おもちゃすねる
神ちゃんが生徒会長に立候補した日のこと。
「神!!なりたいって言って私に押し付けてるじゃないですか!!!」
「知るかそんなの。」
さっきから神ちゃんとAちゃんが言い合っている。どうも演説原稿の押し付け合いをしているようだ。
「・・・・。」
二人ともにらみ合うとAちゃんの方が折れた。
「分かりましたよ・・・・。」
うなだれるAちゃんをよそに大いばりの神ちゃん。
「あ、そうだ!世話役A、お前は副会長になれ。」
「えぇー!!そんなの嫌で・・」
『嫌です』と言い終わる前に考えるAちゃん。
「・・・分かりました。私がなって見せます。」
「じゃあ、私の分の原稿もサクサクっと頑張れよ!」
そう言うと原稿用紙を投げ渡し、神専用ルームにそくささと行ってしまった。
神ちゃんのいなくなったリビングで、ばらまかれた原稿用紙を集めるとAちゃんは深くため息をつきクルリとこちらを見た。
「今日の夕飯はあり合わせを食べておいてください・・・。」
暗い声で言うとAちゃんはリビングを出て行った。
神ちゃんがごーいんなのはいつもどおりで、Aちゃんが副会長になると言い出したのもなにかきっと裏があるはず。
だけど今回ばかりはなんだかおもしろくない。
さっきだって1回もしゃべってないし、きっと神ちゃんの力で二人とも会長にだって副会長にだってなんにでもなれる。
むぅー。おもしろくないなぁ・・・・。
そんなことを考えていたらおなかが鳴ってしまった。高性能アンドロイドはおなかも鳴るのだ。
神ちゃんはグルメだ。だから必然的にAちゃんは料理がうまい。なんだかんだいってなんでもできちゃうのだ。だけどおもちゃはどうも下手だ。卵が破れてしまったオムライスをつつきながらAちゃんならトロふわに作るんだろうなと考えてしまう。
朝になっても二人の言い合いは続いていた。まるでおもちゃは空気のようだ。
これじゃあおもちゃのいる意味なんかないよ・・・。
「神ちゃんとAちゃんのバカァァー!!!!」
そう言って家を飛び出した。
つい家を出てしまったけど、行くあてもなかった。
ふらふら歩いていて見つけた公園のブランコでゆらゆらゆられていた。
人間の子供たちが来たり、帰ったりを繰り返す様子をずっと眺めていた。
どれくらい時間がたったのだろう。
空は夕闇に染まり、子供たちもいつの間にか一人もいなくなっていた。
家に帰らなきゃ・・・。そう思ったけど、道がわからなかった。
カラスが鈍く鳴きながら空を横切った。
木々が風に揺れてざわめいた。
それらの音が自分が一人だけなんだと知らしめた。
いつもは神ちゃんとAちゃんのあとにくっついていたから道に迷うこともなかった。
不安な気持ちに浸っていると遠くから足音が近づいて来るのがわかった。
カチリと小さな音を立てて『攻撃もーど』にチェンジした。
しだいに足音が大きくなってくる。
もうこの手しかない・・・。
「く、くらえぇ~!!」
特製の六連射銃を構えなおしたその時、
「おもちゃぁーーーーー!!!」
そこに現れたのは、
「神ちゃん・・・。Aちゃん・・・。」
二人とも走って来たのか肩で息をしている。
「このばかー!!」
う・・・。神ちゃんの後ろに雷が。
「ご、ごめんなさーい。」
「まったく。おもちゃは・・・。」
「探したんですから!心配かけないでください!」
Aちゃんが涙目になって叫んだ。
「ほら。これ。」
「え・・・。これなんて読むの?」
「そういう機能は無いのか?」
「無い・・・。」
「『申込書』。生徒会の立候補だ。したかったんだろ?」
『申込書』・・・。生徒会の・・・。てことは!
「立候補!していいの?!」
「ああ。」
「はい。・・そんなに喜びますか。」
やった・・・!生徒会のおしごとできるんだ!
「まっ、あとは世話役Aよろしくなっ。」
「また私ですかっ!?もう・・・。結局私が苦労するんですかぁ?!」
Aちゃんの叫びは、夕方の公園に虚しく響いた。
またおもちゃ視点で書いてみたよ。
これは選挙活動の行方より前の話なのです。
これから学校生活の話に入っていきまーす!!
byおもちゃ