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あの人間の話

 おもちゃが倒れた。辺りがどよめいた。当然だ。急に人が倒れて機械音だし・・・って、

「神っっっっ!!言ってるじゃぁないですか!ゼンマイは毎日巻くように、と!」

「・・・やばいな。・・・よし。ここは流れに乗るぞ。」

ん?神がいきなり立ち上がった。そして・・・

「お?なんだ?あれ人が倒れてんぞ。おい、どうしたんだよ、ちょっとそこのお兄サーン!!」

野次馬になりきりやがった!!『そこのお兄さん』は・・・良かった、聞いていない。

あれ?周りの人間が崩れていく・・・

「はーい!生徒会でーす!生徒会室に運び込むので、どなたか手伝ってくださーい!」

1人の人間が『人間堤防』を力ずくで壊して、おもちゃのそばに担架を置いた。

「おお、好都合じゃないか。ここは便乗作戦だ。おい、私とこいつが手伝う!」

・・・ええい、どうにでもなれぇ!


 人間と化したおもちゃは、人間のように担架で運ばれ、人間のように応急処置をされた。応急処置といっても、氷の入った袋をおでこにのせ、霧吹きで顔に水をかける(おもちゃ壊れるッ)という非常に簡単すぎるものである。

「・・・・・・・・。」

ぜんっぜん喋らない。と思ったら、いきなり振り返って、

「あの・・・もしかして、さっきの観光客の方じゃないですか?」

・・・あっ!さっきの(くわしくは第2話『人間界到着!』をcheck)押し付けがましい小娘!

「あら、奇遇ですわね。き、気になって来てみたんですよ。あの、その子は友達でして、少しばかり身体が弱いんです。もういいので・・・ひきとりますね。」

「えっ、でも・・・」

いらいらいらいらいらいら・・・いいと言っているんだ!なぜそう世話を焼きたがる?

「お二人さん。おもちゃはなァ、ゼンマイ巻くだけでいいんだよ。」

なんと、神が唐突におもちゃの背中のゼンマイを巻き始めた!いきなりにも程が・・・止めようと思った。・・・遅かった。(神は行動がはやい。)

1巻き、2巻き・・・10巻きしたところで、おもちゃの瞳が大きく開かれ、意味深な文字式がめまぐるしく表示される。

《アンドロイドO・M再起動します ぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ・・・》

カタン、カタン。

「おもちゃ、復活ぅ!もう、神ちゃん、ゼンマイ巻いてってばぁ〜」

「おお、おもちゃ!会いたかったぞ!すまなかったな、ははは。」

ちょ、ちょっと・・・

「あの、その、えっと・・・」

そりゃそうだよな。いきなり人間の背中にゼンマイが現れて、巻いて、《再起動します》だもんな。

「ちょっと・・・神?あの人間の記憶消して下さいよ。」

「はぁ?そんな力残ってないし?お前の変身がへた過ぎて、力尽きたわぁ~。」

・・・神にはいつも、『言い訳の女神』が微笑む。女神様、休暇をとってもいいんですよ?

「すっすごい、ですね。その、ロ、ロボット?いいお友達、ですね・・・。」

「あ、ありがとう。ちょっと、父が発明好きでね。」

私は精一杯のごまかしをした・・・が。私に『ごまかしの女神』は微笑んでくれなかったのだ。

「Aちゃん、もう正体明かしちゃおうよ〜。おもちゃ、ロボット呼ばわりされるのやだ〜」

「そうだ、世話役A。もうしょうがない。この人間も優しそうだし、他に漏らさないだろう。」

そ、そーだよね!いいよね、この人間くらい。先輩、許してください。

「よし、じゃあここは・・・おもちゃ、お願い。」

「あ、分かった。」

こういう時におもちゃは役に立つのだ。説明がめんどくさい時はね。おもちゃの目が光って、前に映写されるのだ。実に楽だ。

《ぴろろろん♪今から、天界講座を上映いたします。携帯の電源をお切りください。盗撮は天界法により、罰せられます。ご了承ください。また、喫煙は館内の奥にあります、喫煙ルームにて・・・》

館内て・・・おもちゃ、天界の映画館からパクって来てるな?人間、律儀に携帯の電源を切る。


上映終了。約2時間、私と神は1分ごとにあくびをしていた。

「よく分かりました。あなた達は、天界・・・の神室の人たちで、旅行でここに来た。ということですね?」

「そうゆうこと。いい?誰にも話しちゃだめですよ。」

すると、人間は携帯を取り出し・・・1・1・0・・・おいっ!通報すんなっ!

「おいおい。俺たちのど、こ、が、不審者だ?」

「変なこと言わないでください!ちょ、ちょっと、あっち行ってください!」

はぁ。到底信じてもらえないだろう。人間は疑り深い生き物だ・・・。

「神ちゃん、ここは一旦、退散したほうがいいよぉ。警察なんてやだ。」

「そうだな、おもちゃ。かわいいおもちゃを研究所でバラバラにされたくないからな。」

おもちゃの顔が、一瞬引きつった。神、言い過ぎだ。

うん。退散退散。


「神、もう帰りましょう、天界に。人間界の空気は濁ってますし。」

「おもちゃも・・・バラバラやだぁ。」

私たちは、——黄色と黒の縄が張ってあったが、気にしない。あんなの容易に通れるのに。——学園の隅っこの、長い耳がついたフワフワがたくさんいる所の前で話し合い。神は一瞬考えたあと、

「いいや、あの人間の誤解を晴らすべく、学園に入学だ!!」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

これは長い旅行、いや、長い仕事放棄になりそうだ。

「世話役Aの苦労物語」第4話「あの人間の話」をお読みいただきありがとう。今回の後書き担当は、神だ。世話役Aから『誕生話を。』と念を押されているので…言い出したのは、私。神だ。今のこの楽しい日々を、小説という形で記録したかったから。以上。

…これ、世話役Aから苦情が来そうだな…。

                  by神

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