選挙活動の行方(中)
《それでは、これより、上野学園の生徒会選挙の開票を行います。立候補者は前に出てきてください。》
ステージにぞろっと立候補者が出てきた。「はるみ様~」「ゆい様~」「みかん様~」の声が大きくなる。(出て来る前もずーっとうるさかったのだ。)そして、選挙管理委員が一人一人を紹介すると、大きな拍手が巻き起こる・・・私たちの時は指笛が鳴る・・・A〇Bかっ!!
《では、まずは1年執行委員の開票です。今年の立候補人数は・・・》
1年の執行委員の開票は嵐のようだった。獲得票数が一番多かった女が高飛車発言をぶっ放したのだ。
「執行部員になれなかった愚民の皆様の分も精一杯頑張りますわ。」
いや、あれはみんな唖然としていた。「開いた口がふさがらない」のそのままといった感じ。
2年執行委員。これは何事もなく終わった。(そうそう、なんとあの人間が執行委員になっていた。一緒になったりして・・・)
続いて、書記長の開票。これの定員は1人で、おもちゃが立候補して(させられて)いる。
《今年の立候補者数は、なんと1人です!》
「ええッ!」体育館がざわめく。
「ねえ、最初、あと一人いたわよね?」
私は、横にいた1年執行委員に聞いてみた
「えッ!?ああ、その方は、王元先輩を恐れて辞退したらしいんです。」
ふ〜ん。おもちゃってそんなにすごい?・・・というか、なぜこの1年はこんなに怯えているんだ!?
《よって、上学の新書記長は、2年A組の王元ゆいさんに決まりました。では、王元さん、意気込みをどうぞ。》
おもちゃは「やった〜!」とはしゃぐ。
「ゆいちゃん最高ーっ!」「ゆいちゃんが一番だぁーっ!!」「ゆいちゃんコール!!」「ゆ・い・ちゃ・ん!」「ゆ・い・ちゃ・ん!」
もはや体育館の中は嵐の、いや、ハリケーンのようだった。さっきの高飛車騒動は序の口だったみたいだ。
「えっと、書記長になった、2年A組の、おもち痛っ!?やめてよAちゃん・・・」
おもちゃ、私をにらむ。そろそろ自己紹介で「おもちゃ」って言うの、やめない?
「えっと、王元ゆいです!がんばるよ〜」
最後におもちゃはガッツポーズ。余裕かましてるなぁ。
「うおーーーーーっ!!」「ゆいちゃんかわいーっ!」「がんばれーっ!」
《静かにしてください。続いては、副生徒会長の開票です。》
いよいよ私の番だ。
《今年の立候補者数は、3人でした。まずは、2年A組の世話野みかんさん。》
うわぁ・・・。すごい歓声。後の2人に悪いなぁ。
《2年B組の逢沢那菜香さん。》
こいつ・・・なかなか手強いのだ。3回も学級委員を勤めているベテランリーダーである。
だが、拍手は私より小さかった。
《そして、2年D組の山川亮貴くんです。》
こいつは、テストで学年1位を独り占めしている超エリート。
拍手はさらに小さかった。
《では、発表します。上学の新副生徒会長は・・・》
ああ、もうこんなに「みかん様コール」があったら・・・確実だろう。
《2年A組、世話野みかんさんです!》
ああ、やっぱり。
「みかん様最高ーっ!」「みかん様が一番だぁーっ!!」「みかん様コール!」「み・か・ん!」「み・か・ん!」
お前らバリエーション少ないわっ!
《では、世話野さん、意気込みをどうぞ。》
まあ、なったからには・・・。学園征服しちゃおっかな?
「えー、上学の新しい副生徒会長になった、世話野みかんです。今か」
「みかん様ーーーーっ!!」「ガンバレーーー!」「み・か・ん」「み・か・ん」
プチッ。鬱陶しいぞ、お前ら!
「お黙りなさい、バカども!今はこの私、世話野みかんが話しているのです!」
私はスタンドマイクをつかんで、叫んだ。体育館の壁に「うわん」と音の波が跳ね返る。すごく、「しーん」。
「(軽く咳払い)今から、どんどん上学を征・・・引っ張っていきますので、よろしくお願いいたします。」
「わーーーーーーーーっ!!!」
またすごい歓声。頭痛くなってきた。
《静かにしてください。では最後になりました。上学の新生徒会長の開票をします。今年の立候補者数は、2人でした。1人目は、2年A組の神宮はるみさん!》
「はるみ様ーーっ!!」「最高だぁーーっ!」「神ってるぞぉ!」
どういう意味だ。そのままだし。・・・というか、神はなぜこんなに無口なのだ?普通なら「ありがとう、人間よ!」ぐらい言うのだが。
《そして、2年C組の五色院羅蘭さんです!》
「羅蘭様ーーーっ!!」「輝いています!!」「麗しい!!」
今日までに、徹底的に調べ上げた。「五色院羅蘭」・・・。
もちろん、金持ち。「五色院の安心保険」という保険会社の創設者が、五色院羅蘭の祖父らしい。そして、去年私たちが行った上学の学園祭での「ミスコン」という学園の美人を競うイベントで、学年部門ではもちろん、学園全体部門でも優勝している。かなり美人なのだ。そのため、バカどももついてくるし、女どももついてくる。だが、そのついてきかたが少し病的で。何というか、「五色院グループ」というカルト教団みたいな感じ。いつも、「羅蘭様、お荷物をお持ちいたしましょうか」「羅蘭様、今日もお綺麗ですね」とか、五色院羅蘭を上へ上へと持ち上げる。まあ、要するにあいつのプライドはエベレスト並みに高い。いざ見ようと思っても、顔を見せてくれない。姫じゃあるまいし・・・。
「皆様、お静かになさって。今から、私が上野学園の生徒会長になる瞬間を見届けるのです。」
すごい。五色院はこういうのに慣れているようだ。・・・なんか・・・こいつ、どこかで見たことある。この栗色の長い髪。いかにも「金持ち」っていう顔。
「あっ!あの時の・・・。」
「なあ、世話役A。あいつ、どっかで見たことあるよな?ずーっと考えていたんだが、出てこないんだ。」
だからずっと無言だったのか。
「あいつ、私たちが転入してきた時に話しかけたら、変な顔された人ですよ!」
「ああっ!!そうか!どうりで・・・。さっき話しかけられたんだよ。『あなたが生徒会長候補だなんて・・・。頭が痛くなってきたわ』。って。これ、いいことだよな?!私がすごくて頭が痛いってことだよな?!」
「え、あ、はい。」
やっぱ最後までずれるんだね。
《では、開票です。うえがくの新生徒会長は・・・》
今回は、出番が少なかった神が後書きを担当する
特に何も伝えることがない。ため、これにてあとがきを終わる。
by神