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最後の召喚  作者:
番外編
19/24

番外編その3 平穏な学校生活?

翼ちゃんの学校でのある出来事。


放課後、思い思いに行動していた生徒達が一斉に立ち止まり、何事かと振り返った。


「おーい、堂元翼!」


窓の外からでかい声が響いた。

驚いて窓の外を見ると春江有人先輩が手を振っていた。

窓を開けて顔を出すと

「明日の放課後、生徒会室に来いよ!」

それだけを言うと颯爽と武道場に向かって歩いて行った。

呆然としていた私にまだ教室に残っていたクラスメートの九紀(くき)君がポンポンと肩を叩いた。

周囲を見回すと興味津々なクラスメートたちの視線が突き刺さる。

クラスの半数近くがまだ教室に残っていたようだ。

ただでさえ、今まで前髪と眼鏡で表情を隠していた私が休み明けにイメチェン(?)していたものだからクラス中大騒ぎになったのは記憶に新しい。

「お前、春江先輩と知り合いなの?」

「この間の土曜日に倒れていた所を助けられた」

「倒れていた?」

「うん、たぶんドジ踏んで転んで気を失っていたんだと思う」

「おいおい、大丈夫なのかよ」

近くにいた八楠(やぐす)君(ちなみに同じ委員会)も心配そうに声を掛けてきた。

「帰りに病院に連れて行かれて検査して異常なしと診断されたから大丈夫」

「そっか、よかった」

「堂元のイメチェンはそれが原因?」

「うん、伯父達にコンコンと説教されたから……それにいい加減鬱陶しいなって思っていたからね」

長い髪に手を触れると九紀君は驚いたような表情を浮かべていた。

「?」

「お前のあの恰好って好きでやっていたんじゃないのか?」

「えー、家では普通に前髪上げて過ごしていたよ。ただ、小学校時代から兄に外に出る時はあの恰好でって強制されていたんだよ」

「またなんで?」

「さあ?」

首を傾げる私にクラスメートたちはこそこそと何やら話している。

「俺はなんとなくお兄さんの気持ちわかるかも」

八楠君の言葉に遠巻きに私たちを見ているクラスメートたちがウンウンと頷いている。

「蓮?なんでわかるんだ?」

「風吹は親の仕事柄、幼い頃から美形を見慣れているから美的感覚が狂っているからわかんないだろうね。堂元さんはすっごくかわいいの!美人なの!お兄さんが隠したがる気持ちわかる」

ウンウン頷いている八楠君とクラスメートたちだが私にはさっぱりだ。


「美人?」


「かわいい?」


首を傾げる私と九紀君にクラスメートたちからは信じられないといった視線が送られる。

「はあ、風吹はともかく堂元さんも美的感覚ずれてる?」

「普通だと……いや、私に美的なことを聞かないでほしい。私の美術の成績知っているでしょうが」

私の訴えに再びクラスメートたちは頷いた。

「なるほど、美的センス無しってことか。よし!風吹。今度の撮影さ、モデルの人数足りなくて困っているって親父さん言っていただろ?」

「ああ、今回『学校』がテーマだから10代のモデルだけでやりたいと喚いていたからな」

ウンザリと呟く九紀君に八楠君はにやりと笑みを浮かべた。

「そのモデル、堂元さんでどう?」

「堂元?」

じーっと私の顔を見て、全身に視線を走らせる九紀君。

じろじろ見られて居心地わる~い。

観察されること数秒。

おもむろにスマフォを取り出す九紀君。


「堂元、悪い。一枚写真撮らせてくれ」

「は?」

許可を出す前に撮られたんですが……?

九紀君はそのまま、どうやらメールに添付してどこかに送ったみたいだ。

数秒後、九紀君のスマフォから着信音が流れた。

「はやっ!」

驚きつつも、廊下に出て電話に出る九紀君に八楠君はにっこりと笑みを浮かべている。

「ねえ、九紀君のご両親って……」

「あ、堂元は知らない?あいつの両親、大手芸能プロダクションの社長と敏腕雑誌編集者兼カメラマン。ちなみに父親が編集者兼カメラマンで母親がプロダクション社長。『フィンクプロダクション』って聞いたことない?」

「『フィンクプロダクション』?…………たしか、クロちゃんが所属していたような……」

「クロちゃん?」

「あ、日向(ひなた)黒兎(くろと)って知らない?声優なんだけど……」

「……日向黒兎?うーん、女性声優ならぱっと思い出せるんだけど……」

「あはは、クロちゃんもまだまだだね。『王のヒミツ』って作品の人獣(ヴィスト)役と言えば分りやすいかな?」

「……!!!!それなら知っている!主人公並に人気のある超脇役だろ?あのキャラが出るか出ないかで視聴率が変わるって言われている……」

日向黒兎とは兄の彼女である日向(ひなた)七海(ななみ)ちゃんの双子のお兄さん。

兄の大地とは悪友と書いて親友らしい。

小さい頃から演技が上手いからと七海ちゃんに『声優になって、いつか私が書く小説のドラマCDに出なさい!』と強制されていたらしい。

そして、本当に声優デビューするとは七海ちゃんは思わなかったらしい。冗談のつもりだったようだ。

ただ本人は『声優で食っていけるのはほんの一握り。役者にとって生涯現役は夢だけど、現実も見なきゃね』と言い大学で経済学を学んで、いくつかの企業からも内定も貰っているらしい。

私にとってはお兄さん的存在。



「堂元!」

同類(オタク仲間。同じ委員会でも今迄気付かなかったのは不覚)だとわかった八楠君といろいろな声優さんの話題や今のアニメやゲームの事で盛り上がっていたら九紀君が戻ってきた。

「なに?」

「来週の日曜、10時に駅前集合な!」

「は?」

「親父さんからOK貰えたのか?」

「おう!どこで見つけたんだって興奮していた」

「ちょっと……」

「俺も見学行こうかな~」

「どうせ現場に付いたらバイトと偽ってもぐりこむつもりだろうが」


「勝手に話を進めるな!」


バシっと机の上に置いてあった教科書を叩くと一瞬で教室内が静かになった。

「勝手に話進めないでよ。私はまだやるとは一言も言ってないわよ」

「あ、すまん。堂元の都合も聞かずに……」

シュンとなる九紀君に思わず苦笑する。

「まあ、いいよ。日曜日は暇だしね」

「え?じゃあ」

「日曜、朝10時ね。念のために駅には九紀君と八楠君以外の人もいてくれるといいんだけど……特に女性なら文句なし」

「は?」

「確実に兄と弟が尾行してくるから学校の仲間と遊びに行くという設定でよろしく!」

「……なに?兄と弟ってシスコン?」

「うん、もうウザイ位に!弟の方はまだましだけど……兄はね~」

小学校時代から現在までの出来事をかいつまんで話すと九紀君と八楠君にポンポンと肩を叩かれ労われた。


「あの……」

私たちの近くにいた相川由美さんが声を掛けてきた。

「その撮影って私たちも見学できるかな?」

キラキラと瞳を輝かせているのは主に女生徒たち。

「見学?」

「うん、一度撮影風景見て見たかったの!」

興奮気味に伝える相川さんに九紀君は申し訳なさそうな表情を浮かべて断ろうとしていた。

「ふむ……ねえ、九紀君」

彼女達を見て私はある提案をした。

その提案を聞いた九紀君は苦笑しながら父親に連絡を取ったら速攻OKの返事が来たそうだ。

ついでに撮影場所もすぐさま学校側に許可を取るからとこの学校で行うらしい。



そして、あれよあれよという間に、学校側の許可もすんなり下り、撮影日となった。


持ち込まれた衣装や機材の多さにクラスメートたちは興奮気味である。


そして何より、なぜか生徒会メンバー勢ぞろいであります。

会長と副会長は女生徒とモデルの女の子たちに囲まれているので少し離れたところにいた春江先輩に声を掛けた。

「春江先輩」

恐る恐る声を掛けるとにぱっと笑みを浮かべた春江先輩。

「おう!堂元。モデル頑張れよ!」

「あ、はい。ありがとうございます。……ってなんで先輩方もいるのですか!?江馬先輩もいるし!」

春江先輩の隣でにこにこしているのは同じ委員会(図書委員だよ)の委員長様である江馬(えま)(あたる)先輩がいた。

「おはよう、堂元さん。有人から面白い情報を貰ったから見学に来たんだ」

「面白いって……」

江馬先輩の言葉に思わず脱力する私に二人はクスクスと笑っている。

「堂元さんのイメチェンは学校中の噂だよ。そんな君が雑誌の素人モデルとして参加すると聞いたら見学しない手はないだろ?幸いにも現場はうちの学校だし」

ニコニコと笑っているが食えない人なのが江馬先輩だ。

江馬先輩は私が一年の時からの知り合いだが、彼の笑顔には要注意と去年一年で身に沁みついたよ。

以前、図書室で騒いでいた男子生徒達を笑顔一つで撃退したことがある人なんだよな。

それ以来その男子生徒達は江馬先輩の姿を見かけると逃げるそうだ。

一体、どんな方法で撃退したんだろうが……だが、誰もその方法を教えてくれない。

『知らない方が幸せなことがあるって本当だな~』とその場を偶然目撃してしまった人たちは遠い目をしてそう漏らしていたくらいだろうか。


さて、撮影は九紀君のお父さんの指示の元、次々と衣装を変えて順調に進められた。

途中、生徒会メンバーと江馬先輩も引っ張り込まれるという事件(?)もあったがトラブルもなく終了すると思われていたその時。


思いがけない人達が登場して女性たちの間でちょっとしたパニックが起きた。


九紀君のお父さんは最初から知っていたらしく、平然としていたが他のスタッフが騒然としていた。

『フィンクプロダクション』所属の新人アイドルが登場したのだ。

全員イケメンだった。(クラスメート談)

彼等はその場の雰囲気をあっという間に自分たちの空間にしてしまったようだ。

私は皆から離れた場所で九紀君のお父さんから次も参加しないかという打診をされている所だったから少々反応が遅れた。

九紀君のお父さんに挨拶に来た彼ら。

次々に挨拶はしているが視線は人だかりのある生徒会メンバーに向いている。

九紀君のお父さんは苦笑しながら、彼等に事前説明をして控室に追い払おうとしていた。


「こら!君たち。勝手に行動しない!」


その彼らの後ろから一人の青年が怒鳴りながら駆けてきた。


「あれ?久龍さん?」

見知った人を見かけた私に九紀君のお父さんが首を傾げながら知り合いなのかと聞いてきたので正直に答えたら、両肩をがっちりと掴まれた。

「ぜひ、堂元さんには次の俺の企画に参加してほしい!いや、君がいれば彼が簡単に釣れそうな予感がするんだよ」

え?それは私は餌ってことですか?

って、誰を釣r……ああ、久龍さんに視線を送っているってことはクロちゃんか。

久龍さんに視線を向けると苦笑いをしながら頷いている。

「はあ、私でお役にたつのなら……」

「よし!親御さんには後日契約書を持って伺うからと伝えておいてほしい」

「え?ボランティアじゃないんですか?」

「は?ちゃんとギャラは払うよ?今日の撮影分もちゃんと」

キョトンとしている九紀君のお父さんに久龍さんがクスクス笑いながら後は任せてくださいとか言って私を連れだした。


人だかりから離れた場所で私は久龍さんからアイスコーヒーを貰ってのどを潤した。

九紀君のお父さんの許可は貰っているし、私が参加する撮影は終わっているから大丈夫だろう。

久龍さんはアイドル君達を撮影スタッフに引き渡すとある程度暇らしく私に構ってくれているのである。

「まさか、翼ちゃんが九紀編集長の企画に参加しているとはね」

「久龍さんは今日は?」

「ああ、黒兎の収録が夜までかかる……缶詰め状態だから俺は社長命令であいつらの代理マネージャーというか付き添いのようなものだよ」

「掛け持ち?」

「今、うちの会社ダウンしている人が多いからね。夏の疲れが今頃出て来たらしい」

「うわ~大変そう」

「そう、だから俺もあっちこっちに引っ張られるってこと」

「ご苦労様です」

「うん、翼ちゃんからの労いが何よりも癒しになるな」

ポンポンと私の頭を叩く久龍(くりゅう)牙狼(がろう)さん。

芸能人みたいな名前だけど本名である。

芸能人並に顔立ちをも整っていて業界人と言われても違和感はないけど本人はごくごく普通の会社員だと言っている。

自分は表よりも裏で動く方が性に合っているんだと笑って話していたことがある。

彼は日向黒兎のマネージャーでクロちゃんがデビューした当時からのマネージャーさんでもある。

クロちゃんがデビューしたのが高校生の時だから……知り合ってから5~6年位かな?

今ではもう一人のお兄ちゃん的存在でもある。



「おーい、堂元!」

クラブ棟から誰かが駆けてきた。

「あれ?鈴伏君?」

「撮影お疲れ!これ頼まれていたモノ」

紙袋を差し出したのは鈴伏(すずふく)(らん)君。

同じ部活のお仲間さんである。

「翼ちゃんのお友達?」

「あ、はい。同じ部活仲間です」

隣に座っていた久龍さんの声に私は鈴伏君を久龍さんに紹介した。

「『フィンクプロダクション』に勤めている久龍牙狼です」

名刺を差し出さす久龍さんにガチガチになりながらも挨拶をする鈴伏君。

「俺は堂元さんと同じ部活の鈴伏嵐です。…………『フィンクプロダクション』って日向黒兎さんが所属している?」

「久龍さんは彼のマネージャーさんだよ」

私の言葉に鈴伏君は目を見開いた。

「まじ!?俺、日向さんのファンなんだよ!」

興奮気味な鈴伏君に久龍さんは嬉しそうに笑っている。

「黒兎のファンとは嬉しいな。これからもあいつをよろしく!」

担当役者のファンと言われて喜ばないマネージャーはいないらしい。

例にもれず久龍さんも嬉しそうに機密事項に触れない程度の情報で鈴伏君との会話を楽しんでいた。

「あ、そうだ。堂元」

「ん?」

「夏の祭典の時にコスプレしたってホント?」

突然、話題を変えてきた鈴伏君に驚きつつも頷く。

「七海ちゃんとお母さんに無理やりやらされた。でもどうして?」

「ネットで話題になっているんだよ。突然現れた美少女コスプレイヤーって」

「は?」

「ああ、それならうちの事務所でも身元捜ししていたけど……翼ちゃんだったのか」

うわ~、なんだか嫌な予感がする。

「なあなあ、今度の文化祭。うちらの部活でコスプレ館やらないか」

「へ?コスプレ館?」

思っていた話題ではなく文化祭の話に首を傾げる。

「そうそう、毎年うちらの部活は小冊子の販売だけだろ?」

「それが活動だからね」

「で、部長と話して今年は趣向を変えてみようかと話していた時にネットでお前のコスプレ姿を見かけたってわけだよ。で、部長が『コスプレ館』でもやってみるか……大丈夫、衣装なら伝手があるから(ニヤリ)って感じで部長の中ではほぼ決定しているはずだ」

「……って部長の中で決まっているなら決定事項じゃない。伺いを立てる必要ないでしょうが」

「まあ、一応な」

「私自身がコスプレしなくていいのなら賛成。部員もコスプレしなきゃいけないのなら反対ということで」

「了解。(あの部長が逃すはずないと思うけど)部長には伝えておくよ」

その後、鈴伏君は久龍さんに挨拶をしてものすごいスピードでクラブ棟に走って行った。

久龍さんは面白そうに彼の後ろを見送った後

「ということは、七海ちゃんに頼めば何とかなりそうかな?」

とかブツブツと呟いていたが、掛かってきた電話で仕事モードになったらしく彼も本来も持ち場に戻っていった。



その後は、アイドル君たちと合同の打ち上げを近くのファミレスで行い解散となった。

クラスメートの何人かはアイドル君たちとメアド交換したらしく興奮気味だった。


簡単にメアド教えていいのか?

事務所的に大丈夫か?


という心配を私がしてもどうにもならないが、一応久龍さんに報告だけはしておいた。



後日。

アイドル君達とメアド交換していた子達から連絡が取れなくなったという報告を受けた。



今回転生組

キース・フィンク → 九紀風吹 (くきふぶき)

 クラスメート 『フィンクプロダクション』の息子

フランク・フレーベル → 鈴伏嵐 (すずふくらん)

 同じ部活 文芸・芸術部

ヤン・グレスラー → 八楠蓮 (やぐすれん)

 クラスメート 同じ委員会 オタク仲間

アルヴィスタ・エルマン → 江馬充 (えまあたる)

 高3 同じ委員会の委員長、有人とはクラスメート


カルロ・クリューガー → 久龍牙狼 (くりゅうがろう)

 『フィンクプロダクション』所属の日向黒兎のマネージャー

 翼にとっては年の離れた兄的存在


ヴィート・ウェス・クローチェ → 日向黒兎 (ひなたくろと)

 『フィンクプロダクション』所属の声優

 翼の兄・大地の親友(悪友ともいう)

 大地の彼女・日向七海の双子の兄

 翼にとっては兄的存在



となっています(一応)

次の話は中央国の王妃と侍女たちの話でも書こうかな。

多分、次回で完結になるかと……(あくまで予定)


翼とヴィートの話(意外と要望が多かった)は別の物語として起ち上げようと思います。


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