第25話:それぞれの悩み
◆ おっさんの悩み
夜。
おっさんは、一人で星空を見上げていた。
懐から、遺骨の袋を取り出す。
妻と娘、そして息子の遺骨。
そっと触れる。
「……妻よ、娘よ、息子よ」
「俺は、今、悩んでいる」
おっさんは、少し考えた。
「セシリアのことだ」
「彼女は、俺のことが好きだ」
「分かってる」
「とっくの昔に、気づいていた」
おっさんは、ため息をついた。
「でも……なぜ、俺なんだ?」
「彼女ほどの女性なら、引く手あまただろう」
「年齢に見合った、立派な男性がいるだろう」
「なのに、よりによって……」
「こんなくたびれたおっさんを……」
おっさんは、拳を握りしめた。
「それに、俺はもともと妻子がいた」
「お前たちがいた」
「……誰かに言われるたびに、心が痛む」
「いっそのこと、はっきり言えば……」
「セシリアを、諦めさせれば……」
おっさんは、空を見上げた。
「でも……」
「俺は……」
◆ セシリアの抱擁
その時――
セシリアが、おっさんの背後から抱きしめた。
いつもと違う。
慈しむような抱き方。
温かい。
優しい。
おっさん、驚く。
「……セシリア?」
「コウタロウさん」
セシリアは、そっと言った。
「誰にでも、言えない悩みがあります」
「……」
「過去も、未来も」
「でも……」
セシリアは、おっさんをさらに強く抱きしめた。
「それでも私は、こうして……」
「コウタロウさんと一緒にいたいんです」
おっさんは、何も言えなかった。
セシリアは、続けた。
「コウタロウさんが、何を悩んでいるのか」
「分かっています」
「でも……」
「私の気持ちは、変わりません」
セシリアは、おっさんの背中に顔を埋めた。
「……私は、コウタロウさんが好きです」
「ずっと、ずっと……」
おっさんは、セシリアの手に、自分の手を重ねた。
「……セシリア」
「はい」
「……ありがとう」
セシリアは、微笑んだ。
「……はい」
二人は、しばらく黙っていた。
星空の下で。
静かな夜。
◆ リーナに相談
翌日――
おっさんは、リーナを呼び出した。
街の外れ。
二人きり。
リーナ「で、何? 改まって」
おっさんは、少し考えた。
「……セシリアのことなんだが」
リーナ「あー、やっぱりね」
「見てりゃ分かるわよ」
おっさんは、ため息をついた。
「……俺、どうすればいいんだ」
リーナは、真剣な顔で聞いた。
「あんた、セシリアのこと、どう思ってるの?」
おっさん「……好きだ」
リーナ「じゃあ、何が問題なの?」
「年の差だ」
「俺は52歳」
「セシリアは、まだ若い」
「それに……」
おっさんは、言葉に詰まった。
「俺には、妻子がいた」
リーナは、しばらく沈黙していた。
そして――
「馬鹿じゃないの?」
おっさん、驚く。
「……は?」
リーナは、真剣な顔で言った。
「年の差? そんなの関係ないわ」
「セシリアが選んだのよ、あんたを」
「彼女の意志を、尊重しなさいよ」
おっさん「でも……」
「それに、亡くなった奥さんのこと」
「大事にするのは、いいわ」
「でも、あんたはまだ生きてるのよ」
リーナは、おっさんを睨んだ。
「奥さんだって、あんたが幸せになることを」
「望んでるんじゃないの?」
おっさんは、何も言えなかった。
リーナは、続けた。
「問題は、あんたがセシリアを幸せにできるかどうかよ」
「で、できるの?」
おっさんは、少し考えた。
「……できる」
「俺は、セシリアを幸せにできる」
リーナは、微笑んだ。
「もう答え、出てるんじゃないの?」
おっさんは、驚いた。
「……」
リーナは、おっさんの肩を叩いた。
「あんた、素直になりなさいよ」
「セシリアは、待ってるわよ」
おっさんは、空を見上げた。
「……そうだな」
◆ リリアとエリアスからも
診療所。
おっさんが、様子を見に来た。
リリアとエリアスが、患者を治療している。
息がぴったり。
二人とも、笑顔。
おっさんは、微笑んだ。
(……いい雰囲気だな)
治療が終わった後――
リリアが、おっさんに話しかけた。
「コウタロウさん、最近、悩んでますね」
おっさん、驚く。
「……バレてるか」
エリアスも言った。
「セシリアさんのことですか?」
おっさん、さらに驚く。
「……なんで分かる?」
リリアは、微笑んだ。
「見てれば、分かります」
「お二人、お似合いです」
おっさん「でも、俺は……」
「年も離れてるし」
「それに、妻子がいた」
エリアスが言った。
「年の差なんて、関係ありません」
「大事なのは、お互いの気持ちです」
リリアも頷く。
「はい」
「コウタロウさんは、セシリアさんを幸せにできますか?」
おっさん「……できる」
リリアは、嬉しそうに微笑んだ。
「なら、大丈夫です」
「セシリアさんも、きっと幸せになれます」
エリアスも言った。
「それに……」
「亡くなった奥様も、きっと」
「コウタロウさんの幸せを、望んでいると思います」
おっさんは、涙を流した。
「……ありがとう」
「お前たち、いいこと言うな」
リリアとエリアスは、微笑んだ。
◆ ゴードンとの会話
夜。
おっさんは、工房にいた。
ゴードンが、魔道具を作っている。
おっさんも、手伝っている。
しばらく黙って作業していた。
そして――
ゴードンが言った。
「……どうした?」
「ん?」
「浮かない顔だな」
おっさんは、少し考えた。
「……セシリアのことなんだが」
ゴードン「ああ、やっぱりな」
「お前たち、見てりゃ分かる」
おっさんは、ため息をついた。
「俺、どうすればいいんだ」
ゴードンは、手を止めた。
おっさんを見る。
「お前、セシリアのこと、好きか?」
おっさん「……ああ」
「なら、それでいいだろ」
おっさん「でも……」
ゴードンは、真剣な顔で言った。
「お前、俺たちを救ってくれたよな」
「……ああ」
「スラムから、この街へ」
「絶望から、希望へ」
「お前のおかげで、俺たちは生きてる」
ゴードンは、続けた。
「でも、お前は自分を犠牲にしすぎだ」
「いつも、みんなのことばかり」
「自分のことは、後回し」
おっさん「……」
ゴードンは、おっさんの肩を叩いた。
「たまには、自分の幸せを考えろ」
「お前にも、幸せになる権利がある」
おっさんは、驚いた。
「……ゴードン」
ゴードンは、微笑んだ。
「セシリアは、いい女だ」
「お前を、ずっと支えてくれてる」
「そんな女性、他にいないぞ」
「……ああ」
「なら、答えは出てるだろ」
ゴードンは、おっさんの背中を押した。
「行け」
「セシリアのところに」
「お前の気持ちを、伝えろ」
おっさんは、しばらく考えた。
そして――
微笑んだ。
「……ありがとう、ゴードン」
「礼なんていらねえ」
「友達だろ」
おっさんは、頷いた。
「……ああ」
「友達だ」
おっさんは、工房を出た。
ゴードンは、おっさんの背中を見送った。
「……頑張れよ」
◆ 遺骨に語りかける
おっさんは、自分の部屋に戻った。
遺骨の袋を取り出す。
そっと触れる。
「……妻よ、娘よ、息子よ」
「みんなが、背中を押してくれた」
「リーナも、リリアも、エリアスも」
「ゴードンも」
おっさんは、涙を流した。
「俺は、セシリアが好きだ」
「彼女と、一緒にいたい」
「でも……」
「お前たちを、忘れたわけじゃない」
「お前たちは、ずっと俺の心の中にいる」
おっさんは、遺骨を抱きしめた。
「……許してくれ」
「俺は、前に進む」
「でも、お前たちのことは、忘れない」
「ずっと、心の中にいる」
おっさんは、遺骨を大事にしまった。
そして――
部屋を出た。
セシリアの部屋へ向かう。
◆ セシリアの部屋で
コンコン。
ノックする。
「……セシリア」
扉が開く。
セシリアが、顔を出す。
「コウタロウさん?」
「どうしたんですか?」
おっさんは、少し考えた。
そして――
「……話がある」
「入ってもいいか?」
セシリアは、少し驚いた顔をした。
でも、すぐに微笑んだ。
「……はい」
「どうぞ」
おっさんは、部屋に入った。
セシリアが、扉を閉める。
二人は、向かい合った。
おっさんは、セシリアを見た。
「……セシリア」
「はい」
おっさんは、深呼吸した。
そして――
「俺は……」
セシリアは、ドキドキしている。
おっさんは、真剣な顔で言った。
「俺は、お前が好きだ」
セシリア、目を見開く。
「……!」
おっさんは、続けた。
「ずっと、悩んでいた」
「年の差も、過去も」
「でも……」
「みんなが、背中を押してくれた」
「それに……」
おっさんは、セシリアの手を取った。
「お前と一緒にいたい」
「ずっと、一緒にいたい」
セシリアは、涙を流した。
「……コウタロウさん……」
おっさんは、真剣な顔で言った。
「俺と……一緒にいてくれるか?」
セシリアは、おっさんに抱きつく。
「……はい!」
「はい!」
「ずっと、待っていました!」
おっさんは、セシリアを抱きしめた。
「……ありがとう」
セシリアは、涙を流しながら、顔をすりすりする。
「コウタロウさん、大好きです……」
「ずっと、ずっと……」
おっさんは、セシリアの頭を撫でた。
「……俺も、お前が好きだ」
「ずっと、一緒にいよう」
セシリアは、幸せそうに微笑んだ。
「……はい!」
二人は、しばらく抱き合っていた。
静かな夜。
星空の下で。
新しい未来が、始まろうとしていた。
◆ 翌朝
翌朝――
おっさんとセシリアが、手を繋いで広場に現れた。
住民たち、驚く。
「あれ……!」
「リーダーとセシリアさんが……!」
「手を繋いでる……!」
リーナが、ニヤリと笑った。
「やっと、素直になったわね」
リリアとエリアスも、嬉しそう。
「良かったですね!」
ゴードンも、微笑んでいる。
「……おめでとう」
住民たちが、拍手する。
「おめでとうございます!!」
「リーダー! セシリアさん!!」
おっさんとセシリアは、照れくさそうに笑った。
「……ありがとう」
セシリアは、幸せそうに微笑む。
おっさんの腕に抱きつく。
「……私、幸せです……」
おっさんは、セシリアの頭に手を置いた。
「……俺も、幸せだ」
街は、祝福の雰囲気に包まれた。
新しいカップルの誕生。
希望が、さらに広がっていく。
(次回:第26話「新しい一歩」に続く)




