虚飾の姫君と真実の画家
ある所に、真実を映すと謳われる画家がいました。画家は未だ年若い青年で、お金にがめつく、鼻持ちならない青年でした。
しかし、その絵だけは誰もが否定しようもなく、本物でした。
あるときは、農民が必死で収めた税金を横領し、私腹を肥やしていた領主の貴金属を描き出し、またあるときは反乱軍による暴挙だと言われていた戦争の絵で、王国軍の非道な仕打ちを暴き出しました。
青年の絵には、真実が映るのです。
青年にとってそれは、何ら不思議な事ではありません。青年はただ、目に映るものをそのまま描いているだけなのです。この世界は元々、優しくも美しくもないのですから。
そんな中、青年の噂を聞きつけたお姫様が、青年をその御許まで呼びつけました。何でも、真実を映すという青年に肖像画を書いて欲しいと言うのです。
青年は、鼻で笑いました。すでに多くの美しい姿を描いたお姫様の肖像画が、市井にまで出回っています。それなのに、更に真実を映すと言われる自身に肖像画を依頼するなど、傲慢な自信が透けて見えました。美しい肖像画は真実であると、自身の美貌をひけらかしたいのでしょう。
青年は、その傲慢な自信を打ち砕く為に、その依頼を受けました。例え不敬罪だと捕らえられても、青年は真実というものを明らかにしたいのです。
しかし、お姫様に会った青年は、拍子抜けをしました。その容姿が、肖像画とは似ても似つかなかったからです。
けして、醜い訳ではありません。ただ、あまりにも素朴で地味な容姿をしていました。とてもお姫様とは思えないような、あの麗しい国王夫妻の娘とは思えないような、城下に出ればすぐにでも埋もれてしまいそうな、そんな突出した特徴のない少女でした。
あの肖像画に描かれている、輝かんばかりの美貌の姫君は一体どこにいるというのでしょう。
青年は、似ても似つかぬ姫君の真実を描き出しました。あんな虚飾の限りを尽くした肖像画で勘違いをしているだろうお姫様に、真実を叩きつけてやりたかったのです。青年は、何よりも嘘が嫌いでした。
そして、描き上げた絵を献上すれば、側に仕えるお姫様の侍女はざわつきました。何事か、と控える騎士は腰元の剣に手を掛けました。
そんな、一瞬の緊張を取り払ったのは、お姫様の噴き出す笑い声でした。
お姫様はやはり、あの肖像画のように神聖な雰囲気もなく、城下に住むただの娘のように肩を震わし、小さく声を漏らして笑います。一頻り笑い続け、お姫様はその絵に対して嫌悪を示す事もなく、からりと口を開きました。
「どうやら、貴方が真実を映すという噂は本当のようね」
お姫様は肖像画とはかけ離れた容姿に、肖像画と同じような堂々たる態度でそこにいました。
お姫様は、お姫様とは思えない気安さで青年にその胸の内を語りました。
曰く、鏡くらい見た事があるわ、との事です。
あの、虚飾に虚飾を重ねた美しい絵姿は、どうやらお姫様にとっても不本意なもののようでした。しかし、どんなに高名な画家に頼んでも、王族への畏敬からその絵は華美に装飾されたものとなりました。あまりに美化された肖像画をお姫様が敬遠すれば、あの程度ではお気に召されなかったのだ、と肖像画の美化は悪化の一途を辿ります。
それに辟易していたお姫様にとって、真実を映す青年の絵は、非常に望む所だったのです。
「大体ね、よく考えてもみて頂戴。過度に美化された絵姿なんて、虚しくなるだけよ。そりゃあ、お姉様達のようにお母様達に似て美しくなりたかった、と思わない訳ではないけれど、私は私だものね。受け入れるしかないわ」
お姫様は晴れやかな顔で口にしました。その表情には卑屈な感情も、強がりも見えません。実際に、青年の描く真実の絵にも、悲しみや思い悩む様子はなく、肩の力を抜いたような気安い笑顔が描かれていました。
お姫様は、変わったお姫様でした。あまりに現実とかけ離れた市井のイメージを正したい、と青年に引き続き肖像画の依頼をする所までは分かります。青年も、金払いが良く、王族からの以来となれば箔が付くので、望む所です。
ただ、お姫様はそれだけでなく、青年の仕事道具にまで興味を持ち、暇だから自身を描く青年の絵を描くと不定形の怪物をしたため、妙に楽しそうに青年の私生活にまで関心を示したのです。
「ねえ、貴方。幼い頃はどんなだった?やっぱり、その頃から絵を描いていたの?」
「当時は貧しくてそんな余裕も無い。精々、地面に描いた絵を妹に見せてやる程度だった」
「あら、妹がいるの?私にはお兄様やお姉様しかいないから、何だか羨ましいわ」
不遜で、不敬な青年の態度にも不満を抱く事はなく、お姫様はただ好奇心に彩られた瞳を青年に向けるのでした。
あるとき、青年は王宮内にある草原の中に身を沈めて昼寝をしていました。広大な王宮内には、どういう意図なのかこのように特別手入れもされていない草原があり、人気のないそこは、慣れない場所で息の詰まる思いをしている青年の休憩所となっていました。
どうせだから全て描き直して頂戴、と膨大な量を依頼された為に、青年にも疲労が溜まっています。予定外に、長く王宮に滞在する事となってしまいました。
そんな青年が、人の気配を感じて目を開ければ、そこにはお姫様が供も付けずに座り込み、青年がいつも持ち歩いている、描き溜めた絵を纏めた紙束をめくっていました。
供の目を掻い潜り抜け出してきてしまった、とお姫様は悪戯っぽく笑います。
「女の子の絵ね。もしかして妹さん?」
「…………そうだ」
「まだ小さいのね。すごく可愛らしいわ。そうだ、ここに連れて来てしまいなさいよ。貴方の妹なら歓迎するわ」
軽やかに口にされたお姫様の言葉に青年は口ごもりましたが、すぐに素っ気無く答えを返します。
「無理だ。もういない」
「え?」
「妹はとっくに死んだ」
それは、青年がまだ、真実など知らない愚かな少年だった頃の話。
幼い兄妹は貧しさと飢えに耐え、頼れる者など誰一人としていない世界で身を寄せ合って生きていました。そんな中、妹が病に臥せり、兄は何とか妹を救う為に奔走しました。そして、ようやく憐れな兄妹を救う為の手が差し伸べられたと、兄がその手をとったとき、兄妹は食いつなぐ為のわずかな金銭さえ巻き上げられてしまったのです。
疑う事を知らなかった幼い兄は、満足に妹に食事を与える事も出来なくなり、そうして妹は死にました。以来、兄は己を騙そうとする人間の真実が、その目に見えるようになったそうです。
「だからこれは、呪いだ。愚かな自分への呪いで、愚かな兄への妹の怨嗟が、俺に真実を教えてくれるんだ」
青年は、とっくに全て受け入れたような、平然とした顔でお姫様に教えました。特に隠す事でもありません。それはただの『真実』なのですから。
しかし、お姫様は何故だか不思議そうに首を傾げます。特別同情を見せる事も無く、特別悲観する事も無く、ただ不可思議そうに。
「どうかしら?私は貴方の妹さんにはお会いした事がないけれど、でも、だって。貴方の描いた妹さん、とっても幸せそうだもの。貴方に向けたものでしょうね。この笑顔も、貴方への信頼に満ちていて、こんなにも輝いているじゃない。一体どこに、怨嗟があるの?」
それに、何も知らないくせに、と否定する事は簡単でした。適当な事を言うな、と罵倒する事は簡単でした。それが出来なかったのは、確かに自覚があったからです。
何を描いても、例え心の中にある情景を描いても真実を映す青年の描く妹の姿は、今も大好きだと言っていてくれたあの頃のままなのです。死の間際、『大好き』と呟いた妹は、自分を慕う妹のままでした。
ただ、それを真実だと受け入れてしまうのは、あまりに自身に都合が良過ぎて、未だ自分自身を許せない青年にとって、許されてしまう事は何よりも恐ろしかったのです。
「あなたの罪悪感で妹さんを歪めてしまってはいけないわ。貴方の妹さんは憎しみに歪められる事も無く、今もこんなに愛らしく笑っているんだから」
晴れやかな笑顔のまま伸ばされるお姫様の手を振り払う事も出来ず、青年は俯いたまま、脳裏に息づく妹へ、ありがとう、とただ一言の感謝を贈ったのでした。
お姫様は年頃の娘らしい恥じらいも無く、猫のように気紛れに青年へ関心を寄せました。
お金にがめついばかりで、他人に興味も示さなかった青年は、不思議とお姫様を邪険にする事はありませんでした。理由は簡単です。お姫様には嘘も、隠された真実も見えないからです。
お姫様は咎める侍女の言葉にも耳を貸さず、ただその心のままに青年へ好奇心を向けました。青年はそれに淡々と返しながらも、次第に笑顔を見せるようにもなりました。
どんな警戒も必要ないお姫様の前では、偽りを恐れて虚勢を張る必要もありません。
いつしか、青年の方もお姫様へ関心を向けるようになっていきます。
そして、真実を映す青年の描くお姫様の周りには、季節の花が彩るようになりました。
そんなときでした。お姫様の、嫁ぎ先が決まったのは。
お相手は自国の侯爵様でした。この侯爵様は国王様とどうにも意見が合わず、長く一触即発の関係が続き、反乱も危惧されていたのですが、この度その態度が軟化し、和合の証としてお姫様が降嫁する事となったのです。
だから、お姫様は青年にお別れを告げました。嫁ぎ先が決まった以上、いくら画家とはいえ、年頃の男と共に過ごす訳にはいきません。お姫様は、これまでの報酬を渡し、青年に立ち去るように願いました。
それに青年は、眉を顰めてお姫様を睨みます。
「あんた、知っていただろう」
お姫様は、無言で答えません。
「あんた、俺の気持ちも、自分の気持ちも、知っていただろう」
お姫様はやはり、無言を貫きました。それは、初めてお姫様が真実を隠した瞬間でした。
青年は唇を噛みしめ、諦め、王宮を後にしました。
それが、真実を映すと謳われた所で、所詮はただの画家でしかない青年の、結果でした。
しばらく、青年は報酬として受け取ったお金で自堕落に過ごしていました。所詮、お姫様と過ごした時間は、夢幻でしかなかったのです。世間を知らぬお姫様の最後の火遊びに付き合わされただけなのです。
嘘が無かったからと、ほんの少しだけでも心を掛けた自身が、愚かだったのです。
しばらくして、お姫様のご結婚が市井にまで知れ渡り、国民への婚約のお披露目が行われました。婚約者である侯爵様と寄り添い、国民に手を振るのです。市井にはすっかりお姫様の真実の肖像画が浸透していましたが、それはそれで愛嬌があって良い、と評判になり、国民はこぞってお姫様の幸福を祝福しました。
画家はこれが最後、と思いそのお披露目を見学しに行く事にしました。確かに、自身は愚かでした。けれど、お姫様の嘘の無さも、真実も、本物です。だからこそ、せめて幸せになれば良い、とどこか傲慢に願っていました。
それなのに、青年は、幸せそうに寄り添う二人を見て、叫び出してしまいそうになりました。人垣を押しのけ、二人に迫り、引き離してしまいたくなりました。真実を映す青年の目には、恐ろしいものが映っていたのです。
青年は理解しました。あの侯爵様と結婚し、お姫様がけして幸福にはなれないのだという事を。
その日から、青年は部屋に籠り、絵を描き続けました。
その間に季節は巡り、お姫様の結婚式の日が訪れたのです。
けして美しいとは言えないお姫様でしたが、真っ白なドレスに身を包むその日ばかりは、眩い光に包まれているように、輝いておりました。しかし、お姫様の空気がどこか明るくはないのは、結婚前で不安を感じているからなのでしょうか?
純白のドレスに身を包んだお姫様は、同じような意匠の侯爵様と並び、神様への誓いの前に国民の前に姿を現しました。お城のバルコニーから顔を出し、微笑みながら国民に向かって手を振ります。国民は皆、お姫様は幸せになるのだと、信じて疑ってはいませんでした。
そんなとき、その幸せな空気を切り裂いたのは、真実を映す画家の青年でした。
「この結婚は不幸になる!」
青年はその言葉と共に、大量のビラをばら撒きます。そのビラには侯爵様の真実が描かれていました。
その真実は、実は侯爵様には国王様との和合の意思などこれっぽっちも無い、というものでした。侯爵様は一時的に友好のフリをする事で国王様を油断させ、お姫様との婚姻で人質を手に入れ、いずれお姫様を旗印にしての王位簒奪を目論んでいたのです。
侯爵様は怒鳴り散らして青年を捕らえるように命じました。そんなものは、身の程を弁えない愚か者の嫌がらせでしかない、と訴えました。けれど、お城の兵士たちは皆戸惑って中々動こうとはしません。青年が王宮に出入りしていた事を知っている兵士たちは、青年の描く絵が本物であることを知っていたからです。
それでも命令ならば、と何とか動けた兵士により、青年はあっさりと捕らえられてしまいました。
その姿を見て溜飲が下がり、すこしばかり冷静さを取り戻した侯爵様は、落ち着き払った様子でバルコニーから見下ろして、青年を窘めようとします。青年はそれを、鼻で笑いました。
「すでに国王陛下にもこの絵は送り届けた。世話になった画家が感謝を込めてお姫様の婚姻を祝いたい、と告げればあっさりと受け取ってくれたよ」
「そうか、貴方が例の画家ですか」
侯爵様は、努めて落ち着き払った様子でその言葉を受け止めました。
「姫君に大層贔屓にされていたようですね。彼女は一国の姫君であり、そんな事には何の意味も無かったでしょうに、貴方は身の程も弁えずに勘違いをされた訳だ」
そんなんじゃないさ、と青年は侯爵様の言葉を否定します。兵士に捕らえられ、地面に押さえつけながらも、不思議とよく透る声で青年の真実を口にしました。
「叶わない事も、釣り合わない事も分かっていたさ。真実を映すと言えば聞こえは良いが、所詮俺は、薄汚い画家でしかない。それでも、不幸になるのを黙って見過ごせるはずがないだろう」
何とか地面の上で首を捻り、頬が傷付くのも構わずバルコニーの上を見上げました。ぼんやりとした視界の中、揺らぎなく立つお姫様を見付けます。お姫様は素朴な容姿をしていましたが、その立ち姿はいつも揺らぎなく、王族らしい堂々としたものでした。
「好きな女の幸せを願って、何が悪い」
例え、その為にこの身が滅ぼされたとしても、青年にとっては本望でしょう。何故ならそれが、青年の真実なのですから。
馬鹿馬鹿しい、と口にしかけた侯爵様の言葉を遮ったのは、お姫様の笑い声でした。それはいつも国民に向けていたような楚々とした微笑みではなく、青年に向けていたような、包み隠す事など何もない、明るい笑顔でした。
「まさか貴方が、そんな事を言うなんて!」
お姫様は、心の底から楽しそうに笑い声を上げました。そして、一頻り笑い終えたあと、侯爵様に毅然と向き直りました。
「このままでは民の混乱は必至。あの者の言葉の真偽を確かめる必要があります。何、すぐに誤解は解けるでしょう。貴方が真に潔白であるならば」
お姫様は青褪める侯爵様に告げました。青年の目には、お姫様に掛かっていた不幸の霧が、晴れたように見えたのでした。
その後、真偽が明らかになるまで、と牢屋に入れられた青年ですが、自身の行動が無駄ではなかったのだと、理解しました。
牢屋での待遇が、日に日に良くなっていくのです。
ちなみに、何がどう伝わり、どう解釈されているのか、見張りの兵士は青年に対し非常に友好的で、もうすぐだ、楽しみだな、などと何かに付けては励ましの言葉を口にしました。
そんな生活が続き、ひと月ばかり経った頃、ようやく青年の絵の真実が認められたのか、青年は釈放される事となりました。
釈放に訪れた文官は、いやに腰が低く、平身低頭といった様子で青年に丁寧な謝罪を送り、せめてものお詫びに、と王宮の風呂を貸してくれると言い、着替えまで用意してくれるとの事です。ひと月もの間、風呂どころか着替えも出来ていなかった青年には有難く、遠慮なくその好意を受け取りました。
そして、何故か沐浴の手伝いを、と言って風呂にまで付いて来ようとする下男を何とか追い返して風呂を満喫し、用意された意匠に身を包んだ所でようやく疑問を覚えました。
用意された衣服が、青年のような庶民には似合わない上に、すぐに汚れてしまうからと明らかに敬遠される、真っ白なものだったからです。
首を傾げる青年の下へ、まともに顔を合わせるのは随分と久しぶりになるお姫様が現われました。お姫様は、何故か全身を覆い隠してしまうほどのローブを着ています。
「あら、良いじゃない。久しぶりにゆっくり話したいし、そうね。絵も描いて欲しいわ。さあ、こっちに来て」
まるでひと月前の騒動など何も無かったかのような顔で、お姫様は青年の手を引いて歩きだしました。以前は親しくする様子に眉を顰めていたお姫様の侍女達も、晴れやかな顔で見送ります。
青年は混乱している内にお姫様に強引に手を引かれ、光を受けて真っ白に輝くバルコニーへと連れだされました。
その瞬間の、喝采。
怒号のような喜びの声が、バルコニーの下から届いたのです。驚いた青年が慌てて下を覗き込めば、そこにはひと月前のように国民が集まっていました。
「こんなに祝福されて、私達は幸せ者ね」
あっけらかんと言い放ったお姫様はいつの間にか着込んでいたローブを脱ぎ去り、その姿は純白のドレスへと変わっておりました。
そこに至ってようやく青年は気付いたのです。現在、自身が身を包んでいるこの意匠は、お姫様のドレスと対になっているのだと。
「元々貴方の絵に関して城下では有名であったし、国民からはすぐに例の侯爵への不信の声が上がったわ。で、実際あの侯爵は真っ黒で捕まったんだけど、今度は騙されていた姫君を命がけで救った英雄として、貴方を望む声が大きくなり、とても抑えられなくなってしまったの」
お姫様は悪戯っぽい笑顔で楽しそうに語らいました。青年に躊躇う事なく身を寄せて、その瞳を覗き込みます。
「私達の事が脚色されて、今一番人気の恋物語になっているんですって。それで、このままではどこに嫁いでも国民の反発を避けられない私は、お父様曰く、仕方なく貴方に嫁ぐ事を許されたそうよ」
「だからって、こんな勝手な事があるか」
青年は呆然としたまま、それでもせめて、と言わんばかりに何とか不平の言葉を口にしました。あまりの事に、怒りよりも何よりも混乱が先立ちます。
「あら、貴方が言ったのよ。知っていただろう、って。知っていたから、その通りに行動したの」
お姫様は背伸びをして、身を乗り出し、青年の唇に口付けました。やはり、悪戯っぽい笑顔のお姫様に、青年は反論を断念したのです。
真実を映す青年の瞳には、花が咲き誇るような笑顔の、幸福な花嫁が映っていたのですから。
こうしてある国では、大人から子どもまで、誰からも愛される恋物語が生まれました。
真実を映す一途な画家と、美しい心を持つお姫様の物語。
モデルとなったお姫様は声を上げて笑い、モデルとなった画家は思わず本を放り投げたそうです。
それは、真実の愛に彩られた、幸福の物語。
読んでいただき、ありがとうございます。
何だか、当初とラストでは少し、テンションが変わってしまったような気も…お姫様が暴走を始めたのです。あの人、他に類を見ないアグレッシブな人でした…私の脳内で。勝手に動くのです。
違和感を感じたら書きなおすかもです。
目指せ童話風、という事で簡潔を目指しましたが、途中で断念しました。簡潔で収まる内容ではありませんでした。ので、ジャンルは恋愛に。
珍しく真っ当な恋愛してますしね!
青年:金にがめつい。金は裏切らない。何だかんだ強がってはいるが、押しに弱いと思われる。他国出身。誰かを陥れようとする人間からの依頼で、陥れたい人物の弱点となる真実の姿を描き出し、大金を手にしていた。ケチ。今思うとこのキャラで童話目指すのは無謀。傲慢な人間を見ると叩き落としたくて仕方がない。偏屈。
お姫様:地味。中身は大胆。兄姉を羨ましく思わない訳ではないが、現実を受け入れている。良く笑い、よく食べ、よく寝る。本能のままに生きる。楽観的。超ポジティブ。アクティブ。類を見ないおてんば姫。美人ではないが愛嬌がある。
二人の恋物語。
脚色に脚色を重ねたもの。お姫様の儚さアップ、画家の情熱度アップ。とりあえず現実はそんなに劇的じゃない、と突っ込みたくなる仕様。