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最後の召喚  作者:
本編
4/24

4.歴史書は○○の宝庫です!

話の矛盾が生じた部分があるので2話目に訂正を入れました。

読み返さなくても大丈夫だと思いますが念のため……

(誤字脱字も見つけ次第直しております)

中庭でのお茶会はその後、中央の王妃、神子の退席でお開きとなった。


その後、場所を移して周辺国の神子と私だけの女子会が開かれた。


場所は私の軟禁場所……失礼、中央国の王宮の客間である。

ちなみに神子には神子専用の部屋が王宮と神殿にありどちらで生活しても良いことになっているらしい。(各国の神子様談)


部屋には防犯設備が満載(私の帰還防止も含む)らしく、私たち5人だけでも安全ということで大きな猫を被っていた神子様方はお付の侍女と騎士を部屋の外で待機させると一斉にだらけた。

床にはフカフカの敷物がしてあったのでその上に胡座をかいて座り込んだのだ。

ON・OFFの差が激しいな……

まあ、私にとっては見慣れた光景だけど……


「ねえねえ、うちらの学年にあんな子いた?」

真理ちゃんの言葉を合図に中央の神子についての話題が始まった。

「あー、真理ちゃん達が知らないのも無理ないよ。彼女は真理ちゃんがこっちに来た後に転校してきた子だから」


中央の神子こと佐藤美咲は真理ちゃんが異世界に召喚されてから1か月半後に転入してきた子だ。

実は、最初の瑠佳ちゃんが召喚されてから真理ちゃんが召喚されるまで約3カ月しかたっていない。

瑠佳ちゃんが召喚されたのが4月の終わり。

奏ちゃんが召喚されたのがゴールデンウィーク最終日。

海ちゃんが召喚されたのが6月のはじめごろ。

真理ちゃんが召喚されたのが1学期の終業式の日。



期間が短すぎるという突っ込みはこの際スルーさせていただく。

私も思っていることだからな。



召喚される時間に戻されるから確かに出欠席など面では学校生活には支障はなかった。

しかし、すぐに元の生活に戻れたかと言えばそうでもない。

異世界と言えども何年も生活した(成長した)記憶はあるのだ。

ちょっとした浦島太郎状態(?)になるのだ。

元の世界では数日前の事が私にとっては数年前の出来事になっているのだよ。

駄菓子菓子……じゃなかった、だがしかし妙な事を口走って精神病院に連れて行かれるのは御免だと必死に手帳などを捲って記憶を掘り起こしたさ。


ビバ!手帳!ビバ!日記帳!


思いついた事、気づいた事をポケットサイズのメモ帳にメモって、寝る前に日記帳に書いていた自分をこの時ほど褒めたことはないね。

まあ、時々変なことを口走って家族や兄の彼女にも心配された時もあったけどね。

その時は決まって『部活動の事だよ~』で万事解決!

ビバ!理解のある家族!と兄の彼女!



真理ちゃんが神子になった西国から帰還した1か月半後。

2学期の始業式の日に佐藤さんは転入してきたのだ。


滅多にない転入生のニュースはあっという間に学校内に広まり、彼女は時の人となった。

彼女は転入してから2週間で女子の間で人気の高い男子生徒を数名、自分の取り巻きにしていた。

思わず『乙女ゲーかよ』と仲間同士で呟いたのは致し方ない。

まあ、私の場合は異世界で無意識に逆ハー作っていた友人たちがいたのでさほど驚かなかったけどね。


転入生とは言葉を交わすこともなく過ごしていたが、噂だけは私の耳にも良く入ってきた。

3年生の誰それが告白しただの、1年生の誰々君に言い寄っていただの……

もう、ネタか?と言いたくなるような噂が入ってくる入ってくる。

で、私の所属している部活(一応表向きは文芸・芸術部と名乗っているがただのオタクの集まりだ)でそれをネタに小説や漫画を描いたのは言うまでもない。


彼女の召喚に巻き込まれたのは部室に向かう私と生徒会室に向かう彼女が階段ですれ違った時だ。

いや~

すれ違った瞬間に足元に見慣れた魔方陣が現れた時は驚いたね。



「それにしても、彼女……えーと……」

「佐藤美咲。一部の男子及び本人いわく『誰にも心優しい美少女・美咲ちゃん』らしいよ」

「なに、そのフザケタ呼び名」

眉間にしわを寄せてる海ちゃん。

「さあ?本人が言っているんだからしょうがないんじゃない?」

「なんとなく、今までの(強引な)謁見と晩餐会と(強引な)お茶会でわかっていたけど……あの子、夢見る夢子ちゃん?自分が物語のヒロインだと思ってない?世界は自分を中心に回っているのよ~的な」

「……だと思うよ。隣のクラスだったけど、クラスでも浮いた存在だったみたいよ」

隣のクラスにいる部員たちはネタに困らないね~と笑っていた。

もちろん、自分たちに火の粉が掛からないよう注意しているみたいだけどね。


「まあ、彼女の事はこの国の上層部がどうにかするでしょう。『神の声が聞こえない神子』でも自分たちが召喚したんだからフォロー位するでしょ」

瑠佳ちゃんの言葉にうんうんと頷く神子様方。

私には理解できないことだが、どうやら『神子』になると朝の礼拝で『神の声』が聞こえるらしい。

彼女達曰く『声がすっごく渋くてカッコイイの!耳元で囁かれる様に聞こえるから毎回、腰が砕けそうになるの~』らしい。

毎日聞いているのなら免疫はつかないのか?


彼女達『神子』は神から見た国の状況を教えてもらえるらしい。

『どこどこが危ないから気を付けなさい』という忠告を受けてその対策を立て、政に反映させるらしい。

ただし、神の声を鵜呑みにしてはいけないらしい。

神の言葉の裏付けを取ってから行動しないと苦労するらしい(特に下っ端が)。

瑠佳ちゃんはすでに経験済みなので、必ず裏付け調査をするようになったという。


瑠佳ちゃんから話を聞いた海ちゃん、奏ちゃん、真理ちゃんは必死に瑠佳ちゃんから色々な対処法などを学んでいる。

うん、今、この部屋で……

私は蚊帳の外ですよ。

ええ、私は『神子』ではないのでチンプンカンプンだ。


仕方がないので彼女達の話が終わるのを待つことにしましょう。

下手に口をはさむと面倒事に巻き込まれそうな雰囲気なので……



***


神子様談議が繰り広げられている横で、私は中央国の歴史書を読んでいた。

他国にいた時も歴史書は一通り読んでいる。

うん、元の世界に戻った時のネタにしようと思ってね。


あ、こっちの世界の言葉と文字はこっちに来てから覚えたわよ。

ええ、死に物狂いで覚えたわよ。

神子様は自動的に翻訳してくれるみたいだけど、私には自動翻訳機能なんてないからね。

同じ異世界から来てもこの扱いの差に当時は神様とやらを恨んだ事は内緒だ。


異世界の歴史書はネタの宝庫よ~♪

いくつか元の世界に戻った時に『こんな話どうかな?』と数ページ分だけ書いて仲間に読ませたこともある。

名前などは変えたり、男女逆にしたり、私なりの解釈を入れてだけど……

仲間には大変好評で、ちまちまと続きを書いては読ませていたんだよね。



中央国の歴史書は他国よりも少ない。

数百年前の『神子暗殺未遂事件』が起きた時にほとんどの歴史書が炎に包まれた。

今ある歴史書は『神子暗殺未遂事件』後からの出来事しか書かれていない。

それ以前のモノはほとんどないし、写本して保管していた歴史家もいなかったとか……


中央国は『神に見捨てられた国』と周辺国では言われている。

『神の子=神子』を殺そうとしたんだ。

そりゃ、神様だって怒れるだろう。

『神子暗殺未遂事件』の時の神子様は精神的にもやばい状態になった為に、神様によって強制送還されたそうだ。

すぐに次の神子が召喚され、神子の部屋の机の奥に隠されていた先代の神子の日記を読み、憤慨した神子が内容を公に発表したらしい。

当然、平民や良識ある貴族たちは王家に反発を起し、王家の交代が行われ滅亡だけは逃れたらしい。

新たな神子は国が落ち着くと元の世界に戻ったという。

帰還の際『私の友人を傷つけた事、後悔するがいいわ』と言い残したとか。

後日判明したことだが、先代の神子と新たな神子は元の世界で親友同士だったらしい。

それは、神子が残していった『日記』で明らかになった。

新たな神子は日記の最後のページにこう記した。



親友を裏切り、傷つけ、殺そうとした国の神子になどなりたくなかった。

だが、神様との約束だから国の立て直しには協力したが、それ以上は何もしない。

それが神様との約束。

神の子を殺そうとした国だ。

私も旧王家の人間に何度も命を狙われた。

新たに興した王家の人間はそれを知っていながら守るそぶりすら見せなかった。

自分の身は自分で守るしかなかった。

中央国の人間が神様の存在を信じていない証拠だ。

だから、私が新しい王家の元、国の立て直しを約束すると同時に神様も約束してくれた。

今後、中央国には神の加護は与えない。

神子も不要。

周辺国とのバランスを保つためだけに存在させる国。

発展しようがしまいとその国に住まう人間が決めればいい。

神が手を差し伸べることはない。

たとえ、召喚の儀を行い、神子と呼ばれる少女が現れても。

『神の声を聞くことも、国を発展させることもできないただの少女だろう』

神子とは名ばかりの……



そこで日記は終わっていた。

神殿と新たに興した王家はこの日記の存在を徹底的に隠した。

もしかしたら、この時、日記の存在(内容)を明らかにしていたら。

中央国は変わっていたかもしれない。


日記を偶然発見した、のちの中央国の歴史家たちは語った。


『中央国に神子が現れないのは神に背いた国だからだ』


この言葉は各国に伝わり。

『中央国に神子が現れないのは神に見捨てられたからだ』と語られるようになる。

そして、それが事実となり伝承されることとなる。

周辺国には数年おきに神子が現れるのに、中央国には現れない。

神子の登場によって発展する周辺国。

いつまでも発展しない中央国。

かろうじて周辺国との貿易で新たな技術などを取り入れていく中央国。

その力の差は歴然と開いていった。


中央国が今回の召喚の儀を行ったのは。

『神の力を持たぬ神子』が現れるとわかっていても『神子が現れた』という事実だけが欲しかったのだろうか。



***


「ねえ、みんなの国は『神子不在期間』ってどれくらいなの?」

神子様談議も終わり、おやつタイムに突入した神子様達。

「大体100年前後じゃないかな?どうしたの?いきなり……」

クッキーを咥えながら答える奏ちゃん。

「どんなに長くても150年以上空くことはないわね。資料を見る限りでは」

手に持っていたティーカップをテーブルに戻す海ちゃん。

「西国は最低50年、最長130年だと記録に残っているわよ」

大きく背伸びをする真理ちゃん。

「どうしたの?何か気になる事でも?」

首を傾げる瑠佳ちゃん。

「いや、歴史書を読んでいたら中央国は『神子暗殺未遂事件』の後、一人だけ神子が現れたけどそれ以降はいないな~と思って」

歴史書を掲げると4人は小さく頷いた。

「神様もまだ中央国を許す気はないのよね。召喚の儀も悉く失敗するように手を出していたみたいだし」

どうやら、各国の神子様方には神様自ら中央国に関する講義を行ったらしい。

うん、でもそこは国の要に腰を据えた神子様自身が自分で調べなきゃ……じゃないのかな?

まあ、神様としては偽りの情報もあるから真実だけを知ってほしいという思いからかもしれないけどね。

「でもじゃあ、なんで今回は?」

「それがわからないの」

「は?」

「神様に尋ねてもただ笑うだけで答えてくれないの」

頬に手を当てて首を傾げる瑠佳ちゃん。

うん、美人さんは何をやっても絵になるね~

って、違う!

「今回、私たちが中央に集まったのはその事を調べる為なのよね」

「神様がお許しになったのか、ただの余興なのか…」

「ちょっと、余興ってなに?」

「……今回の神子。神様の加護がないの」

「は?」

「私たち『神子』は神様から選ばれたという証拠があるの」

彼女達は額にかかっている髪の毛を上げると、そこには小さな石がはめ込まれていた。

その小さな石を護るかのように蔦模様が薄らと描かれている。

「この額の石がその証拠。それぞれ国のカラーの石が嵌っている事で神様の加護を受けた神子だと認められるの」

「あ、これ、死ぬまで取れないみたいなの」

「……某ゲームの宝玉に似てるわね。みんなのは誰にでも見えるみたいだけど…」

「「「「それは言っちゃいけないわ」」」」

私の呟きに4人の笑いを含んだ声が揃った。

「……みんなが中央国に来た理由はわかった。で、本題だけど……」

姿勢を正し、4人の顔を見渡す。


「私をこの世界に留めた理由は?」


4人はそれぞれ顔を見合わせると代表して瑠佳ちゃんが話してくれた。




・・・・・・・・・はい?


「エ?マジデ?」


彼女達が私を引きとめた理由。


それは私の置き土産が原因だった。

別に置き土産にするつもりは無かったのよ!

ただ、帰還する時に鞄に入れ忘れただけ!


本当に、忘れただけなんだから~~~!!





ジャンルをコメディに変えたほうがいいのかな~?


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