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主役交代?(笑)  作者: 未満
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犬と呼ばないで

ニア結構酷いw

 コランダムと和解が出来た2人は大人の意見にしたがい村を目指した。

 のんびりとした道中で2人の珍しい服装や持ち物に興味をしましたコランダムに本当の事を告げたのだが、お前らにも言えない深い事情があるんだなと全く信じてもらえなかった。

 色々な話をしてる間にお互い打ち解け、2人はコランダムのことをダンさん(ヒロはダンのおっさん)と呼び、コランダムはニア・ヒロと呼び捨てるほどになっていた。


 「ねぇ、ダンさん。ところで薬草は採れたの?」


 「それがな。探してる途中で獣に襲われたもんでまだなんだ。」


 罰の悪そうなダンにヒロはダメだなおっさんだなぁと悪態をつき、すぐさまニアに足を蹴られる。

 涙目のヒロを軽くスルーし、みんなで薬草を探そうとニアが提案する。


 「でもなぁ。さっきみたいな獣にまた襲われるかもしれんぞ。」


 「大丈夫だよ。ヒロにやっつけさすから。」


 「え!!俺?」


 急に話の中の重要なポジション(貧乏くじともいう)を与えられたヒロはとっさに不満の声を上げるがニアの何か文句があるの?の視線に喜んでその役を引き受けた。

 2人のそんな様子に慣れ始めたダンはヒロにほんの少しだけ憐みの目を向けたが薬草の特徴を聞くニアの声にすぐそんなことは忘れる。

 楽しそうに薬草の事で盛り上がるニア達に自分の存在を忘れたかのような態度にヒロは理不尽だぁと泣き言を漏らすのだった。


 ダンの探す薬草は全長が大きい物でも15cmで葉は丸く葉先と葉の裏が赤いのが特徴でこの山では探すのは左程難しくないと言う。

 しかし、今は夏の終わりで草が生い茂り背の低い薬草を隠してしまう。


 「時期が悪いんだよ。秋になれば草は枯れ出し薬草には花が咲き、その香りで場所を教えてくれるんだがな。」


 「どんな香りなの?その薬草。」


 「花が咲いていない時の薬草は殆ど匂わない。だが葉に傷をつけるとかすかだが薬独特の清涼感のある香りがする。」


 そのダンの答えにニアは何とかなるかもと腰の高さを超える草の方向へ歩み寄る。

 そして辺りを見渡すと腕を胸の高さまであげ手前から草叢へ向かって大きく振りながら「風よ渡れ」と凛とした声で唱えた。

 するとそこに一陣の風が生まれ草を大きく後方へ揺らす。

 ダンは目の前で発動された魔法に驚き、またその後のニアの言葉に目を向いた。


 「行け!!ヒロ、香りをたどれ!」


 前方を指さしGOの掛け声を出すニア。

 その声に不貞腐れていたはずのヒロは条件反射のような反応を見せ疾風のように駆けて行く。

 あっけに取られその後ろ姿を見送ったダンにやり遂げた感を出し満足そうなニア。


 「ニア、お前って魔法使いだったのか?」


 「魔法使いっていうか使えるよ。少しだけど。」


 ニアは知らなかったのだ。

 この世界の魔法は5人に1人と使える者はある程度居るがそのほとんどがマッチの火の大きさの炎を出せるくらいだということを。

 ましてあのようなに完璧にコントロールされたものは国に仕えるほんの片手程の人間しかいないことを。

 ダンのあまりの驚愕の様子にニアは「この程度しか使えないのか?」と引かれたのかも・・などと見当違いなことを考えていた。

 小首をかしげ自分を見つめるニアにダンは、まぁ規格外なのは分かっていた事かとスルーすることにした。


 「まぁ魔法の事はさて置き、あれは何を狙っていたんだ?」


 「んとね。風で草同士をぶつけ合わせ傷つけて薬草の香りを出す為だよ。」


 ニアの答えにダンは目を見開く。

 この子は少しの情報で瞬時にそんなことを考えて行動していたのか・・・。

 ニアの思考力や行動力に感心していたが、そう上手くいくだろうか?と考えを巡らせる。

 例え今の作戦が成功していたとしても薬草の香りは弱い。

 しかもこの広い森の中でそのかすかな香りを探し出せるものなのか?と



 ダンがあれやこれやと考えだして10分少し経った頃、飛び出して行ったヒロが帰ってきた。

 勿論、その腕には何やら植物のようなものが沢山抱えられている。

 ニアのお帰りと労いの言葉に表情を緩めたヒロがダンの目前に抱えていた植物の一部を握って差し出した。


 「おっさん、これで合ってる?」


 差し出された植物を確認すると確かに探していた薬草だ。

 しかも必要な量に十分過ぎるくらいにある。


 「お前これをどうやって・・」


 「どうやってってニア姉ちゃんが魔法で匂いが出るようにしてくれたからすぐ分かった。」


 簡単なことのように言いヒロはもう薬草に興味が無くなったのかダンに押し付けると放り出した荷物のところへ歩いて行った。

 ダンは自分の腕の中に残された薬草の香りを嗅ぐが鼻先に持ってきてやっと判別出来る程の香りしかしない。

 やっぱり、ヒロは普通じゃない。改めてそう思っていたダンの耳にニアとヒロのやり取りが聞えた。


 「偉かったね。ヒロ。凄い凄い。」


 「それほどでもないけど。あのさ、ニア姉ちゃん。」


 「何?」


 「行け!!とか、匂いをたどれ!!とかそれって・・・」


 「犬みたいでかっこいいでしょ。ワンワンヒロ。」


 「犬って呼ばないで~~。」


 ニアの笑い声とヒロの叫び声がこだまする中、ダンは「犬ってなんだ?」と首をかしげるのだった。


 




 

 


 

 

 

 

 




 

読んでいただき有難うございました。

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