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17才、春

17才の春、君に出会った。そして27才の今、私は君に会いに行く。



17才、5月



古文は得意。覚えちゃえば簡単だから。それに、昔の人の文読むのって面白い。なんだか、昔も今も考えてることってそれほど変わらない。あー、でも数ⅡBとやらものは、なんなんだ。わかんない記号いっぱい。ビックリマーク?C?もう、やってらんない。勉強したくないなー。もっと遊びたいなー。青春したいなー。制服デートしたい。自転車二人乗りとか憧れちゃう。でも、大学行きたいしな。そんなこと考えながら、私は友達の麻里と生物の問題を解く。

「このさー、二番の問題ってどうすればいいわけ?AとBって二つに分けていいんだよね?」

「え、そうなの?だって分けたら別々のやつでてきちゃうよ?」

「あー、もう分かんない。ねぇ、黙ってないで何か案だしてよ、半ちゃん。」

さっきから半ちゃんはずっと黙って問題を見つめていた。私と麻里と半ちゃん。なんだか変な組み合わせだけど、最近この3人でラウンジ勉強が多い。半ちゃんは、生物の授業で一緒の男子。私と席が近くて、あいさつ程度に話したのがきっかけで仲良くなった。見た目はなかなかのイケメンでファンも多いみたいだけど、口開くと残念な感じ。とってももったいないけど、友達としてはとってもいいやつ。それに、半ちゃんの狙いは麻里だ。3人でいたってもう麻里に夢中なのが分かってしまう。確かに、麻里は気さくでいて美人。高校1年の時、一人でどうしようかなって思ってた私に話しかけてくれたのも、麻里だった。麻里は八方美人かと思ってしまうくらいに、誰にでも優しい。半ちゃんが狙いたくなるのもわかる。ま、二人がくっついてくれるのは私にとっても嬉しいことだ。

「これさ、Aだけで子どもの遺伝子だしていけばどうかな?」黙っていた半ちゃんがやっと口を開いた。

「ホントに?やってみよやってみよ!」すぐさま、麻里はノートに書き出す。二人のやり取りはなんだか微笑ましい。んー、何か違うような、合ってるような。私はなかなかノートに書けなくて、窓をぼうっと眺めた。このラウンジってなんだか落ち着く。おしゃべりしてる人、本を読んでる人、勉強してる人、携帯ゲームやってる人。色んな人がいて、高校生活送ってますって実感できる。なんだか青春してる気分になれる。実際に、してるんだけどね。

「その問題にどれだけ時間かけてんだよ。」

ん?青春を噛み締めていた私は、一瞬で現実に戻された。なんだなんだ、この上から目線の男子は。

「これは、AとBと合わせて考えるんだよ。合わせて最後に分ける。」

「あ、ホントだー!いっちーすごい!さすがガリ勉はすごいわー!」麻里はやっと問題が解けてニコニコだ。反対に手柄をとられた半ちゃんはちょっとむくれたように上から目線男子を見ている。

「ってか、どこ行ってたのさ。帰りに一緒に宿題やろうって言ってたじゃん。」

「あ、ごめん。ちょっと先生に呼ばれてたわ。問題解けたなら帰るべ。」

「ちょっと待った!あたしだけ全然この状態がのみ込めてないんだけど、この人誰?麻里も知ってる人?」なんだ、この私だけ知らない感じ。あっけに取られた私はやっと声が出せた。

「ゆなー、何言ってんの?生物一緒じゃん!2組のいっちーだよ!半ちゃんといっつも一緒にいるじゃん!」

「え、そうなの?全然知らないんだけど。」全然周りが見えてないのは私か。

「ふーん、俺は知ってたけどね。折田のこと。」

へ。あら、名前まで知ってたのか。ちょっと申し訳ないことしたな。

「あー、ごめんね。」

「別にいいよ。半ちゃん帰ろ。」


これがあっけない、私と君との出会い。こんなんだから、長く続くものでないと思ってた。

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