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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
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先輩と後輩。伝えられない想い。

忘れられないその熱に蓋をした先輩。

作者: moco
掲載日:2026/10/11

びっっっくりした!!!

いや、そんなこと。

席が隣で、一緒に普段から仕事をして、パソコンを隣で見ながら話していれば、可能性の問題として起こり得ることだった。


だけど今は、あの子が愛しいと、誰よりも大切だと、気づいた後の、ことだから。。。

ただ、その触れただけの指先が温かくて、戸惑って、、その柔らかさに、私の胸が脈を打った。

そして、ひたすらに愛らしい女の子なのだと、実感した。

いや、自分自身だって、女であって、女性の指先なのに。

そうではないのだ。こう、愛しい子のその指先は、違うのだ。それは触れるだけで、ただただ甘い、甘い痺れとなって全身に走り抜けるのだ。

なんて、本人へと知られたら、気味悪がられると分かっていても、私にとってあの子の存在はとても大きくて。その触れ合いは特別で、あの子は心の真ん中に居場所を作ってしまっているのだ。

だから。

「っっ?!あ、ごめんなさい。当たったわね、、」

そう、声を掛けるだけで精一杯になってしまう。

「私の方こそ、すみません!集中しすぎて、先輩が近くにいるのに気づけなかったですね、、」

少し驚きしょんぼりしながら、あの子が私に返す。

それが、私と同じ謝罪であることが、理不尽にも腹が立ってしまった。。。

あの子にとって私(・)が触れるということが、謝罪すべき事案で、起きてはならないことなのだと、まざまざと伝えにきていると、感じてしまうから。

それは、どうしても私にとっては、耐えられない苦痛になった。

だけどそうだ。私が、近くにいて話をして、集中をして当たったのだ。

一般的にみても、パーソナルスペースまで近づき起こった事故は、恋人でもない赤の他人からすれば、双方本人にとっては、謝罪すべきものになるだろう。

それが私にとって、ただただ、癪に障るだけだ。

そう、なのだ。

先輩と後輩でしかない関係で、私が不服となることではないのだ。


‘恋人ではない’


それが、心に強くのし掛かる、フレーズである。

私の好きになって良い人ではない、関係。

単なる先輩と後輩。

そう分かってしまうことが、苦しい。

「でも先輩。先輩の指って、冷たいんですね!」

急にあの子が私の手に言及する。きっと、仕事自体に少し飽き飽きしていた頃なのだろう。

時計を見れば、とても集中して2時間近く経過していた。あと少しでお昼時になる時間だ。

「え、ええ。冷え性なの。この時期は特に冷房がよく効いて冷えてしまうから、、」

極端に着込むこともない季節。

秋口になっても、蒸し暑さから冷房を入れるこの職場では、自分にとっては、極寒になる時期だ。

だから、どうしても指先は冷えてしまう。

「そっか、確かにこの時期の冷房は夏よりも効きやすいですもんね。涼しいくらいだと思ってましたけど、寒いのが苦手だと、こんな弊害にもなるんですね、、、あ!でも先輩。知ってますか??手が冷たい人は、心があったかいって、、、先輩、当たってますね!!」

少し難しい顔をしたかと思ったら、閃いたようにニヤリ、とあの子が笑顔で迷信などを呟くのだ。

それも、さも新たな発見だというように、嬉しそうな声をして。

「え、ええ。昔からよく言われるやつよね。でも、当たってなんて、いないわよ…??私、優しくなんてないもの、、あんなの、眉唾ものよ、、、?」

触れた指先があったかくて、それよりも褒めてくれるあの子の笑顔が眩しくて。

鳴り止まない心臓の大きな音に、気が散って、、、

それを気取られたくない私は、その手をグーパーと繰り返しながら、あの子の言葉で、少し浮かれた気恥ずかしさから、何だか素っ気ない態度で返してしまった。

「えー。。そんなことないですよー?だって、先輩。今まで仕事で私が失敗しても、怒ったことないですよ??それに、教え方も丁寧だし、、」

「……そんな、皆んなそうよ?仕事なんだから、誰にだって、ちゃんと教えるものでしょう??……それに。そういう貴女は、手が冷たくなかったわね、、その理論だと、貴女の心が冷たくなるわよ??」

ここまで褒められたことが恥ずかしくて、どうしても否定したくて、なんて揶揄い文句のようなことを言ってしまったのか。吐(つ)いた言葉が少しキツい。。

そう思って、後悔をしたけど。

「えーー?!そりゃ、仕事ですけど、先輩、ぜっっったい、丁寧ですよ?!私がわからなかったら、わかるまで自分の時間を使ってまで、教えてくれますよ?!大きな声で言わないですけど、もっと分かりにくくて、雑な人いますもん!!」

驚いた、あの子からの私の評価は、こんなに高いなんて、、、そう、また少し浮かれそうになった。

だから、心の中で仕事の評価‘だけ’高いのだと言い聞かせた。

「あ!!それよりも!!!せんぱいーー??なんて言い草ですか、、??ものは例えじゃないですかー……?…でも、確かに私、自分の興味あること以外、そんなに熱心にしないし、未だに覚えていない社員さんもいるし、、、人に興味ないです。ほんとに、わたし冷たいかもです。。。」

「…私が言っといてなんだけど。貴女、色んな人と仲良くなるの早いじゃない。。知らない間に他部署の人と仲良く話しているの、見るわよ??」

それに困っている人を見ると、仕事中にも助けに行く。そんな、天真爛漫に周りと話す優しい彼女が、他人に興味がないようになんて見えなくて。

まして、優しい彼女を、私が本当に悪く言いたい訳でもなかったから。

無理やりフォローするかのような言い方で返してしまった。

こんなに周りに気配りができて、職場の空気が暗くなると明るい空気に変えて、おちゃらけて見せるこの子が、どこが他人に興味がないのだろう。他人に、冷たいのだろう。他人に興味がなければ、ここまで出来はしないのに。

そう思ってしまう。

「えーー、それは、まあ。空気を読んで?それっぽく??なんか話していると、上手く纏まってるだけというか??わたし、誰となんの話してるか深く考えないでしてるんで、他部署の人といっても、進んで何も話進めてないんですよねー、、だから、後で聞かれてもよく覚えてないんです、、、」

周りが勝手に盛り上がって話し続けてるから、それに合わせているだけ。

そういう彼女は、たはは、と頭の後ろに手を置いて、少し気まずそうにして、、

それにホッとする自分がいた。

きっと、嘘だったとしても、私と同じように人と関わることに興味がないという彼女に、自分と同じ性格を見い出して、嬉しくなってしまう。

現金な自分に、情けない気持ちになってしまうのだ。

すると、あの子ったら。

「あ、それはそうと。先輩、今は指先どうですか??私と話してる間に、さっきよりは温まってきましたか??今も冷たいようなら、私のこの、冷たーい心のおかげで、あったまった手で温めましょうか??」

なんて先ほどのことを根に持ちながら、私の指先を気にして、触れてきて、、

「……っっっっ??!え、ええ。確かに、さっきから話しながら手を動かしてたからかしら、、、??……温まってきたわね、、?」

なんて、驚いて。むしろ、触れた先にドギマギして、熱が集中したことが、温まった原因だ。

そう思っていたけど、そんなこと言うことはなく。

「おおー。良かったですー。やっぱり、仕事の手を止めながら気分転換するのも、身体に大事ですね!」

軽口を叩きながら、あの子が私に触れ続けている。

むしろ、仕事に飽きたこの子はあと3分で休憩のチャイムが鳴るその時間を持て余しているのだろう。本来なら、それを嗜め仕事をすべきと注意する立場にあるはずの自分だが、もう私だって、集中力が途切れているのだ。それも、触れた手に熱を帯びながら。

それだけで、どんどん体温は上昇するというのに、あの子は何も気づいていない。

それどころか、心臓がどんどん脈を打ち続ける自分に、この子は首を傾げて不思議そうな顔をしている。

こちらの方こそ、不思議だというのに、理不尽な。

なんて、心の中で憤慨してみるが、この子に言うつもりもなければ、役得すぎて、今の幸せに喜びが走り出しているのだ。

だから、注意なんて、出来やしない。

「先輩、どうしました??何かありました??」

この子は、まっったく、気づいてなどいない。。。

「………いえ。何でもないわ。ただ、あと少しで休憩だから、あと数分、このデータ入力、続けましょうか??」

注意などは出来なくとも、これだけは言えた。いや、それだけで、精一杯だった。

「えーー、、、、はーーー、い、、」

少し不満げなあの子ではあったが、根は真面目な彼女。あとこの数分を乗り切るため、また机に向かっていた、、、

私は今も、触れられた手の温かさに熱が引かず、脈打つ心に蓋をして、やり過ごすしかなかった。。。




「あ、ごめんなさい!」

先輩に言われた言葉。

苦しいなんてものじゃなかった。悔しい思いが、巡ったのだ。

だって、私だって当たったのだ。謝るほどのことではないし、一緒にお出かけまでした仲なのだから。

触れるくらい、良いではないか。

謝罪など、欲しくない。なんて、我儘にも思ってしまう。

だって、先輩は私に触れて欲しくなどないと思っているようなものではないか。

そんなの、悲しいでしょう。。。。

なんて、悲しんでみても、あの人には伝わらない。

単純に、仕事の先輩と後輩にしか考えてないから、当たることは、悪いことと思うのだろう。

悔しい。先輩にとって、私が何にも琴線に触れていないことが。

本当は、もっとドキドキしてほしい。

私の想いにも気づいてほしい。

愛しい、好き。

そんな、思いが駆け巡るほど、触れたその指先に、嬉しさが募る。

先輩の指がこんなに冷えていたなんて、知らなかった。知ることができた。先輩の手を温めてあげたい。

そんな、邪な思いが駆けてしまう。

だから、触れてしまった。理由をつけて、温めてあげたいなどと、嘯(うそぶ)いて。

特に変態ではないと思っていたが、私の思考回路はこんなものだったのかと、情けなさが押し寄せる。

それでも、スベスベの、綺麗で女性らしいその手に、触れることができるなんて、今回は役得だったと、嬉しくなった。

先輩は、私を優しい子だと言ってくれたけど。

愛しさを伝えることが出来なくたって、触れることができる。女同士だから、許される役得。

そんな卑怯なこと、してしまう。

本当は、こんなことせずとも、好きだと、愛しいと、言ってしまえればどれだけ楽か。

それだけで、どれほど関係を変えられるのか?

それが出来ないことが、何よりも苦しい。

悔しい。。。

先輩を、独り占めすることができない。

そんな、私たちの関係。

これからも、ずっと変わることがない、2人の関係。

いつか、先輩を独り占めできる時があればいい。

ずっと、ずっと、それを夢見ることを許してほしい、、、

知られなければ、想うことは自由だから。

そう、ずっと、ずっと、心につぶやき。



私の気持ちは、誰に知られることもなく、永遠に蓋をする。。

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