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プロローグ
遥か昔、この地はただひとつの国であった。
春は芽吹きを、夏は炎を、秋は実りを、冬は静寂を――。
四季を巡らす守護者たちの手によって、世界は絶え間なく廻っていた。
けれど、人の心に宿る尽きぬ欲望は、やがて形を持つ。
それが「悪きもの」。
悪心と災厄の化身にして、国を蝕む影であった。
悪きものは守護者たちの絆を断ち切り、四季は引き裂かれた。
春は春に、夏は夏に、秋は秋に、冬は冬に――。
かつて一つであった調和は崩れ、国は四つの領域へと分かたれてしまった。
幾多の困難を超えて、守護者たちは力を合わせ、ついには悪きものを次元の狭間に封じた。
だが失われた調和は戻らず、四季は今もなお、それぞれの領域に閉ざされたままである。
……それが、現代へと至る、この国の始まりの物語であった。
そして、現代――。
再び動き出す世界に、四人の守護者が姿を現す。
桜雷を纏いし雷槍の担い手、春星。
烈火と潮を背負う太陽の娘、シオ。
誠実なる医師、竜胆。
白き剣を振るう退役少将、イヴェール。
後に歴代最強と謳われる――
四季の守護者たちである。