強運と導き
遅くなりましたm(._.)m
ヒロとダンが村長の家へ向かい後に残されたニアは隣の部屋へと通じる扉を開ける。
自分以外、誰も居ないのにこっそり覗いてしまうのは未知の部屋へのお約束だとニアは思っていた。
そこは台所のようで竃や瓶、籠に盛られた泥付きの野菜などがあった。
ニアは中に入ると一通り置かれているものを確認する。
そして野菜のいくつかを見ながら、前の世界の物とは少し違うけど大丈夫そうと一番の心配がなくなりホっと息を吐いた。
ニアが一番心配していた事、ヒロに満足な食事を食べさせてあげられない事。
持ってきた食料には限りがある。それが尽きる前にヒロの食べ物を確保したかったのだ。
台所にあるもう一つの扉はきっと外へ出る為の物だろう。
外から見た大きさから1階にこれ以上の部屋がない事を目算したニアはまた先ほどまで居た部屋へ戻る。
そして目をつけていた隅にあった階段へ向かった。
やはりここでも抜き足差し足と、まるで泥棒のような足取りで2階へ向い全てを上がりきらず、そこから覗き込む。
階段を上りきると踊り場があり右側に廊下が見えた。
その廊下に2つの扉が見えることからきっと2階にも2部屋あるようだ。
そのことを見て取るとニアはスルスルと1階へ降りる。
やっぱり個人の私室がある所は勝手に見ちゃだめだよねと独り言を言いながらまた台所へ移動した。
1階2階と家の中を大体で確認したニアは今度は台所から外へ繋がるであろう扉へ向かった。
とびらを開けると確かに外に繋がっていたのだがほんの1・2歩先に小屋があり扉が見える。
ニアはこんな近くにあるんだからきっとここもダンさんの持ち物だよね。ってことはここも見ていいのかなぁ駄目かなぁと一旦は躊躇したもののそこは好奇心旺盛な女の子、扉に手をかけた。
「お邪魔しま~す。」
扉を開けながら声をかける。
万が一、ここが他の人の物だった場合の用心に声を出したのだがどうやらダンの狩りなどの道具を置く物置小屋のようだ。
外から見たより小屋は大きく突き当りにもう一部屋あるようで扉がある。
乱雑に置かれた道具や物の間を縫うように進み扉にたどり着くと扉を開けた。
「あ・・・。ここってお風呂っぽい?」
一段下がるように低くなった床は土であり、大きな石をタイルのように敷詰めている。
右側に大きなタライのような物と小さな手桶、左の壁には外から筒のような物が突き出ておりそこから絶えず水が流れ出ていた。
きっと裏の山からの水を引き入れているのだろう。
左隅の地面には外へ向かって溝があり排水が行われている。
ニアはこの部屋が微妙に隠されているように感じた。
もしかしてこの村には風呂に入る習慣がないのかもしれない。
それともただ単に水浴びするのに外へ出たり冬などの寒い季節ようにと水源に近いこの場所に後から作ったのかも知れないが・・・。
なんにせよダンが帰ってくれば分かることだと小屋を後にし台所へと戻るのだった。
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村長パパゴや村人に2人の滞在の許可を得たことに肩の荷を1つ下ろしたダンはヒロに声をかけた。
「ヒロ、先に家へ帰って心配してるニアに報告してやれ。俺は村長たちともう少し話してから帰るから。」
その言葉に頷き村長と村の男たちに感謝と挨拶をするとヒロは村長宅を後にした。
ヒロが居なくなるとダンはパパゴと村のおとこたちに感謝の言葉を告げ、その後、さっき話す事のなかった事実を話し出した。
「俺が2人を結果的に助けた後、あいつらが荷物を置き去りにしたところへ取りに行ったんだが、驚いた事にあいつらが居た場所はノーラの結構奥に入った場所でしかも一晩そこで野宿したって言うんだ。」
「そんな馬鹿な!子ども2人でしかもノーラの奥地で無事夜を明かすなどありえない。」
ダンの話に部屋に居る皆から口々に驚きの声が上がる。
それほどノーラの森の奥地には恐ろしい獣が多いかった。
熟練の狩人ですら入ることを拒む程に・・・。
「俺は思ったんだ。こいつらはノーラの山の神に愛されているってな。でなければ生きて夜を過ごすなど出来るわきゃない。そんな考えもあって余計に俺はあいつたちをほっておけなかったんだ。」
ダンの言葉にパパゴはしばし熟思黙想すると皆を見渡し自分の考えを伝えた。
「皆が思う通りノーラの奥地で夜を明かすなど常人には無理だろう。神に愛されてるかどうかは別にしてあの2人には運があるということだ。それも強運が。私はあの2人をこの村へ迎えたのも何かの導きのように感じた。そこで皆に願いたい。あの2人を正式にこの村の者として受け入れて欲しい。」
その言葉に部屋に居る全ての者が異論を唱えることはなかった。
読んでいただきありがとうございました。