第48話:飛行船の夢
◆ ゴードンのアイデア
数日後――
グリーンヘイブン。
ゴードンの工房。
ゴードンが、何かを作っていた。
小さな模型。
籠のような形。
でも――
上に、大きな袋がついている。
おっさんが、工房に入ってきた。
「ゴードン、何を作ってるんだ?」
ゴードンは、振り返った。
「康太郎、ちょうどいい」
「これを見てくれ」
ゴードンは、模型を見せた。
下に籠。
上に、大きな袋。
おっさんは、首を傾げた。
「……これは……?」
ゴードン「飛行船だ」
おっさん、驚く。
「飛行船……?」
「空を、飛ぶのか?」
ゴードンは、頷いた。
「ああ」
「この袋の中に、熱い空気を入れる」
「すると、浮く」
「気球の原理だ」
おっさんは、感心した。
「……なるほど……」
「魔石で、熱を発生させるのか……」
ゴードン「その通りだ」
「魔石を使って、空気を温める」
「そうすれば、浮力が生まれる」
「ゆっくりだが、空を飛べる」
おっさんは、興奮した。
「……すごいな……」
「これができたら、革命的だ……」
◆ 最初の実験
ゴードンは、小さな模型で実験を始めた。
袋の下に、魔石を置く。
青い魔石。
熱を発生させる魔石。
魔石が、温かくなる。
袋の中の空気が、温まる。
そして――
模型が、浮いた。
ゆっくりと。
空中に。
おっさん、目を見開く。
「……浮いた……!」
ゴードンも、興奮している。
「成功だ!」
「原理は、正しい!」
模型は、ゆっくりと上昇した。
天井近くまで。
でも――
しばらくすると、降りてきた。
魔石の熱が、冷めたから。
おっさん「……魔石の熱が、足りないのか……?」
ゴードンは、頷いた。
「ああ」
「もっと強力な魔石が必要だ」
「それか、複数の魔石を使う」
おっさんは、少し考えた。
「……白い魔石は、どうだ?……」
ゴードン「……それは、もったいない……」
「白い魔石は、貴重だ……」
「治療用に使うべきだ……」
おっさんは、頷いた。
「……そうだな……」
「じゃあ、紫の魔石を複数使うか……」
ゴードン「それがいい」
◆ 改良
ゴードンは、模型を改良した。
紫の魔石を、3つ使う。
袋も、大きくした。
より多くの熱い空気を、入れられる。
そして――
再び実験。
魔石を起動させる。
袋の中の空気が、急速に温まる。
模型が、浮いた。
今度は、もっと高く。
もっと長く。
天井に届くくらい。
そして――
10分以上、浮いていた。
おっさん、拍手する。
「……すごい……!」
「これなら、実用できるぞ……!」
ゴードンは、微笑んだ。
「ああ」
「でも、まだ問題がある」
おっさん「何だ?」
ゴードン「方向制御だ」
「浮くだけでは、ダメだ」
「どこかに行きたい方向に、進まないと」
おっさんは、頷いた。
「……確かに……」
「風に流されるだけじゃ、使えないな……」
◆ 方向制御の研究
ゴードンは、方向制御を研究し始めた。
模型に、舵をつける。
船の舵のような形。
でも――
うまく動かない。
空気抵抗が、少なすぎる。
次に、プロペラをつける。
魔石で動くプロペラ。
でも――
出力が足りない。
前に進まない。
ゴードンは、ため息をついた。
「……難しいな……」
おっさんも、考えている。
「……魔石の出力を、上げられないか?……」
ゴードン「紫の魔石でも、足りない……」
「白い魔石なら、できるかもしれないが……」
おっさんは、首を振った。
「……それは、やめよう……」
「他の方法を、考えよう……」
真理が、工房に入ってきた。
「ゴードンさん、康太郎さん、何してるんですか?」
ゴードンは、模型を見せた。
「飛行船を、作ってるんだ」
真理、驚く。
「飛行船……?」
「空を、飛ぶんですか?」
ゴードン「ああ」
「でも、方向制御が難しくてね」
真理は、模型を見た。
じっと、観察する。
そして――
「ゴードンさん、これって……」
「風に流されるだけですよね?」
ゴードン「そうなんだ」
真理「じゃあ、最初は風に流されるだけでもいいんじゃないですか?」
「偵察とか、観測とか」
「そういう用途なら、使えると思います」
ゴードンは、目を見開いた。
「……なるほど……!」
「確かに、その通りだ……!」
おっさんも、頷いた。
「……最初から完璧を目指さなくていい……」
「まずは、浮くことができる……」
「それだけで、十分価値がある……」
ゴードンは、決意した。
「よし、まずは浮くだけの飛行船を作る」
「方向制御は、後で考える」
◆ 実物大の製作
数週間後――
ゴードンは、実物大の飛行船を作り始めた。
まず、大きな袋。
布製。
軽くて、丈夫な布。
商人から取り寄せた。
袋の大きさは、10メートル以上。
巨大。
これが、上部になる。
熱い空気を入れて、浮く部分。
そして――
袋の下に、籠をつける。
人が乗る籠。
木製。
軽い木材。
紫の魔石を、10個使う。
熱を発生させる魔石。
籠の中に、設置する。
袋の真下に。
全てを、組み立てる。
職人たちが、協力する。
大がかりな作業。
数週間かかった。
そして――
ついに、完成した。
巨大な飛行船。
袋は、空っぽ。
でも、魔石を起動させれば――
浮くはずだ。
◆ 最初のテスト飛行
数日後――
グリーンヘイブンの広場。
多くの住民が、集まっていた。
飛行船を見るために。
巨大な袋。
籠。
全てが、広場に置かれている。
ゴードンが、魔石を起動させた。
紫の魔石、10個。
全てが、熱を発生させる。
袋の中の空気が、温まり始める。
ゆっくりと。
そして――
袋が、膨らみ始めた。
熱い空気が、入っていく。
袋が、どんどん大きくなる。
住民たちが、歓声を上げる。
「すごい!」
「袋が、膨らんでる!」
袋が、完全に膨らんだ。
巨大な気球。
そして――
籠が、浮き始めた。
ゆっくりと。
地面から、離れる。
住民たちが、さらに歓声を上げる。
「浮いた!!」
「本当に、浮いた!!」
「飛行船だ!!」
おっさんも、感動している。
「……すごい……」
「本当に、浮いてる……」
ゴードンは、興奮していた。
「成功だ!!」
「飛行船が、浮いた!!」
真理も、涙を流している。
「……ゴードンさん、すごいです……」
飛行船は、ゆっくりと上昇した。
10メートル。
20メートル。
30メートル。
どんどん、高くなる。
住民たちは、空を見上げている。
感動している。
「すごい……」
「人間が、空を飛んでる……」
「いや、まだ人は乗ってないけど……」
「でも、すごい……」
飛行船は、風に流された。
ゆっくりと。
街の上を。
美しい光景。
おっさんは、微笑んだ。
「……これが、未来か……」
◆ 回収
数時間後――
飛行船は、ゆっくりと降りてきた。
魔石の熱が、冷めたから。
街の外れに、着地した。
住民たちが、駆けつける。
飛行船を、回収する。
無事。
壊れていない。
ゴードンは、安堵した。
「……良かった……」
「無事に、戻ってきた……」
おっさんも、微笑んでいる。
「……次は、人を乗せるのか?……」
ゴードンは、頷いた。
「ああ」
「でも、安全を確認してからだ」
「何度も、テストする」
おっさん「……頼む……」
「安全第一だ……」
◆ 改良と実験
数週間――
ゴードンは、何度もテストを繰り返した。
飛行船を、飛ばす。
回収する。
改良する。
また、飛ばす。
繰り返し。
袋の素材を、変える。
より軽く、より丈夫に。
魔石の配置を、変える。
より効率的に。
籠を、改良する。
より安全に。
全てを、試行錯誤する。
ゴードンは、諦めない。
真理も、手伝っている。
おっさんも、アイデアを出す。
みんなで、協力する。
そして――
飛行船は、どんどん改良されていった。
より安定。
より安全。
より高く。
より長く。
◆ 人を乗せる決断
数ヶ月後――
ゴードンは、決意した。
「……そろそろ、人を乗せてみる……」
おっさん「本当に、大丈夫か?」
ゴードン「ああ」
「何度もテストした」
「安全性は、確認した」
「もう、大丈夫だ」
おっさんは、少し考えた。
そして――
「……じゃあ、俺が乗る……」
ゴードン、驚く。
「何だと!?」
「康太郎、お前が乗るのか!?」
おっさんは、頷いた。
「……ああ……」
「俺が、最初に乗るべきだ……」
「リーダーとして……」
ゴードンは、首を振った。
「だめだ」
「お前は、伯爵だ」
「領主だ」
「危険なことは、させられない」
おっさん「でも……」
ゴードン「俺が、乗る」
「俺が作ったんだ」
「俺が、責任を取る」
真理が、反対する。
「ゴードンさん、だめです!」
「危険です!」
ゴードンは、真理を見た。
優しく微笑む。
「大丈夫だ、真理」
「俺を、信じてくれ」
真理は、涙を流した。
「……でも……」
ゴードンは、真理を抱きしめた。
「……必ず、戻ってくる……」
「約束する……」
◆ 初の有人飛行
翌日――
広場。
多くの住民が、集まっていた。
初の有人飛行を見るために。
飛行船が、準備されている。
ゴードンが、籠に乗り込んだ。
真理が、心配そうに見ている。
おっさんも、緊張している。
ゴードンが、手を振る。
「行ってくる!」
魔石を、起動させる。
袋が、膨らみ始める。
そして――
籠が、浮き始めた。
ゴードンを乗せたまま。
ゆっくりと。
住民たちが、歓声を上げる。
「浮いた!!」
「ゴードン様が、空を飛んでる!!」
「すごい!!」
真理は、涙を流しながら見ている。
おっさんも、拳を握りしめている。
「……頑張れ、ゴードン……」
飛行船は、上昇した。
10メートル。
20メートル。
30メートル。
ゴードンが、手を振っている。
笑顔。
住民たちも、手を振り返す。
「ゴードン様!!」
「頑張って!!」
飛行船は、風に流された。
ゆっくりと。
街の上を。
ゴードンは、空からの景色を見た。
グリーンヘイブン。
美しい街。
みんなの街。
ゴードンは、感動した。
「……すごい……」
「こんなに、美しいのか……」
数時間後――
飛行船は、降りてきた。
街の外れ。
無事に、着地した。
住民たちが、駆けつける。
ゴードンが、籠から降りた。
無事。
怪我なし。
真理が、ゴードンに駆け寄った。
抱きつく。
「ゴードンさん!!」
「無事で、良かった!!」
ゴードンは、真理を抱きしめた。
「……ただいま……」
おっさんも、駆け寄る。
「ゴードン、よくやった!」
ゴードンは、微笑んだ。
「……成功だ……」
「人間が、空を飛べた……」
「これは、革命だ……」
住民たちが、歓声を上げる。
「ゴードン様、万歳!!」
「飛行船、万歳!!」
「グリーンヘイブン、万歳!!」
グリーンヘイブン。
新たな時代が、始まった。
空を飛ぶ時代。
飛行船の時代。
おっさんたちの挑戦は、続く。
(次回:第49話「社交界デビュー」に続く)




