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52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった  作者: よっしぃ@書籍化


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第19話:救えない者

 ◆ 症状の悪化


 翌日――


 ケンジの症状が、急激に悪化した。


「……はぁ……はぁ……」


 息が荒い。


 顔色が真っ青。


 手足が激しく震える。


 意識が朦朧としている。


「……くそ……体が……動かねえ……」


 おっさんが、セシリアを呼んだ。


「セシリア! 早く!」


「はい!」


 セシリアが駆けつける。


 診察する。


 セシリアの顔が、青ざめた。


「……これは……」


「どうした?」


「魔力中毒が……かなり進行しています……」


「治療できるか?」


 セシリアは、治療の魔道具を使った。


 光が走る。


 でも――


「……効きません……」


「何?」


 セシリアは、涙を流した。


「治療が……効かないんです……」


「進行しすぎて……」


 リリアも駆けつける。


 一緒に治療を試みる。


 でも――


「……ダメです……」


「私の治療も、効きません……」


 おっさんは、拳を握りしめた。


「……くそ……」



 ◆ 医師を呼ぶ


 おっさんは、王都から医師を呼んだ。


 数日後――


 王都の医師が到着。


 ケンジを診察する。


「……これは……」


「どうなんだ?」


 医師は、首を振った。


「手遅れです」


「手遅れ……?」


「はい。魔力中毒が、ここまで進行すると……」


「もう、治療では回復しません」


 医師は、続けた。


「体が、自分の筋肉や骨を削って、魔力に変えています」


「内臓も、損傷しています」


「このままでは……」


 おっさん「このままでは……?」


「寝たきりになります」


「そして、いずれ……」


 医師は、言葉に詰まった。


 おっさんは、ケンジを見た。


 ケンジは、意識が朦朧としている。


「……俺……勇者なのに……」


 おっさんは、ため息をついた。


「……そうか」



 ◆ 寝たきり状態


 数日後――


 ケンジは、完全に寝たきりになった。


 ベッドで横になっている。


 意識はある。


 でも、体が動かない。


 魔法も使えない。


 ただ、天井を見ているだけ。


「……くそ……」


「……くそ……」


 おっさんが、部屋を訪ねる。


「……調子はどうだ」


 ケンジ「……最悪だ……」


「体が……全然動かねえ……」


 おっさんは、椅子に座った。


「生活を改めれば、少しは回復するかもしれない」


「今から?」


「ああ」


「……遅いだろ……」


「遅くない」


 おっさんは、真剣な顔で言った。


「今からでも、変われる」


「体を大事にすれば、少しずつ回復するかもしれない」


 ケンジは、天井を見た。


「……うるせえ……」


「もういい……」


「ほっといてくれ……」


 おっさんは、しばらく沈黙していた。


 そして――


「……分かった」


 おっさんは、立ち上がった。


「でも、飯は持ってくる」


「食べろ」


 ケンジは、何も言わなかった。



 ◆ おっさんの挫折


 廊下。


 セシリアが、おっさんを待っていた。


「コウタロウさん……」


 おっさんは、壁にもたれかかった。


「……俺には、無理だった」


「コウタロウさん……」


「あいつを、救えなかった」


「どれだけ説得しても」


「どれだけ諭しても」


「あいつは、変わらなかった」


 おっさんは、拳を握りしめた。


「……俺の力が、足りなかった」


 セシリアが、おっさんの手を握る。


「違います」


「コウタロウさんは、十分頑張りました」


「でも……」


「勇者が、変わろうとしなかっただけです」


「コウタロウさんのせいじゃありません」


 リリアも駆けつける。


「はい」


「変わるには、本人の意志が必要です」


「本人が変わろうとしなければ……」


「誰も、救えません」


 おっさんは、空を見上げた。


「……そうだな」


「人は、変われる」


「でも、変わるには、本人の意志が必要だ」


「俺が、どれだけ頑張っても」


「本人が変わる気がなければ……」


「救えない」


 おっさんは、悲しそうに笑った。


「……これが、現実か」


 セシリアが、おっさんを抱きしめる。


「でも、コウタロウさんは頑張りました」


「それだけで、十分です」


 おっさんは、セシリアの頭に手を置いた。


「……ありがとう」



 ◆ 住民たちの反応


 広場。


 住民たちが、ケンジの末路について話している。


「勇者、寝たきりになったんだって……」


「あんなに強かったのに……」


「自分を大事にしなかったから……」


「人を傷つけて、自分も壊した……」


「怖いな……」


 リーナが言った。


「自業自得よ」


「でも、教訓にはなるわね」


 ゴードンも頷く。


「ああ」


「体を大事にしないと、ああなる」


「人を傷つけると、自分も壊れる」


 住民たちは、真剣な顔で聞いている。


「私たちは、ああならないようにしないと……」


「自分の体を、大事にしないと……」


「人を、大事にしないと……」


 リーナが言った。


「勇者は、反面教師ね」


「意図せず、私たちに教訓を与えた」



 住民たちは、自分の生活を見直し始めた。


 無理をしない。


 体を大事にする。


 休む時は、ちゃんと休む。


 人を傷つけない。


 優しくする。


 ケンジの末路が、街の人々に大きな影響を与えた。



 ◆ おっさんの葛藤


 夜。


 おっさんは、一人で星空を見上げていた。


(……俺には、救えなかった)


(王女は、救えた)


(セシリアも、リリアも、救えた)


(でも、勇者は……)


(救えなかった)


 おっさんは、ため息をついた。


(……人には、救える人と、救えない人がいる)


(それを、受け入れるしかないのか……)


 セシリアが、隣に来た。


「コウタロウさん」


「……ん?」


「考え込んでますね」


 おっさんは、笑った。


「バレたか」


 セシリアは、おっさんの腕に抱きつく。


「コウタロウさんは、優しすぎます」


「……そうか?」


「はい」


「だから、救えなかったことを、悔やんでいる」


 セシリアは、顔をすりすりする。


「でも、コウタロウさんは十分頑張りました」


「誰も、コウタロウさんを責めません」


 おっさんは、セシリアの頭に手を置いた。


「……ありがとう」


 リリアも、駆けつける。


「コウタロウさん!」


「どうした?」


「王都から、手紙が届きました!」


「手紙?」


 リリアは、手紙を差し出した。


「王女様からです!」



 ◆ 王女からの手紙


 おっさんは、手紙を開いた。


 読む。


「コウタロウさん


 赤ちゃんが生まれました。

 女の子です。

 名前は、ホープ(希望)とつけました。


 とても可愛いです。

 よく笑います。

 私を見ると、手を伸ばしてきます。


 毎日、大変ですが、幸せです。

 この子を見ていると、頑張ろうと思えます。


 コウタロウさんのおかげで、私は変われました。

 本当に、ありがとうございます。


 いつか、この子を連れて、会いに行きます。


 王女より」


 おっさんは、手紙を読み終えた。


 微笑んだ。


「……良かった」


 セシリアが聞く。


「何ですか?」


「王女が、母親になったらしい」


「本当ですか!?」


 セシリアとリリアが、喜ぶ。


「良かったですね!」


「赤ちゃん、会いたいです!」


 おっさんは、手紙を大事にしまった。


「……救えない人もいる」


「でも、救える人もいる」


 おっさんは、空を見上げた。


「それで、いいんだ」



 ◆ ケンジのその後


 数ヶ月後――


 ケンジは、相変わらず寝たきりだった。


 意識はある。


 でも、体が動かない。


 おっさんは、毎日食事を持っていく。


「食え」


 ケンジ「……」


「食わないと、回復しないぞ」


 ケンジは、少し食べる。


 でも、すぐに諦める。


「……もういい……」


 おっさんは、ため息をついた。


「……お前、本当に……」


 ケンジが、小さな声で言った。


「……なんで……」


「ん?」


「なんで、俺に飯を持ってくるんだ……」


 おっさんは、少し考えた。


「……見捨てられないからだ」


 ケンジ「……は?」


「お前は、屑だ」


「多くの人を傷つけた」


「許せないことをした」


 おっさんは、続けた。


「でも……」


「それでも、見捨てられない」


「お前も、人間だから」


 ケンジは、何も言わなかった。


 ただ、涙を流した。


「……くそ……」


 おっさんは、部屋を出た。



 ◆ 希望


 街は、さらに発展していた。


 診療所が繁盛している。


 市場が賑わっている。


 学校で、子供たちが学んでいる。


 畑が、豊かに実っている。


 住民たちの顔が、明るい。


 平和な日々。



 おっさんは、街を見渡した。


(……救えない人もいる)


(でも、救える人もいる)


(この街の人々は、救えた)


(王女も、救えた)


(赤ちゃんも、生まれた)


(それで、いいんだ)


 セシリアが、隣に来た。


「コウタロウさん」


「ん?」


「私、幸せです」


 セシリアは、おっさんに抱きつく。


「この街で、みんなと暮らせて……」


「コウタロウさんと一緒にいられて……」


 セシリアは、顔をすりすりする。


 おっさん、笑った。


「……俺も、幸せだよ」


 リリアも、駆けつける。


「コウタロウさん! セシリアさん!」


「患者さんが、お礼の品を持ってきてくれました!」


 嬉しそうに報告する。


 おっさんは、二人を見た。


(……俺には、守るべき人がいる)


(この街の人々)


(セシリア、リリア)


(みんな)


(だから、前を向いて進もう)


 おっさんは、空を見上げた。


(……妻よ、娘よ、息子よ)


(俺は、また生きる意味を見つけた)


(見守っていてくれ)



 ◆ 王女の成長


 数ヶ月後――


 王女が、赤ちゃんを連れて、新しい街を訪れた。


 馬車で到着。


 護衛に守られている。


 でも――


 王女の顔は、明るい。


 笑顔がある。


 赤ちゃんを抱いている。


「コウタロウさん!」


 おっさんが出迎える。


「よく来たな」


「はい!」


 王女は、赤ちゃんを見せた。


「この子が、ホープです」


 小さな赤ちゃん。


 よく笑っている。


 おっさんに手を伸ばす。


 おっさんは、赤ちゃんを抱いた。


「……可愛いな」


 赤ちゃんが、笑う。


 おっさんも、笑った。


「よく笑う子だな」


 王女「はい。いつも笑ってます」


 セシリアとリリアも、駆けつける。


「可愛い!」


「赤ちゃん!」


 二人は、赤ちゃんを見て、喜んでいる。


 王女は、おっさんを見た。


「コウタロウさん、本当にありがとうございました」


「あなたのおかげで、私は変われました」


「母親になれました」


 おっさんは、微笑んだ。


「いや、お前が頑張ったんだ」


「俺は、少し手を貸しただけだ」


 王女は、涙を流した。


「……ありがとうございます」



 おっさんは、赤ちゃんを見た。


(……希望か)


(いい名前だ)


(この子が、幸せに育ちますように)



 住民たちも、赤ちゃんを見に来た。


「可愛い!」


「王女様の赤ちゃん!」


 みんな、笑顔。


 温かい雰囲気。



 おっさんは、空を見上げた。


(……救えない人もいる)


(でも、救える人もいる)


(希望は、ある)


(それで、いいんだ)



(次回:第20話「新しい未来」に続く)

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