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春星が遊郭にいる頃、暦の館では未だ会議が続いていた。
しかし、妖が目を覚まさない今、焦燥と苛立ちだけが場を支配している。
時計を一瞥した竜胆が、静かに立ち上がった。
「……様子を見てきます。」
そう告げて部屋を出る。その背を、紅葉が無言で追った。
残された者たちの間に、沈黙が降りた。
シオやリンは落ち着かず、何度も視線を交わしてはそわそわと手を動かす。
マナツは、膝に肘を乗せて俯き、不機嫌そうに眉を寄せていた。
イヴェールはただ、静かに祈っていた。
(春……どうか、どうか無事でいてくれ)
胸の奥からせり上がる凍えるような焦りが、全身を締めつける。
血の気が引いて、指先の感覚が薄れていく。
大切なものが、知らぬ場所で、知らぬうちに――また消えてしまうかもしれない。
「……また、俺は失うのか。」
小さく漏れた独白。
その声に気づいたのか、シオもリンもマナツも、揃って顔を上げた。
気遣わしげな視線がイヴェールを包むが、彼の目はどこにも焦点を結ばなかった。
その時だった。
「――目が覚めましたよ。」
静まり返っていたリビングに、竜胆の声が響いた。
その一言が、張りつめていた空気を弾けさせる。
ばっと竜胆の方を振り向いた守護者たちは、
ほとんど同時に椅子を鳴らして立ち上がり、勢いよく詰め寄った。
「おきたの!?」「話せる!?」
焦る声が重なり、部屋の緊張が一気に変わる。
竜胆は苦笑しながらも、二人の頭を軽く撫でてやった。
「えぇ。長時間は厳しいかもしれませんが――今なら話が聞けるはずです。
妖なんて、診察も治療も初めてですよ。まったく、心臓に悪いです。」
へらりと笑うその顔に、ようやく一筋の希望が灯った。
さぁ、目覚めました。
どんな展開になっていくのでしょうか。
それはそうと更新遅くすみません。
難産でした・・・・!
緊迫したシーンて難しいですねぇ。
こそこそ話ですが、竜胆も流石に妖の診察なんて初めてみたいですね。




