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最後の召喚  作者:
本編
5/24

5.それ私のせいじゃない!

神子様たちや彼女の周囲にいた人達を主役にした物語を書いたノート。

私の創作が……

神子様たちのアレやコレが……

神子様にアプローチしていた彼らのアレやコレが……

国民の間に作者不明の物語として出回っているらしい。


しかも4か国すべてで……


なんてこったい!


あのノートには神子様たちの隠したい秘密(愛しい彼への想い…惚気ともいう)も書いてあったりする……

息抜きという秘密のお茶会で散々惚気られたのでメモっておいたのだ。

後でからかう材料にしようと思って……


つまり、彼女達は愛しの彼(現・旦那達)への隠していた想いを物語とはいえ、他人によって彼(旦那)に知られた事にお怒りらしい。


というか旦那たちも読むんだ。娯楽本……

あの人達って小難しい本ばかり読んでいた記憶しかないんだけどな。


えー、さらにラブラブになったのなら別にいいじゃん。


え?そのことで他の人から冷やかされる?

旦那にネチネチとそのことでいじられる?


別にいいじゃん。

それで仲が深まっているみたいだし……


へえ~中には彼(旦那)以外との恋物語も出回っているのか。

(これは私の完全妄想だけど……元の世界に戻ったら小説サイトに投稿しようと思って書き綴っていたんだよね)

それを読んだ旦那たちが嫉妬してさらにネチネチと?

ふ~ん。

if物語にも嫉妬するのか……


皆が隠したかった思いをばらされたことに怒っていることも、それについて文句が言いたい事もわかった。

直接、私にそのことを訴えたかったのね。

それと黙って帰ったことも含めて……私に直接言いたかったのね。

うん、引き留められた理由は分かった。

ゴメン。

まさか、あのノートが他人に読まれるとは思わなかったから……



ん?ちょっと待てよ……


私の置き土産(ワザと置いていったわけじゃない。鞄に入れたと思っていたけど実際は机の引き出しの奥に残っていたモノ)を誰かが勝手に翻訳したのよね?

だって、あのノートには”日本語”で書いたのよ?

こっちの世界の文字では一言も書いてないの。

なのに、なんでこっちの世界で流行っているのかしら?


私は誰一人として”日本語”を教えた事ないわよ。

自分自身の魔術を極めるのに夢中だったからね。

魔術・剣術・体術以外で人に何かを教えたことはないわよ。



…………み・こ・さ・ま・が・た?



自分で自分の首絞めただけじゃない!

私のせいじゃないわよね?

こっちの世界では”日本語”は暗号文そのモノでしょうが!

それを身近な人間に教えた!?


神子様方の自業自得じゃない!

私がノートを忘れていった事は謝る。

だけど、旦那たちにバレたのは神子様方が”日本語”をこっちの世界の人に教えたからでしょうが!!


ということで、私は帰るわ。

え?無責任?

どこが?

私はこっちの世界の人が読めない様に”日本語”で書いたのよ。

それをわざわざ(・・・・)”日本語”を教えた貴方達が悪いんじゃないの?

それとも私が悪いの?


出回ってしまったモノは回収できないからね。

ネチネチと旦那たちにいじられていなさい。



私を引き留めていた理由が判明したところで、私は元の世界に戻るわ。


は?

中央の神子?

それはこっちの神様が何とかしてくれるんでしょ?

私が何かをやる必要はないわ。


中央国の魔導士協会の改革?

それなら今回の召喚の儀をきっかけにネットワークができたからそこから改革すればいい。

私が手を貸す必要性はない。


こっちの世界で暮らす気はないか?

あるわけないじゃない。

こっちの世界には私の生きがいがないもの。





それに……

私には皆のように家族や今迄の生活を捨ててまでこっちの世界で生きたいと思えるものがないもの。





***


「というわけで、元の世界に戻るから」

神子様方を各国の護衛官に引き渡した翌日、私の軟禁場所……客間に遊びに来た各国の上級魔導士たちに帰還宣告をした。

彼等は驚きつつも、表面上は納得してくれた。


そう、表面上なのだ。


帰還魔法に必要な水晶を隠された。

くっ、部屋付の侍女と結託して、私が風呂に入っている間にすり替えられた。

私が帰還魔法を発動させるにはどうしても各国の特級魔導士の証だというあの水晶が必要らしい。

(ただし、中央国分は不要らしい。さすが神様から見捨てられた国!……って関係ないか?)


ちなみに魔導士の身分証にもなる水晶は本来装飾品にして常に身に付けるモノらしい。

水晶自体小さい(1センチ位の小さな玉なんだよね)ので無くさない為らしいが……

パッと見じゃわからないんじゃ……と思ったけど、ほとんどの人がピアスにしているため耳元を見ればその人の実力と階級がわかるらしい。

水晶に持ち主の魔力が反映されるらしく、色の濃さ(属性毎に色があるらしい)によって判別するらしい。

ピアス以外では指輪にしたりブローチに組込んだりと常に身に付けるのであればどんな装飾品に組込んでもいいらしい。


そうそう、なぜすり替えに気付いたかって?

だって水晶をはめ込んであるあのペンダントはある人からの贈り物で、ある部分にその人のサインが刻まれているから。

気づかないわけないじゃない。

私が小さな水晶の玉を巾着袋に入れて持ち歩いている事に気付いたあの人が水晶を失くさない様にって作ってくれたものなんだから。


そのことを言うと、ペンダント自体は返してもらえたけど水晶は返してもらえなかった。

代わりに似た色の宝石を埋め込まれた。

うん、これは特級魔導士の資格を返上するってことでいいかな?

あー、でもそうすると私個人では帰還魔法が発動しない。


面倒くさいルールがあって召喚系は上級魔導士以上じゃないと取り扱えないんだよね。

さて、どうしたものか……


部屋から唯一出られる中庭で水晶無しで魔方陣を書いて発動させようとしたけど、ウンともスンともいわない。

魔方陣がただの落書きになってしまった。

(あ、ちゃんと魔方陣は消したわよ。何かのはずみで発動して私以外の人が巻込まれたらマズイから)


神子様方は連日中央国の神子様に『神子とは~』という講義を行っているらしい。

本来なら神様から直接講義を受けるのだが、中央国は神様に見捨てられた国だから神様が直接神子に話しかけることはないらしい。

ということは彼女は『神子』とは言えないのでは?

ただの迷い人では……?

まあ、そこらへんはこっちの世界の人に任せましょう。

本当に私には関係ない事だから!!!



水晶をすり替えられ、軟禁され続けている私はストレスが日に日に溜まっていく。

中央国の歴史書は全て読み終わったので中央国のみに伝わる魔導書を読んだ。

しかし、中央国は発展が遅れている国だ。

魔導書の中身はどこかしらの国で見たことあるモノばかりだった。


「ジュリ姉様、今いいですか?」

ノックの後、聞こえてきた声はファル。

「ファル?入ってきていいわよ」

この部屋には外から封印の術が掛けられている。

私の逃亡防止らしい。

私は犯罪者かよ。

神子様方にはちゃんと謝罪したんだから早く元の世界に返してくれよ。

私を留めておく理由などもうないだろうが!

「ジュリ姉様、また新しい術式を編み出していたんですか?」

部屋に散らかる紙の山をみてファルが驚きの表情を浮かべる。

「いや、元からあるモノを改造しているの。ちょうどよかった、ファル」

「はい?」

「ファルの苦手な水の魔術の特訓をしようか」

「ええ!?なぜ特訓なんですか!?練習じゃなくて?」

「私がヒマだから」

「ストレス発散ですか?」

「ご名答~♪」

「…………わかりました」

何日も閉じ込められて本当にストレスがたまっているのよね。

中庭では思う存分魔術…特にストレス発散に最適な攻撃魔術は使えないし……

めっちゃ高そうな装飾品が所々に置いてあるんだよ。

壊して弁償しろと言われてもこっちの世界のお金なんて持ってないからね。


上級魔導士がいれば私も訓練所に入れる。

訓練所は魔導士だけではなく、騎士や兵士の鍛錬の場所でもあるので結構広いし見学も申請さえすれば出来るらしい。

ただし、施設内に入る為にはいろいろと面倒な手続きとルールがあるけどね。

魔導士、騎士、兵士はそれぞれ身分を証明する証を持っているためそれを提示すれば手続きは簡単になるらしい。

今回はファルが持つ上級魔導士の特権を利用して私も施設への出入りが自由となった。

いや、ファルが神子様に話を通して『神子様のご友人』ということで出入り自由になったのだろう。

特級魔導士の資格とやらを有しているらしい私だが、証を奪われているので今はただ飯ぐらいの迷い人だ。

一応、各国の神子様の友人ということで表向きは好待遇だけど、ほぼ部屋に軟禁状態だからな。



「ちょっと、ジュリ。面白い事やるなら連絡ちょうだいよ」

訓練所にたどり着いた私とファルを待っていたのはシルヴィ達だった。

どうやらファルが部屋から出る時に伝達したらしい。

他にも中央国の魔導士らしき人達もチラホラ見かけるが無視だ無視。

「面白い事って、ただの特訓(あそび)だよ。シルヴィ」

「ジュリ殿の特訓(あそび)なら俺もやりたい」

「僕も!ジュリさんとの特訓(あそび)って楽しんだもん」

トールとトルディアは揃って私を見下ろす。

そう、見下ろしているんだ。

みんな背が高いんだよ。

ファルは私の頭一つ分くらいだけど、シルヴィ、トール、トルディアはさらに高いんだよ。

目線を合わせようとしたら常に上を向いていなければいけないんだよ。

首が痛いんだよ……

ファルあたりがちょうどいい高さだ。

それでも見上げることになるんだけどな……


「うーん、久しぶりだから初級の攻撃魔術あたりから復習していい?」

「【幻影】出す?」

「うん、トルディアお願い。大きさは……任せる」

「了解!多種多様出してみようかな~♪」

浮き浮きしているトルディア。

【幻影】とは字のごとく幻のことだ。

そこに存在しないモノを魔術で作り上げる。

攻撃魔術の練習に良く用いられる。

トルディアはその【幻影】を作り出すのが得意な人である。

「ねえ、私たちも【幻影】出そうか?」

シルヴィが楽しそうに声を掛けてきた。

「トルディアだけでいいよ」

彼等に背を向けながら答えると周囲からどよめきが起きた。

ああ、そういえば、中央国の魔導士たちもいたっけ。


「シルヴィ、悪いけどシールド張って」

「……了解!たしかに危ないわね」

「トール、あの人達をあそこよりこっちに近寄らせないで」

「わかった」

シルヴィとトールがそれぞれの位置に移動するのを横目に私は用意されていたローブをファルから受け取り羽織る。

うん、魔導士は必ずこれを羽織らないといけないのよね。

誰よ、こんな面倒なこと決めたの。


「トルディア、用意はいい?」

「いつでも!久しぶりにジュリさんの魔術が見れるなんて嬉しいな~♪」

浮かれているように周囲には見えるトルディアだが、瞳は真剣だ。

短い呪文を詠唱するトルディア。

私の目の前には大小様々な【幻影】が浮かび上がってくる。


軽く手を叩くと、何もない所から長い杖が現れた。

これは私の杖。

約1mほどの長さの杖である。

本当は指揮者棒くらいの長さにしようと思ったけどね。

魔術で強化させれば剣にもなるかなと思ってこの長さにした。

重量自体はそこらへんに転がっていた棒を加工して作ったものだから実はとっても軽い。

それにこの杖自体にはなんの力もない。

ただの飾りである。

うん、魔法使いと言えば杖!ということで作っただけである。


「ジュリ姉様の杖……きれいだな~」

ファルがうっとりとした声を出している。

キレイ?

棒の先っぽに北国の城の裏にある洞窟で見つけた直径5センチくらいの大きさの水晶をくっつけてあるだけなんだけど。

あ、一応陛下と神子様に許可貰ったわよ。

洞窟に放置されていたから貰っていいかって。

水晶ならゴロゴロあるからいいって。

そういえば、北国は鉱山の宝庫だった。

もっと貰っておけばよかったかな?

まあ、もらっても元の世界には持ち帰れないけどね。



「では、始めましょう」

声を合図に【幻影】が一斉に私めがけて攻撃魔術を解き放った。

そう【幻影】はただ姿があるだけではなく、術者の力にもよるが攻撃も防御もできる。

「ち……ちょっと、トルディア!初級以外の魔術もまぜてるでしょ!」

【幻影】からの攻撃を躱し、攻撃魔術で消滅させながらトルディアを睨むと彼は笑っていた。

「ジュリさんならこれくらい片手間に処理できるでしょ?」

「……肩慣らしだっていったのに」

一体ずつ【幻影】を消していくがトルディも次々と新たな【幻影】を生み出す。

生み出される毎にどんどん強くなる【幻影】。

最終的には上級魔術を放つ【幻影】まで作り出した。

「……これがラスト!」

最後の【幻影】を消滅させるとトルディアは呆然としていた。

「うそだろ……今まで誰にも倒されたなかった最強の【幻影】が一瞬で……」

「ん?あれが最強なの?隙だらけだったわよ」

がっくりと膝を付くトルディアの傍に立つと、上目づかいで見上げられた。

いつもは見下ろされているけどたまに見下ろすのも悪くないわね。

などと思っていたが、次の瞬間がっしりと腕を掴まれた。

「……ジュリさん!ジュリさんの【幻影】見せて!」

「はぁ?」

「今度は【幻影】同士でやってみたい」

「ちょっとトルディア」

縋り付く様に腕を離さないトルディア。

近くでファルたちは驚愕の表情を浮かべて固まっていた。


「東国最強の幻影魔導士のトルディア殿の【幻影】を負かした!?」


どこからともなく聞こえてきた声に周囲を見渡すと、シルヴィが張った結界(シールド)の外で大勢の魔導士や騎士・兵士たちが見物していた。


「……はぁ、分かった。ただし、条件がある」

「条件?」

「私が勝ったら水晶を渡して。帰還に使う水晶をね」

私の出した条件にトルディアは一瞬躊躇したが小さく頷いた。

「それから、対戦は神子の前で行う」

「え?」

「神子に証人になってもらうのよ。私の帰還を掛けた戦いだと……」

「それなら、私たちとも対戦しないとね」

固まっていたシルヴィ達は我に返ると私にそれぞれ対戦を申し込んできた。

もちろん、私は了承した。


日程は神子のスケジュールと照らし合わせなければならないので後日発表される。


彼等の今の実力は知らないけど……私は帰りたいから。


絶対に負けないという自信はない。

だけど、私は帰りたいから負けるわけにはいかない。


ギュッとペンダントを握りしめて私は思い描く。

元の世界を……


大切な人たちが待っているあの世界(ばしょ)を……




神子様方のジュリを引き留める理由。

・ジュリが残していったノートをもとに小説が出回る

(ノートが発見された当時は暗号文で解読不可能とされていたが、神子に近い人たちが読めることが判明←神子に神子の世界の言葉を教えてもらっていたため。これは面白いと誰かがこっそりと小説にして出版社に送りつけた)

・旦那たちに秘めていた思い(両思いになるまでのアレコレ)がばれ居た堪れない神子たち(出版されたのはここ近年とされているが北国では平民の間では密かなロングヒット作品だった)

・中央国で神子召喚の儀が行われジュリが再び現れた報告が届く

・恥ずかしい過去話を書き綴っていたジュリに文句が言いたい

・中央国でジュリと再会。

・無断帰還とノートの件でお説教(笑)

・ジュリが『日本語』を誰にも教えていないことが判明

・逆にジュリに説教される


という流れがポンと浮かんだのがこの話を書くきっかけでした(実は)。


しばらく更新が止まるかと思います。

ストックがキレた…ヾ(--;)ぉぃぉぃ


なるべく早く次の話も投稿できるよう頑張りますが気長に待っていただけると嬉しいです。



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