赤い服のおじさん。
「そろそろ、バイトの人が来る時間よね」
「はい」
「⋯だとしたら、あの人かな?」
「⋯そうかもしれません」
今日はコンビニ前のスペースでクリスマスケーキを売る。でも、人数が足りないから今日だけ臨時のバイトを募集した。なんとしても来てもらうために経験、年齢、性別の指定はしていない。だから今、店内を覗いている人がそうかもしれない。今日に合わせてなのか、赤いセーターを着ている、60代くらいのおじさんだ。
「あの赤い人、店の中に入ってきませんね」
「声をかけるべきかな?」
「そうですね。どうしていいのかわからないのかもしれませんし」
「⋯ちょっと行ってくるか」
外に出て、店内をのぞいているおじさんに声をかけた。
「あの、アルバイトにこられた方ですか?」
「ん?」
おっと、違った?お客様だったかな?
「今日のアルバイトの方ではないですか?」
「ん?」
あれ?思いっきり後ろを見ているぞ?
「ええと、赤いセーターの貴方に聞いてるんですけど⋯」
「赤いセーター?」
え、それ違うの?!
「赤いのは俺だな。仕事ってなんだ?」
「このコンビニのアルバイトです。違いましたか?」
「コンビニ?仕事?やるのか?」
「応募された方では⋯?」
「応募?したのか?」
「違うんですかねぇ?!」
かみあってるようで、かみあってない会話に思わず声が大きくなってしまった。
「それで?何するんだ?」
「ええと、ケーキの販売の仕事です⋯」
「ケーキ??」
「はい。クリスマスケーキです」
「なんだ、それ?」
「え?」
⋯⋯⋯⋯え?
「えぇと、あの⋯」
どうにか、続く言葉を話そうとしていたら⋯。
「ちょっと!とよおちゃん!」
「ん?なんだ?」
「なんだ?じゃないよ!ケーキ買ってきてって言ったでしょ?!」
「ケーキ??」
「えぇ?!」
赤いセーターのおじさんに、30代くらいの女性が話しかけた。娘さんだろうか?
「もう!あ、お店の人ですか?このケーキください!」
「え?⋯あ、はい⋯」
お客様だったんだ?
「これがケーキなのか?」
「昨日も教えたじゃん?!」
「そうなのか?」
「そうだよ!」
「知らねぇな」
「んもぅ⋯」
「はい、こちらのケーキをどうぞ」
「とよおちゃん、ほら受け取って」
「何をだ?」
「だから、ケーキだよー」
「ケーキ??」
「んもぅ⋯」
結局、ケーキは女性が受け取った。去っていくのを眺めていると、いつものバイトが近づいてきた。
「⋯店長、今日の臨時の人は来ないってことっすかね」
「そうかもね⋯」
なんだったの⋯。




