第7話:魔力中毒の予防
◆ 時間経過
数週間が経った。
スラムは、大きく変わった。
畑が実り始めた。
野菜が育っている。
住居が補強された。
石造りの壁が、しっかりしている。
住民の顔が明るい。
笑顔が増えた。
おっさんは、スラムを歩きながら思った。
(……ここまで来たか)
◆ セシリアとの就寝問題
ある夜――
おっさんは、ため息をついた。
毎晩、セシリアが抱きついてくる。
もう、完全に日常だ。
「なあ、セシリア」
「はい?」
「毎晩、お前が来るなら……」
「最初から一緒に寝るか?」
セシリア、目を輝かせる。
「いいんですか!?」
「……どうせ、毎晩来るんだろ」
「はい! ありがとうございます!」
おっさんは、慌てて付け加えた。
「ただし、布団は別だぞ」
「はい!」
(……これで、少しは楽になるか)
その夜――
おっさんと、セシリアは別々の布団で寝た。
(……よし、これなら大丈夫だ)
そう思って眠りついた。
翌朝――
チュン、チュン。
おっさんが目を覚ますと――
セシリアが、おっさんの布団に入って抱きついていた。
「……」
おっさんは、天井を見上げた。
(……意味ないじゃないか)
◆ 風呂が恋しい
ある日――
おっさんは、自分の体を見た。
(……汚れてるな)
水の魔道具で体を洗ってるけど、やっぱり風呂が恋しい。
日本人だからね。
「なあ、セシリア」
「はい?」
「風呂、作りたい」
「風呂……ですか?」
「ああ。大きな浴槽に、お湯を張って、浸かるんだ」
「日本では、毎日風呂に入るのが普通だった」
セシリアは、目を輝かせた。
「それは……素晴らしいです!」
◆ 共同浴場の建設
おっさん、ゴードン、住民たちで建設開始。
土の魔道具で地面を掘る。
建築用に土を固める。
石を積む。
浴槽完成。
「よし、あとはお湯だな」
火の魔道具で水を温める。
でも――
「……時間がかかるな」
ゴードン「もっと効率的な方法はないか?」
おっさん、考える。
「……温泉とか、ないかな」
「温泉?」
「ああ。地下から、温かいお湯が湧いてくるんだ」
ゴードンは、首を傾げた。
「そんなものが……」
「試しに掘ってみよう」
◆ 温泉発見
おっさん、土の魔道具で深く掘ってみる。
強い威力。
ゴゴゴゴ……
地面が揺れる。
そして――
ドバァァァ!!
温かいお湯が噴き出した!!
「……おお!?」
「温泉だ!!」
住民たち、驚愕。
「本当に、お湯が!!」
「温かい!!」
ゴードンも驚いている。
「こんな場所に、温泉が……!」
おっさんは、笑った。
「日本人は、風呂運がいいんだ」
◆ 共同浴場、完成
温泉を浴槽に引き込む。
男湯と女湯、2つに分ける。
共同浴場、完成。
住民たちが、次々と入る。
「気持ちいい……!」
「体が温まる……!」
「疲れが取れる……!」
◆ 男湯
おっさんは、男湯で湯に浸かった。
(……ああ、生き返る)
(やっぱり、日本人には風呂だな)
ゴードンも、隣で湯に浸かっている。
「……これは、いいな」
「だろ?」
「体の芯まで温まる」
「毎日入れば、疲れが取れるぞ」
ゴードンは、満足そうに頷いた。
「コウタロウの知識は、本当に役に立つな」
◆ 女湯
女湯では――
セシリアとリーナが、湯に浸かっていた。
「……はぁ、気持ちいい」
リーナが、ため息をついた。
セシリアも、幸せそう。
「本当に……こんなに気持ちいいなんて……」
「コータローの発想、すごいわね」
「はい。コウタロウさんは、何でも知ってます」
リーナは、セシリアを見た。
「ねえ、セシリア」
「はい?」
「あんた、コータローのこと好きなの?」
セシリア、きょとん。
「好き……ですよ?」
「そうじゃなくて」
リーナは、少し考えた。
「男女の、好き」
セシリアは、少し考えた。
「……よく分かりません」
「やっぱりね」
リーナは、ため息をついた。
「あんた、本当に天然ね」
「でも……」
セシリアは、湯に浸かりながら言った。
「コウタロウさんと一緒にいると、安心します」
「温かくて、優しくて……」
「コウタロウさんがいないと、不安になります」
リーナは、少し笑った。
「……それって、恋じゃない」
「恋……ですか?」
「そうよ。あんた、完全に惚れてるわ」
セシリアは、顔を赤くした。
「そ、そうなんですか……?」
リーナは、湯に浸かりながら言った。
「まあ、あの男も悪くないわね」
「バカだけど、優しいし」
「スラムの人々を大事にしてる」
「あんたが惚れるのも、分かるわ」
セシリアは、嬉しそうに微笑んだ。
「リーナさんも、コウタロウさんのこと……」
「私は違うわよ」
リーナは、即答した。
「あくまでビジネスパートナー」
「恋愛とか、興味ないの」
「そうなんですか……」
リーナは、セシリアを見た。
「でも、あんたは幸せそうね」
「はい!」
セシリアは、満面の笑み。
「コウタロウさんと出会えて、本当に良かったです」
リーナは、少し笑った。
(……まあ、いいか)
(あの二人、お似合いだし)
◆ 異変の発見
数日後――
おっさんは、スラムを歩いていた。
すると――
住民が倒れていた。
「おい、大丈夫か!?」
おっさんは駆け寄る。
住民、息が荒い。
顔色が悪い。
「……すみません……ちょっと、休めば……」
「お前、ずっと働いてたのか?」
「はい……魔道具があれば、疲れないので……」
(……!)
おっさんは、はっとした。
(魔石の魔力が無尽蔵だから……)
(疲れずに働き続けてしまう……!)
◆ セシリアの治療
セシリアが駆けつける。
治療の魔道具で治療。
「……過労です」
「魔道具を使いすぎて、体が限界を超えています」
おっさんは、頷いた。
(……やっぱりか)
「休ませてくれ」
「はい」
住民を、近くの家に運ぶ。
休ませる。
◆ 4人での話し合い
夜、地下倉庫で。
おっさん、セシリア、ゴードン、リーナが集まった。
「このままじゃマズイ」
おっさんが言った。
「魔道具は便利だけど、使いすぎると体を壊す」
リーナが頷く。
「確かに。最近、疲れてる人が増えてるわ」
ゴードンも言う。
「魔道具の性能が良すぎるんだな」
「いや、性能はいい」
おっさんは、考え込んだ。
「問題は、使い方だ」
「使い方……?」
セシリアが聞く。
「ああ。魔法の知識を広めよう」
「魔力の仕組み、魔道具の正しい使い方」
「それを教えれば、過労を防げる」
セシリアは、目を輝かせた。
「……なるほど!」
◆ 魔法教室の開始
翌日――
スラムの広場で、魔法教室が始まった。
セシリアが先生。
おっさんがサポート。
ゴードンとリーナも見守っている。
「魔道具は便利ですが、使いすぎると体を壊します」
セシリアが説明する。
住民たちは、真剣に聞いている。
「特に、休憩を取らずに働き続けると……」
「体が自分の筋肉や骨を削って、魔力に変えてしまいます」
「それが、魔力中毒です」
住民たち、ざわつく。
「魔力中毒……!?」
「そんなことが……!」
セシリアは、頷く。
「はい。私も、3年間苦しみました」
「でも、コウタロウさんが治してくれました」
住民たちは、おっさんを見る。
おっさんは、前に出た。
「魔道具を使うときは、1時間に1回は休憩を取れ」
「疲れたら、無理をするな」
「体が一番大事だ」
住民たちは、頷く。
「分かりました!」
「気をつけます!」
◆ おっさんの健康知識
おっさんは、さらに健康知識を教える。
「肉、野菜、果物。バランスよく食べること」
「水も、たくさん飲むこと」
「睡眠も大事だ。最低でも7時間は寝ろ」
「それと……」
おっさんは、共同浴場を指差した。
「風呂に入れ。血行が良くなって、疲れが取れる」
住民たちは、メモを取っている。
(……おっさんの健康オタク知識が活きるな)
リーナが、笑った。
「あんた、教育者みたいね」
おっさんは、笑った。
「いや、ただの健康オタクだ」
「でも、これで皆が健康になるなら、それでいい」
◆ スラムの変化
魔法教室が始まってから、スラムの雰囲気が変わった。
住民たちは、休憩を取るようになった。
バランスよく食べるようになった。
風呂に入るようになった。
そして――
倒れる人がいなくなった。
セシリアは、嬉しそうに言った。
「皆、健康になりましたね」
「ああ」
おっさんは、スラムを見渡した。
(……これが、本当の豊かさだな)
◆ 夜
夜、セシリアが、おっさんに抱きつく。
「コウタロウさん、今日もお疲れ様です」
リーナが、ため息をついた。
「あんたたち、もう好きにしなさい」
おっさん、笑う。
「……慣れた」
リーナは、笑った。
「そうね。もう諦めたわ」
◆ 就寝
「じゃあ、寝るか」
「はい」
おっさんとセシリアは、別々の布団で横になった。
でも――
数時間後。
セシリアが、おっさんの布団に入って抱きついていた。
おっさんは、もう何も言わなかった。
(……もう、これが日常だ)
翌朝――
チュン、チュン。
おっさんが目を覚ますと、またセシリアが抱きついていた。
「……やっぱりな」
おっさんは、もう何も感じなかった。
(……完全に日常だ)
セシリアが目を覚ます。
「おはようございます、コウタロウさん♪」
「……おはよう」
おっさんは、諦めた顔で答えた。
(次回:第8話「王都の影」に続く)




