春の領域者・春星
誤挿入がありましたので修正しています。
瘴気を裂く雷鳴が、夜空を奔った。
結界の境目に立つ影――桜色のセミロングを靡かせる人物。
その姿は、少女のようであり、少年のようでもある。
「春星、前に出すぎるな。瘴気が濃い」
水色の髪をなびかせた青年が、鋭い声で呼びかけた。
「僕の領域に無断で入ろうなんて、いい度胸じゃん」
桜色の瞳に稲光を宿し、春星は槍を高く掲げる。
「降り注げ――雷よ! 我が敵を穿て!!」
春雷槍が空を裂いた瞬間、夜空一面に桜色の稲光が奔った。
次の瞬間、天地を覆うように無数の雷が降り注ぎ、瘴気の群れを一掃する。
雷は完全には消えない。
地を這い、枝葉を伝い、夜気を焦がして残響を放つ。
ぱちり、ぱちり――。
桜色の残光が辺りに散らばり、春星の髪先でも小さな火花が弾けた。
春星は気にする様子もなく、槍を肩に担ぎ息をつく。
「……っと。雑魚は片付いたな」
「春星、大元はまだ逃げているようですわ」
夜の静寂に溶け込むように、柔らかな声が響いた。
桜色の髪をなびかせた美しい女性が立ち、白い指先で遠くを指し示す。
「そちらを叩かないと、無限に出続けますわよ」
「分かってるよ。でも、これぐらい掃除しとかないと見えないんだ。
僕は秋や夏みたいな眼を持ってないからね」
春星は唇を尖らせ、桜に言い返した。
「春星よ……」
低く落ち着いた声が背後から響く。
水色の髪を揺らす青年――ジョアンが、深いため息とともに現れた。
「いくら我の力がある上に、混ざり者のアドバンテージがあっても危険だ。
神器がある程度守ってくれるとはいえ、万能ではないのだぞ」
「えぇ、その通りですわね」
桜は袖で口元を隠し、涼やかに笑う。
「この間の検診でも秋に怒られたばかりですし……
まあ、私、うっかり冬にお話してしまいそうですわねぇ」
「っ……!?やめろそれ!!!」
春星の顔がみるみる青ざめ、頭を抱え込む。
「秋ならまだしも、冬にまで知られたら……!もう絶対怒られるじゃん!!!」
「……やれやれ。我の契約者は本当に手がかかる」
ジョアンはこめかみを押さえ、苦々しく呟いた。
「わかったよ!もうやるってば!」
春星は春雷槍を構え直し、前方の闇を睨みつけた。
――闇の奥から、ぬるりと瘴気がうねった。
まるで生き物のように形を変え、無数の影が蠢く。
だが、それらは先ほどまでの群れとは違った。
――中心に、濃く、重く、禍々しい気配。
それは瘴気そのものが凝り固まり、ひとつの「核」となった存在だった。
夜気が凍り付くような圧に、木々が軋み、足元の大地がざわめく。
「出てきやがったな……」
春星は低く呟き、槍を構え直す。
「あらあら、醜く肥えていますわねぇ」
桜は微笑みながらも、瞳の奥で冷たい光をきらめかせる。
「悪き魂を宿す器にもなりきれぬ、半端な瘴気だ」
ジョアンは水を弾丸のように作り出していた。
雷鳴が再び夜空を裂き、戦いは幕を開ける。
桜の花が伸ばされる触手を弾き、ジョアンの水が弾かれた触手を切断していく。
「雑魚が僕の領域に侵入なんて夢見てんじゃねぇよ!」
春星が春雷槍を振り下ろす。
瞬間、桜色の稲光が奔り、核を呑み込んだ。
轟音と閃光が夜を裂き、瘴気は悲鳴を上げる間もなく霧散する。
「はぁ、やっと終わったぁ。僕、お腹空いた。ご飯食べる前に出て来ちゃったんだもん」
春星は春雷槍を放すと、それは光の粒となって夜気に溶けて消えていった。
「あらあら、それなら秋に夜食を頼みましょうか」
桜はころころと笑い声を響かせる。
「寝る前だ、重いものは避けろ。明日が辛いぞ」
ジョアンは渋い声で注意する。
そんな掛け合いが暗い夜道に溶けていく。
戦いを終えた守護者と精霊達は、いつもの日常へと帰っていった。
始まりました、連載!
いや、これの構想練ってから五年以上多分かかってる・・・!!!
ぜひ楽しんで読んでいただけたらと思います。
余談ですが
桜は、春の領域の契約精霊です。
領域の守護者になる上で絶対契約する春の精霊なのですが、桜の精霊です。
ジョアンは、水の精霊で、春の領域の中で出会った精霊です。




