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無双女子高生2

「一回やられても懲りないとか、さすがに脳ミソの一部が欠けてるだけあるわね」


 羅刹院サラはその場でシャドウを始める。軽い準備運動なのに、信じられないスピードだった。


「サラちゃん、さすがにこの人数は……」

「翔子ちゃんは下がっていて。危ないから」


 サラは翔子の言葉が聞こえなかったかのように下がらせる。あちこちで机がひっくり返った教室には武器を持った不良たちが邪悪な笑みを浮かべていた。


「一斉にかかれ!」

「「「うおおおおお!」」」


 大迫が指示すると、大勢の不良たちが一気に突っ込んでくる。


 サラは身を低くしながら正面から突っ込むと、急激にジャンプして先頭にいた不良に飛び膝蹴りを喰らわせた。ゴリっと音がすると、気を失った不良は鉄パイプを持ったまま床に崩れ落ちた。


「うわっ! マジか!」

「バケモノかよ⁉」

「怯むな、一気に行けええ!」


 大迫の指示に従い、あちこちからバットやら特殊警棒、角材が振り下ろされる。だが、サラは着地とともに横方向へと転がって振り下ろされる一撃をかわしていく。


 立ち上がると、机を踏み台にして壁を走りはじめる。怒号が響く中で、壁から跳んで二人目の首をハイキックで刈り、着地とともに三人目の不良に金的からのヒジ打ちで戦闘不能へと追い込む。


 金属バットが横殴りに飛んできたので、マトリックス並みのスウェーバックでかわすと、後ろにいた不良に直撃した。驚きと罪悪感でフリーズした相手を、ここぞとばかりに反った体を戻しながら左ストレートで顎を打ち抜いた。


「おい、この女、マジで強いぞ!」

「怯むな。隙を与えずに攻撃し続ければ勝機はある!」


 弱気になりだした手下たちを、傷だらけの大迫が鼓舞している。少し前に倒されたので説得力もクソもないが、やらなければやられるのは間違いない。不良たちは自分すら騙しつつ、さらに攻撃を仕掛けていく。


「これなんか使えそうね」


 百円ショップで便利グッズでも見つけたみたいに、サラは落ちていた特殊警棒を手に取る。不良たちの背中に寒気が走る。嫌な予感しかしない。他の誰よりも特殊警棒を持つ姿が似合ったからだ。


 特殊警棒をフェンシングのように構えるサラ。ブルース・リーのようなステップを踏んで、「こいこい」とばかりに手招きをはじめる。


 不良たちは目を見合わせて、今さら逃げられないとばかりに突っ込んでいく。気分は神風特攻隊だった。


 サラはバットの一撃を外すと、特殊警棒でみぞおちにカウンターを突き刺す。相手はすぐに倒れて、地獄の苦しみで胃の中身をぶちまけながらのたうち回った。


「今日はうどんを食べたのね」

「クソが!」


 角材を持った不良が得物を槍のように突き出す。サラは薄笑いを浮かべながら体を斜めに構えると、角材はその上をすり抜けて壁に衝突した。


「うっ」


 下を向くと、邪悪な笑顔を浮かべたサラが映る。直後に衝撃――特殊警棒が、不良のタマを直撃した。


「あっ……がっ……!」


 床を転がる。追撃で気絶させる慈悲も無い。男性としての機能が失われたのではないかという恐怖とともに、声すら発せない地獄の苦しみが襲ってくる。


「そこで反省していなさい」


 完全に他人事のサラはもう一度机を踏み台にすると、教室の角あたりにある壁を蹴り、さらに上まで行ったかと思えば宙返りしてから天井を蹴って急降下してきた。


「「「うおおおお⁉」」」


 怒号が絶叫へと変わる。


 天井から降ってきたサラは真下にいた不良の頭を特殊警棒の一撃で砕き、着地とともに長い脚を素早く払うと、時計周りの足払いに不良たちが次々と足をすくわれて転んでいく。


 転がったバットを奪って、起き上がろうとする不良たちの脳天を次々と打ち抜いて倒していく。


 瞬く間に十人を超える大迫軍団は戦闘不能となった。すさまじい眼光をしたサラが、獲物を見つけた熊のように近付いてくる。


「ま……待て、違うんだ。話せば、分かる……」


 大迫の言葉には答えず、サラはどんどん近付いて来る。


「分かった、こうしよう。俺が八海内さんにお前を幹部候補として推薦してやろう! うん、そうだ、それがいい! ここのナンバー2って言えば、誰からも尊敬されて最高なんだぞ、分かるか……?」

「もう思い残すことは無いわね?」


 目の前まで来たサラが、大迫に「遺言」を確認する。


 ――ダメだ、このバケモノにはどんな言葉だってききやしない。


 大迫の表情が消える。


「うわあああああ!」


 隠し持っていたナイフを持つと、そのままサラに突っ込んでいく。この近距離なら外しようがない。そう自分に言い聞かせながら。


 サラは冷静にナイフを持つ手を掴むと、そのまま捻って大迫を転がした。手首からベキリと骨の折れた音が響く。


「あああああああああ!」


 大迫が破壊された手を抱えて叫び声を上げる。痛みにのたうち回っていると、スカートから伸びた細い脚が見えた。


 血の気が引く。うつぶせになった状態から顔を上げると、冷たい目でサラが見下ろしていた。


「翔子ちゃんに手を出す奴は、死、あるのみよ」


 答えを待たずに、サラのローファーが大迫の頭を踏みつけた。顔面から固いフロアに突っ込んだ大迫は、鼻血を水溜まりにしながら気を失った。


 周囲の不良たちが息を飲む。ドン引きだった。大迫と言えば校内でもそれなりに知られた不良だったが、実質的に羅刹院サラにかすり傷一つ付けられずに全滅させられた。


「翔子ちゃん、行きましょう」


 サラは翔子の手を引いて教室を出て行く。まだ午前なのに、色々と起こり過ぎたせいで傍観者たちは完全にキャパオーバーになっている。


「ふーん、あの二人って百合カップルなんだ」


 殺伐とした光景に似合わない、おっとりした声が響く。倒れた机や気を失った不良が転がる中、ピンク色のツインテールをした少女が棒付きキャンディを舐めていた。顔だけ見れば美少女のそれだが、どこか危険な香りのするオーラが漏れ出ていた。


「なんだか、面白いことになりそう」


 不敵な笑みを浮かべながら、少女はキャンディにペロペロと舌を這わせた。

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