、初代ギルド長であった。
「そろそろ事が動き出す頃合いですね……。間に合ってよかったですよ。この後は……っと」
ふぅ…と溜め息を吐く初代ギルド長。初代ギルド長にはまるで今回の件についての事象が全て分かっているかのような物言いだった。
「それでは、私は行きますので。あまり変な事はしないで下さいよ?」
初代ギルド長はギルド長室を後にし、アリーとコルナに会いに行った。
「行きましょうか、アリーさん、コルナさん」
「……初代ギルド長ともあろう方が直々に出向くような事柄なのか?」
「えぇ、スケルトンについては。リッチに関してはついでですね。まあ、リッチに関しても出張らないといけない理由があるにはあるのですが」
「んー?初代ギルド長が表立って動くなんて、今回のってだいぶ特殊な事件だったりー?」
「そうですね。きっとあのリッチがその気になったらドラゴンを2.3匹は同時に相手出来ると思いますね」
コルナの質問に対しても、まるでリッチのことを知っているかのように話す初代ギルド長。巷では初代ギルド長は未来が見えるのでは、などとも言われている。
「ド、ドラゴンをですかー……」
「普通の人間に倒せないのでは……?」
ドラゴン1体を相手するのに、初代ギルド長並みの人間が10人はいないといけない。しかし、それ程強い人間は依頼で基本的にはバラバラに動いている。それに冒険者は基本的に拠点を構えず各地を転々としている。
そして、重要な事だが、初代ギルド長並みの実力を持つ人間は20人ほどしかいない。
「まあドラゴンを相手に出来るのも、そのリッチが持つ特別な力が原因です。今回に限っていえば、獣人などは基本的に役立たずですね。コルナさんは『治癒魔法』が使えますからいいんですけど」
獣人は魔法がほとんど使えない。その代わりに身体能力が非常に高く、種族それぞれの特殊な能力などがある。
「私ハーフだからねぇー。だからその分弱いんだろうなぁー」
「ハーフだからといって弱いわけじゃありませんよ。私もハーフですし」
「えーっ!?そうなんですか!?」
「はい、ハーフエルフです」
ハーフでも強くなれるという事実はコルナのやる気を刺激した。
「早く!早くダンジョン行きましょう!」
「そうだな、スケルトンの事も気にがかる」
「そうですね。早く行って差し上げないと……」
初代ギルド長のその顔は、想い人に会う時のような、そんな顔をしていた。
(待ってて下さいね、海斗様…)
今回は無しです。
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