"魔女狩り"
悠帆は近づいてきた偶冥に対して拳銃を向けていた。
「ほう…小僧、世界政府である俺に対して銃を向けるとは…いい度胸だな…しかし、経験が浅いみたいだな…?手が震えてるぞ」
「うるさい…」
「まぁ…その程度で我々が引くと思うな」
偶冥は銃を向けられているなんてお構い無しに悠帆たちに近づいてきた。
「来るな!」
パァン!
悠帆は偶冥に向けて銃を撃った。
「ヒョイッと!」
「…!」
しかし、放たれた弾丸は予想外の末路をたどった。タイタンが、持っていた箸で弾丸をつまんで止めたのだ。
「タイタン…止めなくてもいいと毎度言っているだろ…」
「偶冥さん…それボディーガードに言うセリフじゃなくないですか…?」
タイタンがそういった直後、タイタンの目が燃えた。いや、正確に言えば、目の周りに炎のようなエフェクトのようなものが現れた。そして、瞳の中に『暴食』という文字が浮かび上がってきた。
「…!?…あれは何…!?」
メイコはそれを見て混乱していた。しかし悠帆とキセノンはあたかも『当然のことだ。けどやばいぞ…』みたいな表情をしていた。
フーフー…あーむ…!ハフハフ!…ゴクン!
「あっつ!」
タイタンはつまんだ銃弾をフーフーして食べた。しかし熱かったようでハフハフしている。まるでたこ焼きを食べているようだった。
「タイタン…発砲されたばかりの弾丸なんて、熱いに決まっているだろ…お前は馬鹿なのか?」
「あー!偶冥さん、人にバカとかよくないですよ!」
「子供かお前は…で?どうだ?何の銃弾だ?」
「うーとね…ん…?なにこれ…?」
タイタンはどうやら、暴食とはタイタンの覚醒能力のようだ。覚醒の能力よってどんなものでも食べることができるみたいだ。そして、食べた物の性質がわかるみたいだ。
「どうした…?」
「なんか…なにこれ…?普通の銃弾じゃない…なんか…ガムみたいな…人工物って感じがする…美味しいには美味しいんだけど…いつもの火薬とか鉛とかの味じゃない…なんか…なんか、自然の味ではない…」
「なんだそれ…食感や形はどうなんだ?」
「ん~~…形、食感共々45口径が一番近いかな…?」
「なるほど…ありがとな、じゃあやるぞタイタン」
「え〜…戦いたくないんですけど」
「戯言を言うな。行くぞ」
そうしながら、タイタンは、渋々ショットガンを手に持った。
(やばい…銃なんて初めて使うのに…)
悠帆は強く焦りを感じていた。
「では…」
偶冥が鞘から刀を全て抜いた。その時、
悠帆の後ろからキセノンが現れた。
「!」
悠帆がキセノンの方を見ると、手をピストルの形にしていた。そして、キセノンも目が燃えていた。目には『気乗』と浮かび上がっていた。そして、その手を見ると輪ゴムがセットされていた。誰しも子供の頃、一度はやったことがある輪ゴム銃だった。
「…やはり能力者だったか…」
「お前…」
「悠帆さんだけじゃないきついと思うので…
離れていてください、」
そういうと、はキセノンは手を偶冥の方へ向けた。そして、
『 《数浮力》
〔アルキメデス〕 』
キセノンはそう言いながら輪ゴムを解き放った。
パァァン!
その輪ゴムは偶冥に当たらず、後ろの外灯に当たった。するとその外灯は、一部が吹っ飛び、倒れた。明らかに、能力を使った技だった。
「正面衝突は苦手なんですけどね…今回ばかりはしょうがないですね…」
「素人が2人集まっても、玄人には勝てんぞ…?」
「お兄さん、世の中には例外ってものが存在するんだよ?僕の何倍も生きてるのに…そんなこともわからないの…?」
強敵の前に焦っているのか、キセノンはいつもの敬語でなく、素の言葉遣いになっていた。
「めんどくさい…さっさと終わらせるか…」
そう言って、偶冥は刀を構えた。
「!?」
悠帆は、間合いが全然詰められていないのに刀を構えた偶冥を見て混乱した。しかし、
『 《蛍風》
〔ほたるかぜ〕 』
そう呟いて、偶冥は力強く刀を振った。
ビユゥゥン!!!
「!?」
「くっ…!」
「うわぁぁぁぁ!!!!」
刀はとてつもない強風を起こした。その強風は3人を強く建物に打ち付けた。
ドン!
3人は体を強く打ちつけられ、その場に倒れた
「さて…ではこの娘を連れて行くか…」
そう言って偶冥は、倒れているキセノンに近づいていった。キセノンは気絶しているようで、動かなかった。
「…まち…やがれ…」
「なのだ…まだ意識があったのか…」
悠帆は意識が朦朧になりながら、偶冥の足首を掴んだ。
パァン!パァン!パァン!
悠帆は偶冥に対して3発ほど銃を撃った。しかし、無慈悲にも銃弾は地面や建物に着弾した。
「キセノンに…触る…な…」
「…お前は生かしておこうと思ったが…しょうがない、邪魔だから死んでもらう」
そう言って、悠帆に向けて刀を振り下ろした。
「くっ…!」
悠帆は歯を食いしばった。
カキィン!
悠帆の頭に、頭蓋骨が割れる音ではなく、金属がぶつかり合う音が響いた。
「!?…」
悠帆は混乱した。目を開けてみると、一人の白髪で髪の長い、袴姿の女性が、偶冥の刀を受け止めていた。
「お主…政府の人間だな…」
「くっ…お前…!タイタン!」
「は、はい!」
タイタンはショットガンを構えた。しかし、いつの間にかショットガンは手から弾き飛ばされていた。
「…は!…」
ショットガンは、どこからか現れた別の女性に弾き飛ばされていた。ショートで茶色い髪の少し露出度の高い服を着た女性。手にはリボルバーを持っていた。その女性の動きはとんでもなく早かった。その動きに、タイタンは全く反応できていなかった。
「ダメだよ、巨人ちゃん…政府が市民に危害を加えたら…」
「なんで貴様らが…」
偶冥は白髪の女性の刀を振り払ってタイタンを守るようにタイタンのところまで下がった。
「なんでって言われてもね、このへんの治安を守るのが、」
「儂らの役目じゃからな」
女性二人は背中合わせで、刀と銃を偶冥たちに向けながらそういった。
「治安維持…私たちは正義と呼ばれなければいけない側のはずなんですけどね…」
タイタンがショットガンを拾いながら、ぼそっとそう呟いた。
「…タイタン、撤退だ」
「え!?なんで…」
「今、俺らとこいつらと本気でぶつかり合ったら、たぶん、この一帯が半壊してしまう…」
「なるほど…わかりました。イエス、マエストロ」
「やめろ、お前がそれ言うといろいろ危ない」
そう言いながら偶冥たちはどこかへ行った。
「お~い、青年よ。大丈夫か〜?」
茶髪の女性が悠帆にそう声をかけた。
「はい…だい…じょう…ぶ……」
「あ…気絶しちゃった…」
「でも、どうやら3人とも気絶しているだけのようじゃ」
「そうか、ならよかった」
「おや、あっちに倒れているのは…ネオンだったかのぉ…」
「お、ネオ…あのね、あの子はネオンじゃなくてキセノンだよ…」
「おぉ、そうじゃったか、すまぬ」
「まぁ、キセノンがいるってことは、ヘリっちに連絡すればいいかな?」
そう言って茶髪の女性はスマホを取り出して電話をかけた。