表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最後の召喚  作者:
本編
1/24

1.また巻き込まれたみたいです

あー、またか。


ぶれる視界に見覚えのある風景が交じり合う。

何度経験してもなれるモノじゃないが、少し位は余裕は持てる。


さて、次はどこの国に落ちるんだろうね。

北・東・南・西は行ったから残るは中央か……


だんだんと定まる風景に懐かしさを覚えつつもこれから起こる出来事にため息が出る。


また牢生活からのスタートだろうな~


ちらりと隣を見ると茶色い長いストレート髪、ダークブラウンの瞳を持つ美少女が不安げにあたりを見回している。

そして私に気付くと一瞬、表情を歪めるが少なくとも見知った人間がいることに安堵したのだろう。

彼女が安堵した瞬間、歪んでいた景色が定まった。


そしてお決まりの言葉が響き渡った。


『ようこそ、異世界の美しき神子。セルラ国はそなたを歓迎しよう』


その後はお約束。

茶髪の美少女ちゃんは神子として神殿と王宮に丁重に案内され、私は【おまけ又は意味のない者】とされ牢に入れられた。


普通さ、一緒に召喚されたなら何かしらあると思わねえのかね……この世界の人たちは……



それにしても、マジで中央国(セルラ)でしたか。


前回が西国(ウェス)

前々回が南国(サス)

前々々回が東国(イス)

前々々々回が北国(ノズ)


私が訪れた事がある異世界の大陸の国制覇です!

正直こんな世界で無意味な制覇はしたくなかった。


というか、異世界へ来るのは一度あれば十分!

なんで何度も巻き込まれなきゃならないのよ!!


そう、私は巻き込まれたのだ。

前回も、前々回も、前々々回も、前々々々回も!

神子の資質(?)を持っている人の傍にいたがために巻き込まれて異世界に来ちゃうのだ!

巻き込まれ体質なのだろうか。

神子たちを陰ながらに支えながら各国の問題解決した後、速攻元の世界に戻してもらっていた。

神子となった子達はこの世界で伴侶を見つけて居座るんだけどね。



前回はクラスメート。

前々回は同じ委員会の子。

前々々回は同じ部活の子。

前々々々回は幼馴染。


そして今回はただの通りすがり。


もういい加減にしてほしい。

私は平穏な学生生活を送りたいのに高校に入学して2年。

すでに5回も異世界に来ちゃっております。


まあ、戻る時は時間が召喚された時間まで戻るので学生生活には支障はない。

一応肉体的にも戻るので見た目の変化もない。

唯一精神だけは戻せないので、私の精神はすでに17歳+αだ。


えーと、考えたくないけど一応計算しておこう。

前回は帰るまでに1年。

前々回が2年。

前々々回が4年。

前々々々回が6年かかったんだよね。

トータル13年(なんか不吉な数字だな)異世界で過ごしたことになる。

実年齢と足すと……30歳かよー!

なんだか得をしているのか損をしているのか分からない。


あー、そういえば私の周囲の評価は『大人びている人』だっけ。

ふっ、精神年齢30歳ともなればそうかもね。


さて、現実逃避はここまでにしよう。

一番最初に召喚された時(・・・・・・)からどれくらい年月がたっているのか気になるが…。

普通に考えれば13年だよな……

今迄もそうだったし……

私が帰った時点から数か月後に次の国で召喚(ただし私は巻き込まれ)だったからな~。


ということは、幼馴染だった瑠佳ちゃんは30歳!?

会ってみたいような会いたくないような……

あー、でも彼女は絶対、年とってもキレイなままだろうな。

一国の王子達を魅了して逆ハーレム作っていたくらいだからね。


ってまた脱線した。


さて、今回召喚されたのは、学校でも一、二を競う心優しき美少女ちゃん(自称)。

確か名前は……佐藤美咲。

男受けは確かに良かったが、男と女で態度を変えることで女子からは嫌われていた。

男の前では可愛い女の子を演じ、女の前では他人を見下すような子だ。

まあ、私は傍観していたけどね。

それにしてもうちの学校、4人も行方不明者が出ているのに平和だったわ。

まるで最初から存在していない扱いになっていたから違和感あったけどいつの間にかそれが当たり前になっていた時は自分に驚いたけどね。



閉じ込められた牢には術封じはされていないわね。

というか私が魔術を使えるとは思っていないからしてないと思った方がいいかもしれない。


召喚に巻き込まれる度に命がけで取得しましたよ。


『魔術』全般を!

余すことなく上級・特級レベルまで網羅しました!!!!


最初に召喚された時はただ必死に、2回目の時は殺されないために、3回目の時は神子の補佐として、4回目の時は自分で元の世界に帰る方法を探る為に……


「ふむ、牢屋に入れられて4日……ただ飯を喰らうのも申し訳ないから、とっとと帰るとするか」


心優しき美少女ちゃん(自称)の事はどうでもいい。

全く知らない他人だからな。

多少なりとも交流があれば手助けしようとも思うが、彼女は私を一方的に嫌っている。

面識はあっても言葉を交わしたこともない相手から嫌われるって……私なんかしたかな?

彼女がどうなろうと私の知ったこっちゃない。

それに、彼女に『神子』としての力があるのなら大丈夫だろう。

この世界は『神子』にやさしいからな。

さながら乙女ゲームのように……わんさかと美形が彼女をチヤホヤして、その地位を確立にしていくだろう。



私は床に胸ポケットに入れておいたマッ○ーで魔方陣を描く。

え?なぜマッ○ーを持っているかって?

たまたまポケット入れていたのだよ。普段は持ち歩かないからね!

伊達に召喚に巻き込まれる度に魔術を習得していたわけではない。

2~4回目の召還の(戻る)時にもしものためにと記憶しておいたのだ。

実際自分で使うのは初めてだが、間違いはないだろう。


魔方陣の真ん中に立ち、首から下げていたペンダントを取り出す。

異世界から帰る度にスカートのポケットに入っていた水晶を加工した物だ。

4つの水晶を四方に配置。


青は東。

赤は南。

白は西。

黒は北。


水晶を配置して中央で呪文を唱えようとしたその時、牢屋の扉が突然開き一人の青年が飛び込んできた。


「わー!ジュリ姉様!待った!待ってください!まだ帰らないでください!!!」


突然の乱入に、慌てて呪文を止めると光りはじめていた魔方陣が静かになった。

「ま、間に合ってよかった……ジュリ姉様。お迎えに上がりました」

恭しく跪く青年に首を傾げる。

私はこの国に来てから一度もこちらの世界での自分の名前を言っていない。

なのになぜこの青年は知っているのだろうか。


私の本名は堂元翼。

だけど、こちらの世界では元の世界で使っているペンネーム堂本樹里で通していた。

『神子』たちもお仲間だったので互いにペンネームで呼ぶこともあったから周囲は偽名だとは気づかなかったのだろう。

彼女たちは神子の誓約だか何だかで本名しか名乗れなかったけどね。

私の名前(偽名)を知っているのは今まで私に関わってきた人物。

それも各国の上層部のみで私の存在は極秘扱いにされているはず。


「なぜ、私の名を?それに姉様って……」

不思議に思い問いかけると一瞬泣きそうな顔をした後自己紹介をした。


「僕は北国の魔導士・ファルと申します」

北国のファル?

はて、似たような名前の子を知っているような……

「ジュリ姉様がご帰還なさって7年が経っております。ご帰還時10歳だった僕も17歳になり成人しました」

にっこりと微笑むファルに幼い頃の笑顔が重なる。

「え?……魔導士見習いだったあの小さかった泣き虫ファル!?」

「はい、いつもあなたに慰めていただいてたファルです」

ファルは立ち上がると私よりも頭一つ高くなっていた。

「再び見えることが出来、すっごく嬉しいです」

満面の笑みを浮かべるファルに私も自然と笑みがこぼれる。

「ファルは立派になったね」

以前は私の身長の半分もなかったのでよく頭を撫でていたが今はもう見上げるようになってしまった。


「ファル殿、ジュリ殿は……」

久しぶりの再会にほっこりしているところに新たに人が増えた。

しかも3人も……

そして、この3人も私の事を知っている人達だった。



***


「……で、なんで大人しく牢に入っていたの?ジュリ。あんたには南国の特級魔導士の証の水晶を渡してあったでしょ?」

腰まであるプラチナブロンドを首の後ろあたりで一括りにしている南国の上級魔導士・シルヴィはティーカップを優雅に持ちながら私を見つめる。

その隣に座っているのは濃紺の髪を後ろに撫でつけて一見魔導士ではなく騎士と見間違う西国の上級魔導士・トール。

私を挟んで右隣りには緑色の髪を肩のあたりで揃えている北国の上級魔導士・ファル。

左隣には赤茶色の髪を三つ編みにして後ろにたらしている東国の上級魔導士・トルディアが陣取っている。

ちなみに彼らは中央国が召喚の儀を行うと知らされ国王の名代として中央国に来ているという。

「え?この水晶って魔導士の証なの?」

魔方陣に設置していた水晶はご丁寧にも彼らによって回収されて元のペンダントに収められている。

「し・か・も、北・東・西の証もあるじゃないの。これを見せれば『神子』よりも上の待遇を受けれるのよ」

「私はただ巻き込まれただけだから牢に入って数日大人しくして、警備が油断した隙に元の世界に戻ろうと思ったのよ……なんで引き留めたのよ」

「『神子』がジュリ殿に会いたがっている」

トールの言葉にシルヴィ、ファル、トルディアも頷いた。

「ええ、どうやって私が来たこと知ったのよ」

「召喚の儀の数日前に魔導協会会長の水晶がジュリ殿の力を感知した。だから俺達が中央国に派遣された」

「過去3回召喚に巻き込まれた時は?」

「感知はしていたんですけど、混乱している国に訪問するのは…ということで落ち着いてから訪問したらすでにジュリ様は帰還された後だったんです」

ウルウルと瞳を潤ませながら訴えるファル。

「あれ?じゃあ、今回は?」

「今回は中央国が自国の魔導士はすごいんだと威張りたいがための召喚なので堂々と乗込みました」

「なるほど。過去の事は分かった。……で、『神子』が会いたがっているから私に各国を巡れって?めn……」

「『神子』は明日、この国に来る」

「は?」

「召喚の儀の直後にジュリ殿が中央国に現れたと連絡を入れたら『最低5日間は留まらせなさい。もし、帰還していたら宮廷魔導士をクビにするから!!!』と言われた」

「うちも言われた」

「俺の所も」

「僕の所もです」

「だれに?」

「「「「『神子』」」」」

恐る恐る聞くときれいにハモりました。


その後、彼等の『神子』が何時頃到着し、中央国の王とどれくらい謁見するかなどのスケジュールを夕食前までこんこんと説明された。

今更、私に会ってどうするのよ。

私は早く元の世界に帰りたいのに~。


ちなみに帰還の魔方陣は彼らに綺麗に消されました。

勝手に帰還しないよう見張り(侍女と騎士)も付けられました。


召喚された『神子』よりも待遇が良くなり『中央国の神子様』に睨まれております。



気分転換に書いているので不定期更新です。

3~5話予定(あくまで予定)


いろいろと突っ込み要素あると思いますがスルースキルを発動していただけると助かります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ