ウィンクの和解
だんだんヒロがへたれになっていく・・・
コランダムは木陰に入って行くニアが最後に自分を見た事で不安になった。
あのニアと言う少女の不評をかったのでは・・・
ニアの態度や言動はとても丁重であったが自分を見る視線は何かを訴えていた。
もしや俺の態度の何かを怪しいと感じたのか?
そう考え出すと次第に落ち着かなくなる。
ヒロと言う男は言った。自分の大切な人だと。その人に失礼な事をしたら・・・。ひぃ~、またもや命の危険が。
コランダムの顔色は青を通り越し今は白と化している。
待っていてと言われたが、じっと待っていることもましてや逃げることなどもっての外。
そうなると2人の話し合いが凄く気になる。
コランダムは自分の未来に重大な関わりを持つだろう会談場所(ただの木陰w)にそっと近づき気配をなるだけ消し聞き耳を立てた。
「ヒロ、何か言うことは?」
「はい。俺の行動は浅はかでした。ごめんなさい。」
「で、コランダムさんのことはどうするわけ?」
「えっと・・捨てる?とか?」
「ふざけんな!!馬鹿ヒロ!!」
ヒロがニアの顔色を見ながら言った冗談はニアの地雷を踏み抜いた。
その証拠にニアの全身からは目の錯覚だと言いきれない陽炎のような炎が吹き上がっている。
ヒロは自分の先程掘った墓穴にとっとと自ら飛び込みたくなったがこのままニアを放置することも出来ず、平身低頭で謝りまくり怒りを鎮めるほかなかった。
その頃、コランダムは自分を捨てようと提案するヒロの声に震え上がる。
そしてどうにかギクシャクと体を動かし、その案が採用されるのか状況を確かめようと木々の間から覗き込んだ。
しかしそこに広がる光景に目を見開く。
あの魔人が地に跪き許しを乞うている。
あまりの衝撃に視線をはずそうと無意識にニアの方を見たコランダムは今度こそ固まった。
そこに見たニアは表情を消し半眼の目で一点を見つめていた。
ただの一言も発していないのにその全身から怒りの刃が次々と放たれている。
勿論、その先には魔人たるヒロが憔悴した表情でその全てを受け止めていた。
コランダムは今、全てを理解していた。
この少女が怒っているのは自分のためだということ。
しかもこの少女はあの魔人すら無言のうちに諌めることが出来るということ。
自分の命運とその全てを握っていたのはこの少女であったということ。
真に敵に回すべきではないのはこの少女だということを。
コランダムは木々の間から抜け出しニアに待っているよういわれた位置に戻ると姿勢と居住まいを正すと、それまでの悲壮な表情は消え去っていた。
そしてこれからの対応について考えるのだった。
それから半時ほどが経ち、ニアがヒロを伴って帰って来る。
「申し訳ありません。大変お待たせいたしましたね。」
ニアの謝罪の言葉にコランダムは首を振る。
「いやいや。こちらもゆっくりさせてもらってやっと気持ちが落ち着いたよ。」
なるほど顔色の悪かった男の様子は打って変わり、口調にも変化が見られ少し余裕も出て来たよだ。
ニアはその変化を素直に喜び、硬さの取れた男に笑顔を見せる。
良かったと無邪気な様子のニアにコランダムは自分の考えが間違っていないと確信すると思い切ったように切り出した。
「あの・・えっと堅苦しい口調は苦手なんで申し訳ないんだが普段通りに話させてもらう。さっき言ってたが、どうだろう俺の村まで来てくれないか?」
ニアはその言葉に、それはヒロに脅されて無理やり言わされた約束だと知っていたので無理をしなくて良いと答えるとヒロの彼に対する対応を真摯に謝った。
それに対してコランダムは顔の表情を緩める。
「確かに最初はどうかと思った。獰猛な獣を一撃で倒す傍若無人な男を自分たちの大事な村に招くのに不安も感じた。でもな俺はあんたを見て大丈夫だって思ったんだよ。」
「でも・・・。」
「それにこんな山の中に何日も居るわけにゃいかんだろ。ここは素直に大人のいうことを聞いといたらどうだ?」
そう言うとコランダムは笑いながら下手くそなウィンクをした。
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