人間の日常
そう、あの時からオレの運命は変わったのだ。
「人間!!」
そう私を呼ぶものはきっとこの世で3人しかいない。学園祭で出会った奇妙な3人組、『神宮はるみ・世話野みかん・王元ゆい』だ。
「・・・なんだよ。」
こんなあだ名を付けられて不機嫌でいられないわけが無い。半ギレで答えると、
「生徒会長様に向かってなんだとはなんだ!?」
「苛々の原因はカルシウム不足ですよ。」
「かる・・・なんとかって何?」
「だから、なんでついてくるんだよ!?」
そう、ここは登校中の通学路。つい大声で言うと3人組は少し驚いた様子だが、
「ふっ、そんなの決まってるだろ。君が我々の秘密を知っているからだよ。」
とはるみが当然のように言った。
「まぁ、こちらから一方的に見せたのですがね・・・。」
みかんは一応フォローをしたが
「でも、りさにんはダーツの旅の第一村人みたいなもんだからさぁ。」
ゆいが分かりづらいたとえで理由を述べた。
「てかなんだよそのあだ名!?オレのキャラじゃねーよ・・・。」
ちなみに『オレ』と言っているが名前は孫田理紗、正真正銘女だ。
黒髪をショートにしていて背が高いのが特徴。あの3人組とちがってフリフリとかそういう物が似合わない人種だ。こいつらと出会ってからもう数カ月たつが、いつまでたっても付きまとってくる。友達がいないわけではなさそうだが。
「・・・いったいなにが目的なんだ?」
なにやら話し込んでいる三人を横目で見ながら小さく呟いた。
学校が終わってもやはりついてきた。
「生徒会長さーん!!今日は生徒会活動はないんですか?」
そう言いながら後ろを振り返ると、案の定偶然通りかかったという雰囲気を作り出そうとコソコソしていたはるみたちがいた。
「そ、そうだぞ・・・。今日はないよな?」
「ええ、今日はありませんよ。せっかくなので一緒に帰りましょうか理紗さん。」
みかんのハキハキした受け答えとキラキラの笑顔に圧巻されつい、
「うん・・・・。」
と頷いてしまった。
「『りさにん』ってのはね・・・。」
帰り道、ゆいが唐突に力説し始めた。
「孫田理沙の『りさ』でしょ、で人間の『にん』なんだよ!!」
「あ~はいはいそうですね。」
オレのテキトーな返事にゆいは頬を膨らませた。
「ところで人間、おまえの望みはなんだ?」
はるみが目を爛々と輝かせて聞いてきた。
「は?突然なんだよ。」
「だからな、おまえのの・ぞ・みだよ。」
「望みって・・・。なんでだよ。」
そう聞くとうっと言葉を詰まらせながらも
「たっ、たまには神らしいことでも言ってみようかな~なんて・・・。」
「なんなんだか・・・。」
朝、いつもより結構早く学校に着いた。いつも遅刻ギリギリに来る三人はやはり来ていないようだった。教科書やらノートを準備していると、
「りさ~!!」
と大きな声がした。顔をあげると一年の時一緒のクラスだった友逹のサヤが廊下から手を振っていた。
「一時間目社会でさ、資料集貸してくんない?」
「あぁ?いいよ。」
直しかけていたカバンから資料集を探り出した。
「てゆーかさぁぶっちゃけ、りさも大変だよね~。」
「は?」
探していた手を止めて聞いた。
「だから、転校生の三人のことだよ~。なんか付きまとわれてるんでしょう??」
「まぁ、そうだけどさ。」
教室や廊下にまだ人がいない時間帯だからだろうか。サヤはもともと大きい声なのも気にせずしゃべっている。
「転校初日から狙われてたっていううわさあるけどほんとうなの~??」
「うん・・・。そんな感じ。」
でも、本当はあいつらは天から来た人でそれを知っているのはオレだけなんだ。
そう言いたくなったが、言っても信じてもらえないだろうと思った。
「どういう経緯で仲良くなったの?」
「オレは関係ないんだよ!!あいつらのことなんかっ。」
つい、言ってしまった自分の言葉が大きくて驚いた。
「・・・・あ、うん。ゴメン、じゃあね。」
そう言うなりサヤはビューと行ってしまった。予想外な行動に少し疑問を持っていると、理由がやって来た。
「・・・・。」
「はるみ・・・!!」
サヤと入れ替わるように教室に入って来たのははるみだった。
はるみはオレの顔をジロリと見ると吐き出すように言った
「わかってたんだけどなぁー。でも、実際に聞くと応えるねぇ・・・?」
そう言うはるみの表情はとても悲しげだった。弁解しようするが言葉が出てこなかった。
「今まで迷惑かけててゴメンな。孫田さん。」
その後、はるみと一言も話さずに学校が終わった。
いつもの帰り道を一人でとぼとぼと歩きながら今日の事を振り返っていた。
あの時、はるみに理由を説明していたら、サヤの話を早く切り上げていたら、こんな風にならなかっただろうに。でも、もうどうすることもできない。
なら、これでいいのだ。あいつらが来る前に戻っただけなのだ。
そう思うと頭のモヤモヤは少なくなったが、心がチクリと傷んだ。
そんなことを考えていると不意にドンと何かにぶつかった。
「す、すいま・・・」
顔を上げた先にいたのは
「あぁ!?」
ぶつかった相手は学校中に悪名をとどろかせている3年生たちだった。
「す、すいません・・・・。」
慌てて立ち去ろうとしたが
「おいおい、ぶつかっておいてお礼だけかよ~」
と言いながら囲まれてしまった。
「慰謝料として3万ぐらいちょうだいよ~」
この状況をどう突破したらいいか思考を働かせていると
「そこの若者お待ちなさい!!!」
どこからともなく声が降って来た。
「とうっ!!!!」
ジャジャジャジャーンという効果音がつきそうな登場をしてきたのは
「・・・・・。」
上学の制服を着ているが顔に戦隊ものの仮面をつけている3人組だった。
それだけでも十分変な人なのだが
「じょ、女子・・・?」
こちらの疑問もものともせず、
「上学のピンチに我らが行く!!」
「「我らが天界戦隊お助けレンジャー!!!!」」ビシッ
「・・・・は?」
こちら側はただただ目を丸くしているばかりだった。
「というわけでおも・・、イエローおやりなさい。」
真ん中の赤い仮面が右側の黄色の仮面に偉そうに言うと
ガチャという音を立てて右手首が取れた。
そこから出てきたのは嫌に黒光りのする細長い金属の筒。
「喰らえぇ~!!鳩もビックリ豆マシンガン!!!!」
イエローはカワイイ声とは裏腹にかなり恐ろしげな言葉を発した。
ドドドドドドドッとリズミカルな発砲音に合わせて大豆が飛んできた。
「うわー!?」
人の腕から豆鉄砲を喰らわされるという予想外の出来事にヤンキーたちは我先にと逃げ出してしまった。
残ったのはオレと仮面衆だけになった。
「では、さらばだ。」
と言いそくささと逃げようとしたレッドの服を反射的につかんだ。
「おい、待てよ。」
そういうと焦ってバタバタと暴れだした。
「な、なんだ?わ、我らはただの通りすがりのヒーローだぞ!?」
「んなことどうでもいい。なんでだ?」
「は?」
「だから・・・。」
つい服をきつく握りしめた。
「なんで、オレを助けたんだ。はるみ。」
「・・・フッ。ばれちゃったか。」
肩をすくめながらわざとらしく言った。
「そりゃ、私が正義のヒーローだからだよ。」
「本当はなんだ?」
厳しい目で睨むとはるみは視線を下に向けて絞り出すように言った。
「だって、人間は。やっぱり大切な・・。」
「友逹だろ・・・。」
驚いた。ただプライドの高い偉そうな変な奴だとばかり思っていた。
「はるみっ!!今朝はごめ・・」
バンッと隣で破裂音が聞こえた。思わず目をつぶり、もう一度目を開けると目の前にはきらびやかな紙吹雪が舞っていた。
「・・・・・・。」
驚きのあまり言葉を失った。
そして、おそらく爆発源であろうイエロー(ゆい)の腕の筒から紙が垂れ下がっていた。
『ゴメンね。人間 >< byせーとかいちょう』
「神は素直じゃないんですよ。」
隣でグリーン(みかん)が微笑ましそうに笑って言った。
こいつらと出会ったことでオレの運命は変わった。
でも、これがオレの日常。
どもっ~。
人間こと孫田ですけど、番外編でこんな長々となってしまいすんません。
まぁ、オレとはるみのただのケンカ話なんだけど、全然活躍できてなかったオレがメイン!!読んでいただきありがとうございますっ!