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最後の召喚  作者:
本編
3/24

3.愚痴っただけなんだけど…

トールに案内されて踏み入れた中庭はとてもきらびやかだった。

周辺4カ国の神子様と中央国の王妃、神子様がにこやかに微笑んでお茶を飲んでおりました。


ちなみに、身分で言えば神子>越えられない壁>神官長(神殿のトップ)≧王族なのは全国共通らしい。


それぞれの国独特のドレスを纏い、互いに褒め合いながらも入念のチェックは怠っていない。

周辺4カ国の神子様達はすっかりこちらの世界に馴染んでいるようだ。

もともと順応性の高い子達ばかりだったから頷ける。

神子様達の後ろにはこれまた各国の衣装を身に纏った騎士と魔道士たち(魔導士は全国共通のローブ着用)が護衛を兼ねて立っている。


私、場違いみたいなので逃げていいですか?


「ジュリ殿をお連れしました」

逃げ出そうとした私の腕を掴んでトールが声を掛けると一斉に視線が私に集中した。

「遅くなりもうしわけありません」

制服のスカートの裾をちょこっと持ってこちらの世界のお辞儀をする。

「な……あなた!なn……」

「ほら~!やっぱり制服で来たじゃない」

中央国の神子が立上り、全てを言い終わる前に西国の神子・石塚真理(いしづかまり)がにっこり微笑みながら言葉を遮った。

「まあ、ジュリならそうでしょうね」

「一応、学生にとって制服は正装ですものね。マナー違反ではないわね」

呆れたようにため息をついたのは南国の神子・保戸野海(ほとのうみ)と東国の神子・鈴野奏(すずのかなで)

「久しぶりね。ジュリ」

たぶんこの中で最年長になるであろう北国の神子にして王妃の遠崎瑠佳(とおざきるか)が立上り私の両手を力強く(・・・)握りしめた。

「ルカ様もカナデ様もウミ様もマリ様もお変わりなく……」

「堅苦しい挨拶は抜きよ。今日は非公式なんですもの。気楽に楽しみましょう」

にっこりと微笑んでいるのに有無を言わさぬ迫力を身に付けた瑠佳ちゃん。

瑠佳ちゃんの前ではデレデレで王族の威厳はどこに行った?と首を傾げたくなるが、一度政の話になると優しそうな笑みを浮かべながらもその場を完全に支配する、旦那に雰囲気が似てきていません?

笑顔が怖いですよ……?



中央国の王妃、神子を横目に瑠佳ちゃんたちは次々と私に抱きついては再会を喜んでくれた。

一通り再会を喜んだところで、恨み言も忘れずにいただきました。

いや、帰還する時、彼女達には内緒で帰っちゃったから……


彼女たちはこの場で顔を見合わせて、中央の神子以外顔見知りだと分かり、昔話に花を咲かせていたらしい。

そこに、中央の王妃と神子が通りかかり『では一緒にどうですか?』と私の到着を待っていたとか……


「中央の王妃は彼女とは初対面でしたわね」

「はい、噂は聞いていましたが……」

噂?

一体、どんな噂が流れているんだ?

さすがに軟禁されていたから情報収集がまだできてないんだけど……


「その噂って、北国の近衛騎士隊長をこっぴどく振って一時期使い物にならなくしたのが神子の付き人であるジュリという名の少女だったとか」


「東国の宰相の御子息に平民の生活を体験させて改心させたのは神子の一番の友人のジュリという名の少女だったとか」


「南国の自信過剰な軍団長をボッコボコにしたのは神子の護衛をしていたジュリと名乗っていた少女だったとか」


「西国で魔導士協会の会長のプライドを木端微塵までに踏みにじった原因は神子の片腕の人と言われたジュリという少女だったとか……ですの?」


にっこり微笑みながら瑠佳ちゃん、奏ちゃん、海ちゃん、真理ちゃんの順に言われました。

「いえ、そのようなことは聞いたことはありませんが……私が聞いたのは魔導士として大変優秀な方だと…………」

すっと私から視線を逸らした中央国の王妃。

瞳をまん丸くして私を凝視している中央の神子。

私に関する噂って……それ北国以外神子様の功績!

私は直接関わっていないから!!!!!(たぶん)




北国では瑠佳ちゃんの護衛をしていた騎士様に言い寄られましたよ。

でも、はっきりと告白される度に断っていました。

サラサラヘアの金髪に紺碧の瞳。

女性と見間違うような容姿。

爵位も伯爵。王族からの信頼も厚い。

常に女性には優しく(騎士だから当たり前か?)、笑みを絶やさない。

大勢の女性の標的(お婿さん候補)になっているようなそんなキンキラなイケメンはゴメンです。

それに、私の好みじゃなかったのできっぱりとはっきりと帰還するその直前まで言い寄ってきた彼に『ごめんなさい』しました。

あのあと使い物にならなくなっていたのか……



東国の宰相の息子は父親とは正反対で選民意識がものすごく強い人だった。

宰相様は平民にも気安く声を掛けて優しく労っていたのに、その息子は平民は貴族の奴隷だと言い放っていた。

私の事も『神子のおまけ。なんの役に立たない者だ』と大声で言いふらしていたのを神子である奏ちゃんが聞いてブチ切れ。

国王と宰相の許可を得て彼を含め、選民意識が高いお坊ちゃん、お嬢ちゃんに平民の暮らしを半年くらい経験させようと奏ちゃんが発案し即座に行われた。

しかし、全員が1か月も経たずにギブアップした。(早い人は半日持たなかったとか……)

自分がどれだけ恵まれた暮らしをしているのか。

世話役が居なければ何一つ出来ないただのガキであると認識させることに成功したらしい。

あの時の奏ちゃんのすがすがしい笑顔は写真にとって納めておきたいほどに輝いていたわ。

それ以降、『神子様の一番の友人』である私を貶める行動する貴族のお坊ちゃん、お嬢ちゃんはいなくなったとか……

魔導士協会改革に専念できたのはそのせいか!



南国の軍団長は自信過剰の人だった。

『俺以上に強いやつはいない!』と常に豪語していたらしい。

神子様が『それほど強いのなら実力を見せてくださいな』とにっこり笑顔でお願いしたら模擬戦が始まった。

この時、海ちゃんに『この先使えるかどうか確かめたいから協力して』と黒い笑みを浮かべながら言われたので私もしぶしぶ参加した。

一応、兄に扱かれて一通り武道は嗜んでいたから何とかなるかなと思ったけど……

本当にどうにかなっちゃったときはびっくりしたわ。

軍団長……弱かった。

半分くらいの身長、体格、しかも女である私に負けたのだ。

軍のトップである男が……

最初に怒号を上げた時は何事かと思ったけど……どうやら今までその怒号で相手を威嚇してその隙に倒していたらしい。

しかし、そんなの兄の怒りの声に比べれば可愛いモノだった。

うちの兄は怖い。

特に怒らせた時は殺されるかと思うほどに凶悪になるからな。

普段優しい分、めちゃくちゃ怖い。

で、軍団長は最初は勢いがあるが時間がたつにつれてだんだん鈍くなった。

あれだ、短距離ランナーなんだよ。勢いがあるのは最初だけ。

つうか、よくそれで軍団長なんてやっていられたな……

ああ、そういえば南国はどの地位も世襲制だったか。

その後、軍も騎士団も全ての組織が実力主義になるよう神子様が取り組んだ。

そういえば、模擬戦の後、やたらと軍団長始めいろいろな人に手合せを頼まれていたな……

まあ、気分転換(ストレス発散)にちょうど良かったから相手していたけど。



西国の魔導士協会の会長は自分の地位に酔っていた人だった。

『自分は魔導士として最高の地位にいる……俺ってすげえー』ってやつです。

確かに魔導士としての保持力はすごかった。

だけど、それだけだった。

その力を活かすことを知らなかった。

西国の魔導士は己の持つ魔力の量で地位が決まっていた。

多くの魔力を持つことが良いとされ、力少ない者はどんなに優秀でも下に見られていた。

多くの力を持っていても力が暴走しない限り何もしない人が多い国でもあった。

一度暴走すると安定させるまで隔離され、自然に納まるのを待っていたらしい。

しかし、それだと体や精神に負担がかかる。

下手すれば死ぬこともある。

すでに北・東・南国で何度も見たことがある。

そのことを神子である真理ちゃんに話したら早急に魔導士育成校を設立させ、力のコントロールを指導するよう仕向けた。

その期間わずか3カ月。

その後、上級魔術などを使える者が協会のトップに立った方がいいという声が出始め、魔導士協会の会長はその地位を引きずりおろされた。

修練すれば彼は上級まで難なく使えるはずだが、努力が嫌いの人だったらしく早々に魔術封じをして魔導士としての地位を捨てたらしい。

彼曰く『保持量が少ない者の下に付くなど私のプライドが許さん』らしい。

いくら多くの力を持っていたも使いこなせなければ無意味だということに最後まで気づかなかった人である。



北国の事以外、私は直接的には関わっていないんだけど……

神子様の功績なんだけど……


私がやったことになっているの?

マジで!?


4人の神子様を見るとニヤリと口許がつり上がっていた。



あー、コレはわざとだ。


きっと、中央の神子が彼女たちの逆鱗に触れるようなことでも言ったんだろう。

その証拠に彼女たちの目が笑ってないからね。



一体、何を言ったんだ?

中央の神子様は……


なんだか、嫌な予感しかしないんだけどな~




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