第30話:広がる希望
◆ 数ヶ月後
グリーンヘイブン。
数ヶ月が経った。
セシリアのお腹は、大きく膨らんでいた。
妊娠7ヶ月。
もうすぐ、赤ちゃんが生まれる。
セシリアは、診療所のベッドで休んでいる。
リリアが、診察している。
「セシリアさん、順調ですよ」
「本当ですか?」
「はい」
「赤ちゃんも、元気です」
セシリアは、嬉しそうに微笑んだ。
「良かった……」
おっさんが、隣にいる。
心配そうに。
「無理するなよ」
「大丈夫です」
セシリアは、おっさんの手を握った。
「コウタロウさんがいますから」
おっさんは、セシリアの頭を撫でた。
「……もうすぐだな」
「はい」
「父親になるんですね」
セシリアは、幸せそうに微笑む。
おっさんも、微笑んだ。
「……ああ」
「今度こそ、守る」
「この子も、お前も」
◆ 街の発展
グリーンヘイブンは、大きく発展していた。
人口、1000人を超えた。
新しい住居。
新しい店。
新しい学校。
新しい工房。
全てが、順調。
街は、活気に溢れている。
市場では、商人たちが商品を売っている。
「新鮮な野菜だよ!」
「魔道具、安いよ!」
「パンもあるよ!」
住民たちが、買い物をしている。
笑顔。
幸せそう。
学校では、子供たちが勉強している。
「1+1は?」
「2!」
「正解!」
子供たちが、元気に学んでいる。
先生も、優しい。
みんな、幸せそう。
公園では、子供たちが遊んでいる。
森の中の公園。
自然に囲まれている。
「鬼ごっこしよう!」
「いいよ!」
子供たちの笑い声が響く。
母親たちも、微笑んでいる。
「こんな素敵な街……」
「本当に、幸せ……」
◆ ネットワークの拡大
おっさんの部屋。
リーナが、報告に来た。
「コータロー、すごいことになってるわよ」
「どうした?」
「ネットワークが、さらに拡大してるの」
リーナは、地図を広げた。
「今までは、この国のスラムだけだった」
「でも、今は……」
リーナは、地図の別の場所を指差した。
「隣国のスラムからも、使者が来てる」
「隣国?」
「ええ」
「魔道具の噂が、国境を越えたのよ」
おっさんは、少し考えた。
「……そうか」
「どうするの?」
「受け入れる」
「本当に?」
おっさんは、頷いた。
「ああ」
「困っている人を、助ける」
「それが、俺たちの目的だ」
「国境なんて、関係ない」
リーナは、微笑んだ。
「……あんたらしいわね」
◆ 隣国の使者
広場。
隣国の使者が、到着した。
ボロボロの服。
痩せている。
明らかに、スラムの住民。
おっさんが、出迎える。
「よく来た」
使者は、驚いている。
「……本当に、歓迎してくれるんですか……?」
「ああ」
「でも、私たちは隣国の……」
おっさんは、首を振った。
「関係ない」
「お前たちは、困っている人だ」
「俺たちは、困っている人を助ける」
「それだけだ」
使者は、涙を流した。
「……ありがとうございます……」
おっさんは、使者の肩を叩いた。
「魔道具を、持って帰れ」
「お前たちのスラムで、使え」
「本当ですか!?」
「ああ」
「それに、作り方も教える」
使者は、驚く。
「作り方……!?」
「ああ」
「お前たちが、自分で作れるようになれば」
「もっと多くの人を、救える」
使者は、深く頭を下げた。
「……ありがとうございます……!」
「本当に、ありがとうございます……!」
◆ ゴードンの指導
工房。
ゴードンが、隣国の使者に魔道具の作り方を教えていた。
真理も、隣にいる。
使者たちが、真剣に聞いている。
「魔石を、ここに配置する」
「回路は、こうだ」
ゴードンが、丁寧に教える。
使者たちが、メモを取っている。
「……すごい……」
「こんなに、簡単なんですか……」
ゴードン「ああ」
「誰でも作れる」
「魔法使いじゃなくても」
使者たちは、感動している。
「……ありがとうございます……」
「これで、私たちのスラムも……」
「救われます……」
真理が、使者たちに声をかけた。
「頑張ってくださいね」
「あなたたちなら、できます」
使者たちは、涙を流した。
「……はい……!」
「頑張ります……!」
◆ 王都からの使者
数日後――
王都から、使者が来た。
立派な馬車。
豪華な服。
明らかに、高位の貴族。
住民たちが、ざわつく。
「王都から……?」
「何の用だろう……?」
おっさんが、出迎える。
「……どちら様だ?」
使者は、馬車から降りた。
50代くらいの男性。
優しそうな顔。
「初めまして」
「私は、王都の宰相、アルバート・フォン・クライネです」
おっさん、驚く。
「宰相……!?」
「はい」
アルバートは、深く頭を下げた。
「康太郎殿、お会いできて光栄です」
おっさん、戸惑う。
「……何の用だ?」
アルバートは、真剣な顔で言った。
「王から、伝言があります」
「……王から?」
「はい」
アルバートは、手紙を取り出した。
「これを、お読みください」
おっさんは、手紙を受け取った。
開く。
読む。
目を見開く。
「……!」
手紙には、こう書かれていた。
『康太郎殿
あなたの行いに、深く感謝します。
スラムの人々を救い、街を作り、希望を与えてくれたこと。
あなたは、真の勇者です。
王として、あなたに爵位を授けたいと考えております。
グリーンヘイブン男爵の称号と、都市の正式な認定を。
どうか、お受けいただきたい。
返事を、お待ちしています。
国王 エドワード三世』
おっさんは、少し考えた。
(……爵位……)
(男爵……)
(俺が、貴族に……?)
アルバートが言った。
「陛下は、グリーンヘイブンを正式な都市として認めたいと」
「そして、康太郎殿を、その領主として」
おっさんは、黙っている。
考えている。
(……今後のことを考えると……)
(グリーンヘイブンも発展してきた)
(元の場所……バロン家の土地は、もう必要ない)
(完全に移住すれば、貴族の横やりも心配ない)
(でも、爵位……)
(俺が、貴族……?)
おっさんは、顔を上げた。
「……考えさせてください」
アルバート、驚く。
「え?」
「すぐには、答えられない」
「1週間、時間をいただけませんか」
アルバートは、少し考えた。
「……分かりました」
「では、1週間後に、また伺います」
「返事を、お聞かせください」
◆ 相談 - セシリア
夜。
おっさんとセシリアが、部屋にいる。
セシリアは、ベッドで横になっている。
お腹が、大きい。
おっさんが、隣に座る。
「……セシリア」
「はい?」
「国王から、爵位を授けたいと言われた」
セシリア、驚く。
「爵位……!?」
「ああ」
「グリーンヘイブン男爵だそうだ」
セシリアは、少し考えた。
そして――
「受けた方がいいと思います」
おっさん、驚く。
「……受けた方がいい?」
「はい」
セシリアは、真剣な顔で言った。
「コウタロウさん、貴族になれば」
「正式な立場で、活動できます」
「発言力も、得られます」
「他の貴族とも、対等に話せます」
おっさんは、少し考えた。
「……でも、俺は……」
セシリアは、おっさんの手を握った。
「それに……」
「この子のためにも」
セシリアは、お腹を撫でた。
「貴族の子として生まれれば」
「将来、困ることが少なくなります」
おっさん、はっとする。
「……!」
セシリアは、微笑んだ。
「コウタロウさんは、『ただのおっさん』でいたいんですよね」
「分かります」
「でも、時には立場が必要です」
「みんなのためにも」
「この子のためにも」
おっさんは、セシリアを見た。
「……お前は、賢いな」
セシリアは、顔を赤くした。
「……そんな……」
◆ 相談 - リーナ
翌日――
リーナが、おっさんの部屋に来た。
「コータロー、聞いたわよ」
「爵位の話」
「ああ」
リーナは、真剣な顔で言った。
「受けなさい」
おっさん、驚く。
「……お前も、そう言うのか」
「当然よ」
リーナは、続けた。
「あんた、これからもスラムを救い続けるんでしょ?」
「……ああ」
「なら、発言力が必要よ」
「貴族や王族と、対等に話す立場が」
「正式な地位がないと、いずれ限界が来る」
おっさんは、少し考えた。
「……そうか」
リーナは、おっさんの肩を叩いた。
「あんたは、『ただのおっさん』じゃない」
「もう、多くの人を救ってる」
「立場を、受け入れなさい」
◆ 相談 - ゴードンと真理
工房。
ゴードンと真理が、おっさんに声をかけた。
「康太郎、爵位の話、聞いた」
「ああ」
ゴードンは、真剣な顔で言った。
「受けた方がいい」
「法的地位がないと、いずれ問題になる」
「特に、他国との交渉では」
真理も、頷く。
「私も、そう思います」
「正式な立場があった方が、活動しやすいです」
「勇者として、よく分かります」
おっさんは、少し考えた。
「……そうか」
◆ おっさんの葛藤
夜。
おっさんは、自分の部屋で考えていた。
遺骨の袋を、手に持っている。
「……妻よ、息子よ、娘よ」
「俺に、爵位を授けたいと言われた」
「貴族になれと」
おっさんは、遺骨を見つめた。
「俺は、貴族なんて柄じゃない」
「ただのおっさんだ」
「でも……」
おっさんは、少し涙を流した。
「セシリアのため」
「お腹の子供のため」
「みんなのため」
「受けた方がいいのか……?」
おっさんは、空を見上げた。
「……妻よ」
「お前なら、どうする?」
静寂。
でも――
おっさんの心に、答えが浮かんだ。
(……受けなさい)
(みんなのために)
おっさんは、涙を流した。
「……ありがとう」
◆ 1週間後 - 返事
1週間後――
宰相アルバートが、再び訪れた。
おっさんが、出迎える。
「アルバート殿」
「康太郎殿」
「お返事は、いかがでしょうか」
おっさんは、深く頭を下げた。
「……爵位を、受けます」
アルバート、目を輝かせる。
「本当ですか!」
「はい」
おっさんは、顔を上げた。
「ただし、条件があります」
「条件……?」
おっさんは、真剣な顔で言った。
「まず、元いた場所……バロン家の土地は、明け渡します」
「俺たちは、完全にグリーンヘイブンに移住します」
「元の場所は、バロン伯爵に返します」
「契約を、解消してください」
アルバートは、少し考えた。
「……なるほど」
「グリーンヘイブンは、魔境を制圧して得た新天地」
「誰の領地でもなかった場所ですね」
「ああ」
「それを、俺の領地として認めてほしい」
「承知いたしました」
おっさんは、続けた。
「それと、もう一つ条件があります」
「何でしょう?」
おっさんは、真剣な顔で言った。
「全てのスラムを、なくしてほしい」
「魔道具を、全てのスラムに配ってほしい」
「住民たちを、救ってほしい」
「それが、俺の条件です」
アルバートは、しばらく考えた。
そして――
「……分かりました」
「王に、伝えます」
「きっと、受け入れてくれるでしょう」
おっさんは、頷いた。
「頼みます」
◆ セシリアの体調
夜。
おっさんとセシリアが、部屋にいる。
セシリアは、ベッドで横になっている。
お腹が、大きい。
おっさんが、隣に座る。
セシリアのお腹を、優しく撫でる。
「……もうすぐだな」
「はい……」
セシリアは、少し不安そう。
「……コウタロウさん」
「ん?」
「私、ちゃんと産めるでしょうか……」
おっさんは、セシリアの手を握った。
「大丈夫だ」
「お前は、強い」
「必ず、産める」
「それに、リリアがいる」
「エリアスもいる」
「みんなが、お前を支えてくれる」
セシリアは、涙を流した。
「……ありがとうございます……」
おっさんは、セシリアを抱きしめた。
「……俺も、ずっと隣にいる」
「絶対に、守る」
セシリアは、おっさんに抱きつく。
「……はい……」
おっさんは、セシリアのお腹に話しかけた。
「聞いてるか?」
「もうすぐ、会えるな」
「父ちゃん、お前に会うのが楽しみだ」
「母ちゃんも、待ってるぞ」
「早く、出てこいよ」
セシリアは、微笑んだ。
「ふふ」
「きっと、聞こえてますよ」
おっさんも、微笑んだ。
「……だといいな」
◆ ゴードンと真理の新婚生活
一方――
ゴードンと真理は、新婚生活を楽しんでいた。
新しい家。
二人だけの家。
真理が、料理を作っている。
ゴードンが、帰ってくる。
「ただいま」
「おかえりなさい」
真理が、笑顔で迎える。
ゴードンは、真理を抱きしめた。
「今日も、疲れたな」
「お疲れ様です」
真理は、ゴードンにキスをした。
「ご飯、できてますよ」
「ありがとう」
二人は、一緒に食事をする。
幸せそうに。
ゴードンが言った。
「真理、幸せか?」
真理は、微笑んだ。
「はい」
「とっても幸せです」
「ゴードンさんと一緒にいられて」
ゴードンは、真理の手を握った。
「……俺も、幸せだ」
真理は、顔を赤くした。
「……えへへ……」
◆ リリアとエリアスの関係
診療所。
リリアとエリアスが、一緒に働いている。
最近、二人はさらに親密になっていた。
手を繋いで歩く。
顔を見合わせて微笑む。
抱きしめ合う。
完全に、恋人同士。
休憩時間――
エリアスが、リリアに言った。
「リリアさん、そろそろ……」
「結婚しませんか?」
リリア、驚く。
「え?」
「俺、リリアさんと一緒に暮らしたいです」
「家族になりたいです」
リリアは、涙を流した。
「……はい!」
「私も、エリアスさんと結婚したいです!」
エリアスは、リリアを抱きしめた。
「……ありがとう……」
リリアも、エリアスに抱きつく。
「……こちらこそ……」
二人は、長い間抱き合っていた。
新しい結婚。
◆ 街の夜
夜。
グリーンヘイブン。
静かな夜。
でも、温かい。
家々から、明かりが漏れている。
笑い声が聞こえる。
幸せな声。
おっさんとセシリアは、窓から街を見ている。
セシリアが、おっさんに抱きつく。
「コウタロウさん、素敵な街ですね」
「ああ」
「みんな、幸せそうです」
おっさんは、頷いた。
「……ああ」
「みんな、本当に幸せそうだ」
セシリアは、おっさんを見上げた。
「私も、幸せです」
おっさんは、セシリアにキスをした。
「……俺も、幸せだ」
セシリアは、お腹を撫でた。
「もうすぐ、この子が生まれます」
「そしたら、もっと幸せになりますね」
おっさんは、セシリアのお腹を撫でた。
「……ああ」
「もっと、幸せになる」
「家族が増える」
セシリアは、幸せそうに微笑んだ。
星空。
美しい星空。
希望が、輝いている。
グリーンヘイブンは、今日も平和だった。
みんなが、幸せだった。
新しい命が、もうすぐ生まれる。
新しい未来が、始まろうとしていた。
◆ 王都の決断
数日後――
王都。
国王エドワード三世が、宰相アルバートの報告を聞いていた。
「……康太郎殿は、爵位を受けた、と」
「はい」
「素晴らしい」
国王は、微笑んだ。
「それに、元の場所を明け渡し、完全にグリーンヘイブンに移住するとのこと」
「はい」
「なるほど」
国王は、少し考えた。
そして――
「よし」
「康太郎殿に、グリーンヘイブン男爵の称号を授ける」
「グリーンヘイブンを、正式な都市として認める」
「彼を、その領主とする」
アルバートは、深く頭を下げた。
「畏まりました」
国王は、続けた。
「バロン家との土地貸与契約を、解消させろ」
「康太郎殿は、元の場所を明け渡すとのこと」
「バロン伯爵には、適切な補償をする」
「魔道具の優先供給権でも与えればいい」
「承知いたしました」
「バロン伯爵にも、納得していただけるでしょう」
国王は、続けた。
「それと、康太郎殿の条件」
「全てのスラムをなくし、魔道具を配れ」
「住民たちを、救え」
「国として、全力で取り組む」
アルバートは、深く頭を下げた。
「畏まりました」
国王は、窓から外を見た。
「……康太郎殿は、真の勇者だ」
「魔境を制圧し、新天地を開拓した」
「多くの人々を救った」
「グリーンヘイブンが、大いに発展することを期待している」
国王は、微笑んでいた。
「この国は、変わる」
「康太郎のおかげで」
「スラムのない、平和な国になる」
「素晴らしいことだ」
(次回:第31話「誕生」に続く)




