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52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった  作者: よっしぃ@書籍化


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第5話:魔道具職人

 ◆ 朝(3日目)


 チュン、チュン。


 また、鳥の鳴き声で目が覚めた。


「……ん」


 なんか、重い。


 温かい。


 柔らかい。


(……もう慣れた)


 おっさんは、セシリアが抱きついてるのを確認して、諦めた。


「……おはよう」


 セシリアが目を覚ます。


「おはようございます、コウタロウさん♪」


 満面の笑み。


 おっさんは、もう何も言わなかった。


(……これが日常だな)



 ◆ 朝食後


 朝食を終えて、おっさんは立ち上がった。


「さて、今日はあの職人に会いに行くか」


「はい!」


 セシリアも立ち上がる。


 二人は、スラムの路地を歩いた。


 セシリアが、おっさんの腕にくっついてくる。


(……もう何も感じない)


 おっさんは完全に慣れていた。



 ◆ 職人の小屋


 スラムの奥。


 ボロボロの小屋。


「ここです」


 セシリアが言った。


 おっさんは、扉をノックした。


 コンコン。


「……誰だ」


 低い声。


「話がある。開けてくれ」


 しばらく沈黙。


 ガチャリ。


 扉が開いた。



 そこには――


 60代くらいの男。


 ガッシリした体格。


 髭もじゃ。


 目は鋭い。


 でも、目が死んでる。


 手には酒瓶。


「……何の用だ」


「あんた、魔道具職人か?」


「……昔はな」


 男は、自嘲気味に笑った。


「今は、ただの飲んだくれだ」



 ◆ 依頼


 おっさんは、単刀直入に言った。


「魔道具を作ってほしい」


「断る」


 即答。


「俺の腕じゃ、性能が出ない」


「王都で散々言われた」


「『お前の魔道具は、基準に達していない』ってな」


 職人は、酒を飲んだ。


 おっさんは、ポケットから魔石を取り出した。


「これで、作れないか?」


 職人は、魔石を見た。


 その瞬間――


 目の色が変わった。


「……!」


「これは……なんだこの純度……!」


 職人は、酒瓶を置いて、魔石を手に取った。


 じっと見つめる。


「どこで手に入れた!?」


「それは秘密だ。でも、これで作れるか?」


 職人は、しばらく沈黙した。


 そして――


「……作れる」


「いや、作れるどころか……」


「最高の魔道具が作れる!!」


 職人の目に、光が戻った。



 ◆ 職人の覚醒


 職人は、立ち上がった。


 酒瓶を棚に戻す。


「分かった。作ってやる」


「何が欲しい?」


「運搬道具だ。大量の魔道具を運ぶための」


「運搬道具……なるほど」


 職人は、考え込んだ。


「容量拡張の魔法袋か、自走式のカートか……」


「どっちがいい?」


「どっちも作れるのか?」


 職人は、自信満々に笑った。


「この魔石があれば、何でも作れる」


 おっさんは、頷いた。


「じゃあ、両方頼む」


「分かった」



 ◆ 工房


 職人は、小屋の奥に案内した。


 そこには――


 工房があった。


 作業台。


 工具。


 魔道具の部品。


 全てに埃が積もってる。


「……久しぶりだな」


 職人は、作業台の埃を払った。


「何年ぶりだろう」


「王都を追い出されてから……もう、作る気力もなかった」


 職人は、魔石を見つめた。


「でも、この魔石があれば……」


「俺の腕が間違ってなかったって、証明できる」



 ◆ 魔法の袋


 職人は、さっそく作業を始めた。


 まず、袋の布を用意。


 魔道具の部品を組み込む。


 細かい作業。


 でも、手際がいい。


(……さすが、職人だな)


 おっさんは、感心して見ている。


 セシリアも、じっと見ている。


 数時間後――


 袋が完成した。


 見た目は普通の袋。


 でも、魔石がセットされている。


「完成だ」


 職人は、袋を開いた。


「中を見てみろ」


 おっさんは、袋の中を覗いた。


「……!」


 中は、広大な空間だった。


 まるで部屋のような広さ。


「これは……」


「容量拡張の魔法だ」


「外から見れば小さな袋だが、中は広い」


「大量の魔道具を収納できる」


 おっさんは、感嘆した。


「……すごいな」



 ◆ 自走式カート


 次に、職人はカートを作り始めた。


 木材を組み立てる。


 車輪を付ける。


 魔道具の部品を組み込む。


 魔石をセット。


 カチリ。


 光が走る。


「完成だ」


 職人は、カートを押した。


 いや、押さなくても――


 カートが自動で動いた。


「……おお」


 おっさんは、驚く。


「魔石をエネルギー源にして、自動で動く」


「重い荷物も、楽々運べる」


 職人は、満足そうに頷いた。


「どうだ?」


「完璧だ」



 ◆ 土の魔道具


「それと、もう一つ頼みたいんだが」


「何だ?」


「土の魔道具、作れるか?」


 職人は、少し考えた。


「土の……? 何に使う?」


「畑を作りたい」


「畑……?」


 セシリアも驚いている。


「ああ。スラムの外に土地がある」


「土の魔道具で耕せば、野菜が育てられる」


 職人は、頷いた。


「……なるほど。面白い」


「作ってやろう」



 職人は、土の魔道具を作り始めた。


 杖のような形。


 魔道具の部品を組み込む。


 魔石をセット。


 カチリ。


「完成だ」


 職人は、土の魔道具を手渡した。


「これは、使い方次第だ」


「使い方次第?」


「ああ。魔石の量と、魔力の流し方で威力が変わる」


「弱く使えば、土をふかふかに耕せる」


「強く使えば、土を固めたり、掘削したりできる」


 おっさんは、目を輝かせた。


「一つの魔道具で、両方できるのか」


「そうだ。効率的だろ?」


 セシリアも、感嘆している。


「すごいです……!」



 ◆ テスト


 おっさん、セシリア、職人の3人は、スラムの外に出た。


 荒れ地。


 土が固まっている。


「じゃあ、試してみるか」


 おっさんは、土の魔道具を構えた。


 セシリアが、魔力を流す方法を教える。


「ゆっくり流してください」


「分かった」


 おっさんは、魔力をゆっくり流した。


 土の魔道具が光る。


 そして――


 土がふかふかになった。


 まるで、鍬で耕したように。


「……おお」


「すごい……!」


 セシリアが、土を触ってみる。


「本当にふかふかです……!」


「これなら、野菜が育ちますね!」



 次に、おっさんは魔力を一気に流した。


 強い威力。


 土の魔道具が強く光る。


 そして――


 土が固まった。


 まるでコンクリートのように。


「……これは」


「建築に使えるな」


 職人が言った。


「土を固めれば、住居を補強できる」


「掘削すれば、井戸も掘れる」


 おっさんは、頷いた。


「完璧だ」



 ◆ 職人の涙


 職人は、自分の作った魔道具を見つめた。


「……できた」


「俺の腕は……間違ってなかった……!」


 職人の目から、涙が流れた。


「王都の連中は、俺の腕が悪いと言った」


「でも、違った」


「魔石の品質が悪かっただけなんだ……!」


 職人は、膝をついた。


「俺の腕は……悪くなかった……!」


 おっさんは、職人の肩に手を置いた。


「あんたの腕は、本物だ」


「誰がなんと言おうと、これが証明だ」


 職人は、涙を拭いた。


「……ありがとう」



 ◆ 仲間入り


 おっさんは、職人に手を差し伸べた。


「なあ、一緒にやらないか?」


「一緒に……?」


「魔道具ビジネスだ」


「あんたの腕と、この魔石で、最高の魔道具を作る」


 職人は、おっさんの手を見つめた。


「……報酬は?」


「利益の3分の1」


 職人は、少し考えた。


 そして――


「……悪くない」


「やろう」


 握手。


 セシリアも、嬉しそうに微笑んでいる。


「これで、3人ですね!」


 おっさんは、頷いた。


「ああ。これから、よろしく頼む」



 ◆ 名前


「そういえば、名前を聞いてなかったな」


 おっさんが言った。


 職人は、少し照れくさそうに答えた。


「……ゴードンだ」


「ゴードンか。俺は康太郎。コウタロウって呼んでくれ」


「コウタロウ……変わった名前だな」


「異世界から来たからな」


 ゴードンは、驚いた顔をした。


「異世界……!?」


「ああ。長い話だから、後で話す」


 ゴードンは、笑った。


「……面白い男だな」



 ◆ これから


 3人は、スラムへと戻った。


「これから、色々な魔道具を作っていこう」


 おっさんが言った。


「ああ」


 ゴードンが頷く。


「時間をかけて、少しずつ」


「はい!」


 セシリアも嬉しそう。


 おっさんは、空を見上げた。


(……3人体制か)


(だんだん、形になってきたな)



 ◆ 畑作り


 翌日――


 おっさん、セシリア、ゴードン、そしてスラムの住民たちで、畑を作り始めた。


 土の魔道具で、土を耕す。


 種を撒く。


 水の魔道具で、水をやる。


 住民たちは、目を輝かせている。


「本当に、野菜が育つんですか!?」


「ああ。ちゃんと世話をすれば、育つ」


 おっさんは、家庭菜園の知識を教える。


「水は毎日やること」


「雑草は抜くこと」


「虫がついたら、取り除くこと」


 住民たちは、真剣に聞いている。


「分かりました!」


「頑張ります!」



 ◆ 次への布石


 夜。


 おっさん、セシリア、ゴードンの3人は、地下倉庫で話していた。


「運搬道具もできた」


「土の魔道具もできた」


「次は……」


 おっさんは、考え込んだ。


「販売だな」


「販売……?」


 ゴードンが聞く。


「ああ。魔道具を作っても、売らなきゃ意味がない」


「でも、俺たちには販売ルートがない」


 セシリアが言った。


「販売ルート……」


 おっさんは、頷いた。


「商人が必要だ」


「商人……」


 セシリアは、少し考えた。


「……もしかしたら」


「もしかしたら?」


「スラムに、元商人がいます」


 おっさんは、目を輝かせた。


「本当か!?」


「はい。でも……」


「でも?」


「女性です」


 おっさんは、笑った。


「女性でも男性でも、腕が良ければいい」


「明日、会いに行こう」



 ◆ 就寝


「じゃあ、寝るか」


「はい」


 おっさんは、部屋の隅で横になった。


 セシリアは、布団の中で幸せそうに眠っている。


(……今日も来るんだろうな)


 そう思いながら、おっさんは眠りについた。



 案の定――


 深夜。


「……コウタロウさん……」


「……ん?」


「寒いです……」


「……ああ……」


「落ち着きます……」


「……そうか……」



 翌朝――


 チュン、チュン。


 おっさんが目を覚ますと、またセシリアが抱きついていた。


「……やっぱりな」


 おっさんは、もう何も感じなかった。


(……完全に日常だ)


 セシリアが目を覚ます。


「おはようございます、コウタロウさん♪」


「……おはよう」


 おっさんは、諦めた顔で答えた。



(次回:第6話「腕利きの商人」に続く)

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