第23話:領地問題
◆ 貴族との対面
謁見室。
おっさんが、貴族と向かい合っている。
貴族は、50代の男性。
豪華な服。
バロン家の紋章。
「初めまして、康太郎殿」
「私は、バロン伯爵、フレデリック・フォン・バロンと申します」
おっさんは、頷いた。
「康太郎だ」
「で、何の用だ?」
バロンは、少し驚いた顔をした。
(……随分、無礼な男だな)
でも、すぐに傲慢な笑みに戻る。
「単刀直入に申し上げます」
「貴殿が街を作っているこの土地は、私の領地です」
おっさん、顔をしかめる。
「……領地?」
「そうです」
「この辺り一帯は、バロン家が代々治めてきた土地です」
「貴殿は無断で私の土地に街を作り、住み着いている」
バロンは、冷たく言った。
「地代を納めるか、統治権を渡すか、出て行くか」
「選びなさい」
おっさん、目を細める。
「……断る」
バロン、驚く。
「……何?」
おっさんは、冷静に言った。
「俺たちは、国王陛下から税金免除を認められた」
「それに、お前は何もしてないだろう」
◆ 交渉
バロンは、鼻で笑った。
「税金免除? それは知っている」
「だが、土地は別問題だ」
「地代は税金ではない」
おっさんは、首を振った。
「ここは元々、城の外のスラムだった」
「お前は、スラムを放置してた」
「何もしなかった」
「住民たちは、苦しんでた」
「死んでいく者もいた」
おっさんは、バロンを睨んだ。
「それなのに、街ができたら急に『俺の土地だ』?」
「都合が良すぎるだろ」
バロンは、何も言えなかった。
「……」
でも、すぐに傲慢な顔に戻る。
「どうあれ、法的には私の土地だ」
「文句があるなら、出て行くしかない」
おっさんは、少し考えた。
「……この土地を、譲ってくれないか」
バロンは、首を振った。
「それは無理だ」
「土地の譲渡は、国の決まりで禁じられている」
「貴族の領地を勝手に譲渡することはできん」
おっさん「……そうか」
「だが、貸すことはできる」
「貸す……?」
「そうだ」
バロンは、冷たく言った。
「地代を払えば、土地を貸してやる」
「ただし、統治権は貸さん」
「あくまで土地の使用権だけだ」
おっさんは、少し考えた。
そして――
深呼吸した。
(……譲渡は無理か)
(ということは、いずれ……)
(自分たちの土地を、手に入れないといけない)
(未開の地を、開拓するしかないのか……)
おっさんは、冷静に言った。
「……分かった」
「土地を借りる」
バロン、少し驚く。
「ほう……」
おっさんは、続けた。
「でも、地代は払わない」
「その代わり、別のものを提供する」
バロン、興味を示す。
「……別のもの?」
◆ おっさんの提案
おっさんが言った。
「地代は払わない」
「でも、魔道具を提供する」
バロン、驚く。
「魔道具……?」
「ああ」
おっさんは、真剣な顔で言った。
「俺たちは、魔道具を作れる」
「生活用の魔道具も、戦闘用の魔道具も」
「それを、定期的に提供する」
「お前の領地で使うもよし、売るもよし」
「かなりの利益になるはずだ」
バロンは、少し考えた。
「……魔道具……」
「その代わり、この土地を使わせろ」
「統治権は渡さない」
「俺たちが、自分たちで街を治める」
バロンは、考え込んだ。
(……魔道具か)
(噂では、かなり高値で取引されているらしい)
(それを定期的に手に入れられるなら……)
バロンは、決断した。
「……よかろう」
「魔道具を提供するなら、土地の使用を認める」
「ただし、条件がある」
おっさん「条件?」
「魔道具の供給が途絶えたら、即座に出て行ってもらう」
「それに、統治権は渡さないが、何か問題が起きたら私に報告すること」
おっさんは、少し考えた。
「……分かった」
おっさんは、ゴードンを呼んだ。
「ゴードン、魔道具を持ってこい」
「了解」
数分後――
ゴードンが、魔道具を持ってきた。
水を出す魔道具。
火を出す魔道具。
風を出す魔道具。
土を出す魔道具。
「これが、魔道具だ」
おっさんは、実演した。
水の魔道具を起動。
綺麗な水が出る。
バロン、目を見開く。
「……!」
次に、火の魔道具。
大きな炎が出る。
「これは……」
「すごい……」
「魔法使いでなくても、使えるのか……」
「ああ」
おっさんは、魔道具を止めた。
「生活用にも、戦闘用にも使える」
「それに、誰でも作れるように教えることもできる」
バロンは、真剣な顔で言った。
「……それは、本当に価値がある」
「では、どうする?」
バロンは、しばらく考えた。
そして――
「……承諾しよう」
「魔道具と、土地使用権の交換だ」
おっさんは、頷いた。
「分かった」
「では、契約書を作ろう」
◆ リーナとの会話
バロンが帰った後――
リーナが、おっさんの部屋に来た。
「コータロー、本当にいいの?」
「何が?」
「魔道具を、あんな傲慢な貴族に渡すなんて」
おっさんは、ため息をついた。
「……仕方ない」
「法的には、あいつの土地だ」
「ここで争っても、住民たちが困る」
リーナは、少し考えた。
「……でも、魔道具を渡し続けるのは大変よ」
「ああ」
「でも、今はこれしかない」
おっさんは、窓の外を見た。
街が広がっている。
住民たちが、幸せそうに暮らしている。
「……いずれ、別の場所に街を作る」
「え?」
「魔境を制圧すれば、奥に土地がある」
「そこに、新しい街を作る」
「そして、ここを返す」
リーナは、驚いた。
「……そんなこと、考えてたの?」
「ああ」
「今は、あの貴族との契約を守る」
「でも、いずれ自分たちの土地を手に入れる」
リーナは、微笑んだ。
「……さすがね」
「先のことまで、考えてる」
◆ 契約成立
数日後――
バロンとの契約書が完成した。
正式な契約。
土地の貸与契約。
地代の代わりに、魔道具を定期的に提供。
おっさんは、契約書にサインした。
バロンもサインする。
「これで、正式に契約成立だ」
バロンが言った。
「忘れるなよ」
「この土地は、あくまで私が貸しているだけだ」
「魔道具の供給が途絶えたら、即座に出て行ってもらう」
おっさんは、頷いた。
「分かってる」
バロンは、満足そうに帰っていった。
リーナが言った。
「……あの貴族、魔道具で儲けるつもりね」
「ああ」
「でも、いいの?」
おっさんは、頷いた。
「今は、これでいい」
「住民たちが、安心して暮らせる」
「それが一番大事だ」
リーナは、少し心配そうに言った。
「でも、ずっとこのままってわけにはいかないわよね」
「……ああ」
おっさんは、窓から外を見た。
「いずれ、俺たちの土地が必要だ」
「自分たちで所有できる土地が」
「どうするの?」
「……分からない」
おっさんは、真剣な顔で言った。
「でも、方法はあるはずだ」
「未開の地を、開拓するとか……」
リーナは、驚いた。
「未開の地……?」
「そんな場所、あるの?」
「……分からない」
「でも、探す」
「いつか、必ず」
リーナは、微笑んだ。
「……あんたらしいわね」
「先のことまで、考えてる」
◆ 魔道具の製作
おっさんとゴードンは、バロンに渡す魔道具を作り始めた。
生活用の魔道具。
戦闘用の魔道具。
様々な魔道具。
住民たちも、手伝う。
「魔石を、ここに配置してください」
「はい」
「回路は、こう組みます」
「分かりました」
みんなで、協力して作る。
数週間後――
50個以上の魔道具が完成した。
「……これだけあれば、当分は大丈夫だな」
ゴードンが言った。
「ああ」
「でも、定期的に作らないとな」
おっさんは、魔道具を見た。
「……あの貴族、これで儲けるんだろうな」
ゴードン「そうだろうな」
「でも、いいのか?」
おっさんは、頷いた。
「今は、これでいい」
「住民たちの安全が、最優先だ」
◆ 魔道具の納品
バロン家の使用人が来た。
魔道具を受け取りに。
おっさんとゴードンが、魔道具を渡す。
「これが、今月分だ」
使用人は、魔道具を確認する。
「……確かに」
「使い方は、説明書に書いてある」
「分かりました」
使用人は、魔道具を持って帰っていった。
ゴードンが、ため息をついた。
「……あの貴族、これを高値で売るんだろうな」
「だろうな」
「腹が立つな」
おっさんは、頷いた。
「……ああ」
「でも、今は我慢だ」
「いずれ、俺たちの土地を手に入れる」
◆ 夜の会話
夜。
おっさん、セシリア、リリアが、星空を見上げていた。
「コウタロウさん、大変でしたね」
セシリアが言った。
「あの貴族との交渉……」
おっさんは、頷いた。
「ああ」
「でも、住民たちは守れた」
リリアが言った。
「魔道具を作り続けるのは、大変ですね」
「ああ」
「でも、みんなで協力すれば、できる」
おっさんは、空を見上げた。
「……でも、これは一時的な解決だ」
セシリアが、心配そうに聞く。
「一時的……?」
「ああ」
「土地は、借りてるだけだ」
「いずれ、俺たちの土地が必要になる」
おっさんは、真剣な顔で言った。
「未開の地を、開拓するしかないかもしれない」
「でも、そんな場所……」
「……分からない」
「でも、きっとある」
「探せば、見つかるはずだ」
セシリアが、おっさんの腕に抱きつく。
「コウタロウさん、すごいです」
「もう次のことを考えてるんですね」
おっさんは、照れくさそうに笑った。
「いや、まだ何も決まってないけどな」
セシリアは、顔をすりすりする。
「でも、コウタロウさんなら、きっとできます」
おっさん、苦笑い。
「……お前の信頼が、重いな」
リリアは、二人を見て微笑んだ。
(……お二人、いつか……)
◆ セシリアの想い
その夜――
セシリアは、自分の部屋で考えていた。
(……コウタロウさん……)
(私、コウタロウさんが好き……)
(でも、コウタロウさんには……)
(亡くなった奥様がいる……)
セシリアは、少し悲しそうな顔をした。
(……私、どうすればいいんだろう……)
(このまま、一緒にいるだけでいいのかな……)
(それとも……)
セシリアは、考え込んだ。
でも――
(……今は、このままでいい)
(コウタロウさんの隣にいられるだけで)
(幸せだから)
セシリアは、微笑んだ。
(……いつか、伝えよう)
(私の気持ちを)
(でも、今じゃない)
(もう少し、待とう)
◆ おっさんの葛藤
一方――
おっさんも、自分の部屋で考えていた。
遺骨の袋を、手に持っている。
「……妻よ」
「俺は、今、幸せだ」
「セシリアと一緒にいて、幸せだ」
おっさんは、遺骨を見つめた。
「でも、お前を忘れたわけじゃない」
「お前は、俺の心の中に、ずっといる」
「娘と息子も」
おっさんは、少し涙を流した。
「……でも、俺は生きてる」
「まだ、生きてる」
「だから……」
おっさんは、空を見上げた。
「前に、進んでもいいのか?」
「セシリアと……」
おっさんは、考え込んだ。
(……まだ、答えが出ない)
(でも、いつか……)
(いつか、答えが出るかもしれない)
おっさんは、遺骨の袋を大事にしまった。
「……もう少し、時間をくれ」
◆ 未来への決意
おっさんは、部屋に戻った。
遺骨の袋を、手に取る。
「……妻よ」
「今日は、大変だった」
「傲慢な貴族と、交渉した」
「でも、住民たちは守れた」
おっさんは、遺骨を見つめた。
「俺は、まだ前に進んでる」
「みんなのために」
「そして……」
おっさんは、セシリアのことを思った。
「いつか、答えが出るかもしれない」
「俺の、新しい人生の答えが」
おっさんは、遺骨の袋を大事にしまった。
そして、窓から街を見た。
静かな夜。
でも、温かい。
希望が、広がっている。
おっさんは、微笑んだ。
「……明日も、頑張るか」
(次回:第24話「新しい出会い」に続く)




