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52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった  作者: よっしぃ@書籍化


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第10話:移転の決断

 ◆ 勇者の休養


 城の医務室。


 勇者ケンジが、ベッドで寝ている。


 医師「しばらく休んでください」


「……分かったよ」


 ケンジは、仕方なく休養することにした。


 数日間、食べて、寝て。


 そして――


「……おお、体が軽い!」


 ケンジは、立ち上がった。


「やっぱり、疲れてただけだったんだ!」


「俺、完全に回復したぜ!」


 医師「勇者様、まだ安静に……」


「うるせえ! 俺はもう大丈夫だ!」


 ケンジは、医務室を出た。


 医師は、不安そうに見送った。


(……本当に大丈夫なのか?)



 ◆ さらに傍若無人に


 ケンジは、城内を歩いた。


「ああ、やっぱり俺は最強だな!」


「ちょっと休んだだけで、完全復活!」


 侍女たちが、怯えて避ける。


「おい、お前」


 ケンジが、侍女を呼び止める。


「ひっ!」


「今夜、俺の部屋に来い」


「も、申し訳ございません……」


「断るのか?」


 ケンジが、侍女の腕を掴む。


「いやああ!」


 侍女が悲鳴を上げる。


 衛兵が駆けつける。


「勇者様、お止めください!」


 ケンジ「は? 俺は勇者だぞ?」


「それでも……!」


「チッ、うるせえな」


 ケンジは、侍女を突き飛ばした。


 侍女が倒れる。


「……つまんねえ」


 ケンジは、去っていく。



 ◆ 聖女を要求


 その夜――


 ケンジは、王に言った。


「なあ、聖女を俺の部屋に呼べよ」


 王、顔をしかめる。


「……何の用だ」


「体を診てもらいたい」


「聖者を呼ぼう」


「いや、聖女がいい」


 ケンジは、にやりと笑った。


「若い女の方が、癒されるだろ?」


 王は、拒否した。


「ダメだ」


「は? なんで?」


「聖女は、まだ17歳だ」


「17歳? いい年じゃねえか」


「お前には、近づけさせない」


 ケンジ、怒る。


「俺は勇者だぞ!?」


「それでも、ダメだ」


 王は、強い口調で言った。


「聖女は、お前を恐れている」


「……チッ」


 ケンジは、舌打ちした。



 ◆ 男性の聖者が来る


 翌日――


 医務室に、聖者が来た。


 40代の男性。


 真面目そうな顔。


「勇者様、診させていただきます」


 ケンジは、不機嫌そうに言った。


「……お前、男じゃねえか」


「はい」


「聖女はどうした?」


「聖女様は……お忙しいとのことで……」


「嘘つけ。俺を避けてんだろ」


 聖者、何も言えない。


 ケンジは、怒鳴った。


「帰れ! お前なんかに診てもらいたくねえ!」


「しかし……」


「帰れって言ってんだろ!!」


 ケンジは、聖者を突き飛ばした。


 聖者が倒れる。


「出てけ!!」


 聖者は、慌てて部屋を出た。


 ケンジは、一人になった。


「……くそ」


「あのガキ、絶対に許さねえ……」



 ◆ スラム(セシリアの過去)


 一方、スラム。


 おっさんとセシリアが、夜空を見上げていた。


「なあ、セシリア」


「はい?」


「お前、王都を追放された理由……詳しく聞いてもいいか?」


 セシリアは、少し寂しそうに笑った。


「……話しますね」


 セシリアは、静かに語り始めた。


「私が聖女だった頃……」


「下水の管理をしていた部下がいました」


「ある日、その部下が……魔道具を暴走させてしまったんです」


 おっさんは、頷いた。


「それで?」


「部下は、パニックになって……」


「私に助けを求めてきました」


「私は、何とかしようと……」


「魔道具を止めようとしました」


 セシリアは、少し震えた。


「でも……」


「魔道具が、暴発しました」


「……!」


「私は、吹き飛ばされて……」


「体中、ボロボロになりました」


 おっさんは、拳を握りしめた。


「……そうか」


「王都は、私を治療してくれませんでした」


「治療してくれなかった……?」


 セシリアは、頷いた。


「『治療するより、新しい聖女を育てた方が早い』と」


「だから、私は捨てられました」


「下水に、廃棄されました」


 おっさんは、怒りで震えた。


「……ふざけんな」


「コウタロウさん……」


「お前は、部下を助けようとしただけだろ」


「それなのに、捨てられた……」


 おっさんは、セシリアの肩を抱いた。


「もう、大丈夫だ」


「俺が、守る」


 セシリアは、涙を流した。


「……ありがとうございます」



 ◆ セシリア、甘える


 その夜から――


 セシリアは、さらに甘えるようになった。


 おっさんの顔に、顔をすりすりするようになった。


「コウタロウさん……」


 すりすり。


 おっさん、固まる。


(……え? 何? これ?)


「コウタロウさん、温かいです……」


 すりすり。


 おっさんの理性が、危ない。


(……ヤバい)


(これは、ヤバい)


(52歳のおっさんでも、限界がある)


「な、なあ、セシリア」


「はい?」


「顔をすりすりするのは……」


「ダメですか?」


 セシリアが、上目遣いで見る。


 おっさん、KO。


(……無理だ)


(拒否できない)


「……好きにしろ」


「はい♪」


 セシリア、嬉しそうにすりすり。


 おっさん、天井を見上げた。


(……俺の理性、もう限界だ)


(妻よ……すまない……)


(でも、俺も男だ……)



 ◆ リーナとゴードンの反応


 地下倉庫。


 リーナが、おっさんとセシリアを見て、呆れた。


「あんたたち……」


 セシリアが、おっさんの腕に抱きついている。


 顔をすりすりしている。


 おっさん、諦めた顔。


「……言うな」


 リーナは、笑った。


「もう、好きにしなさい」


 ゴードンも、笑っている。


「若いっていいな」


 おっさん「……俺、52歳だぞ」


「心は若いってことだ」


 リーナが言った。


「で、話があるんでしょ?」


 おっさんは、真面目な顔になった。


「ああ」



 ◆ 移転の決断


 おっさんは、地図を広げた。


「王都の動きが、怪しい」


 リーナが頷く。


「ええ。監視が厳しくなってるわ」


「このままじゃ、いつか襲われるかもしれない」


 おっさんは、地図の一点を指差した。


「……移転する」


「移転?」


 ゴードンが聞く。


「ああ。王都から離れた場所に、新しい街を作る」


 リーナは、驚いた。


「そんなこと、できるの?」


「魔道具があれば、できる」


 おっさんは、地図の一点を指差した。


「ここだ」


「……魔物の巣窟じゃない」


「ああ。だから、誰も近づかない」


「逆に言えば、王都の目が届かない」


 ゴードンが言った。


「魔物を、どうする?」


「一掃する」


「一掃……?」


「ああ。スラムの住民が、魔道具で魔物を倒す」


「そして、壁を築いて、新しい街を作る」


 リーナは、頷いた。


「……なるほどね」


「それに……」


 おっさんは、真剣な顔で言った。


「下水から離れれば、魔石の秘密も守られる」


「全員の安全につながる」


 3人は、顔を見合わせた。


 そして――


「やろう」


「ああ」



 ◆ 住民への説明


 広場で、住民たちに説明。


「王都の動きが怪しい」


「いつか、襲われるかもしれない」


「だから、移転する」


 住民たち、ざわつく。


「移転……!?」


「どこに……?」


 おっさんは、地図を見せた。


「ここだ。魔物の巣窟だった場所」


「魔物の巣窟!?」


「魔道具で、魔物を一掃する」


「そして、壁を築いて、新しい街を作る」


 住民たち、不安そう。


「本当に、できるんですか……?」


 おっさんは、頷いた。


「できる。俺たちには、魔道具がある」


「それに……」


 おっさんは、住民たちを見渡した。


「俺たちには、仲間がいる」


 住民たち、顔を見合わせる。


 そして――


「分かりました!」


「やりましょう!」


「新しい街を作りましょう!」



 ◆ 王都の様子


 一方、王都では――



 数週間後。


 勇者ケンジが、魔物退治から戻ってきた。


 でも――


 ボロボロだった。


 服は破れ、血まみれ。


「はぁ、はぁ……」


 息が荒い。


 顔色が悪い。


 手が震える。


 侍女「勇者様! 聖女様を呼びます!」


「ああ……頼む……」


 でも――


 聖女は、来なかった。


「聖女様は……来られないと……」


「怖がっておられるとか……」


 ケンジ、怒る。


「は? なんで来ねえんだ!?」


「勇者様が、以前……」


「うるせえ! 呼べ! 今すぐ呼べ!!」


 でも、聖女は拒否した。


 17歳の少女が、勇者を恐れている。


「じゃあ、聖者を……」


「いらねえ! 男はいらねえ!!」


 ケンジは、ボロボロのまま、ベッドで切れていた。


「くそ……くそ……!」


「あのガキ……!」


「絶対、許さねえ……!」


 医師が、応急処置をする。


 数日後――


 ケンジは、また回復した。


 そして――


 さらに暴れ始めた。



 ◆ 夜


 スラム。


 おっさんは、夜空を見上げた。


(……明日から、移転の準備を始めるか)


(新しい街……)


(みんなが、安全に暮らせる場所……)


 セシリアが、隣に来た。


「コウタロウさん、何を考えているんですか?」


「未来のことを」


「未来……」


 セシリアは、微笑んだ。


「コウタロウさんと一緒なら、どんな未来でも大丈夫です」


 おっさんは、セシリアの頭に手を置いた。


「……ありがとう」



 ◆ 就寝


「じゃあ、寝るか」


「はい」


 おっさんとセシリアは、一緒の部屋で寝ることになった。


 別々の布団。


 でも――


 数時間後。


 セシリアが、おっさんの布団に入って抱きついていた。


 顔をすりすりしている。


 おっさんは、もう何も言わなかった。


(……もう、これが日常だ)


(俺の理性、本当に限界だ……)



 翌朝――


 チュン、チュン。


 おっさんが目を覚ますと、またセシリアが抱きついていた。


 顔をすりすりしている。


「……やっぱりな」


 おっさんは、もう何も感じなかった。


(……完全に日常だ)


 セシリアが目を覚ます。


「おはようございます、コウタロウさん♪」


「……おはよう」


 おっさんは、諦めた顔で答えた。



(次回:第11話「新しい街」に続く)

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