クリプトン大陸という陸地
「これがクリプトン大陸についての本ですね。活動する場所のことは知っておくのが賢明です」
悠帆は、さっきの『魔女狩りおよび能力者に関する法律および罰則』という本よりかは薄いが、十分厚い本を受け取った。
その本には金文字で、『クリプトン大陸』と書かれていた。これには、「土星偶冥著」と書かれていた。
「土星偶冥?」
「その人は、世界陸っていう土地を管理する政府の組織の担当惑者の王位九星さんです。私も名前しか知らないんですけどね…」
〘世界政府の人間でもあったことなんやからな。感謝するんやで悠帆〙
「はいはいわかりましたよ…」
「ぜひ読んでみてください。ここの図書館配属の人はいつでもこの図書館出入りできて、読書もできます。各階層には読書スペースもありますし、なんなら今から読んでもいいですよ。パラジウムさんも別の本を読んでますし」
「なるほど…じゃあ読ませていただきます。ありがとうございます」
「いえいえ、では私は最初いた机の所にいますので、何かあったら、声をかけてください」
そういつまでトコトコとウンブリエルは歩いていった。
一人になると、悠帆はヘリウムと通信をし始めた。
「にしても、あの人も本なんて書くんですね」
〘まぁ、偶冥はさっきウンブリエルが言ってた通り、政府の一機関のトップやからな。そういう仕事も回ってくるんやろ、〙
「ヘリウムさんもこういうめんどくさそうな仕事、回ってくるんですか?」
〘まぁ、回ってこないこともないな、うちの軍のお金やら…配属場所の指示とか…キセノンの暴走止めたり…ネオンちゃんが可愛すぎたり…〙
「最後関係あります?」
そんな他愛もない会話をしながら歩く。しばらく歩いて、ウンブリエル読書スペースだと言っていたスペースにたどり着く。まさかのオール個室だ。
ガラガラ…
引き戸を開け、椅子にそっと腰掛ける。
「個室なのはありがたいですね」
〘おお、個室か、でも誰かに聞かれるかもしれんから、相変わらず俺と話すときは小声で喋るんやで〙
「わかってますよ…」
そう言って机に本をドンと置き、硬い表紙をあける。
「どこから観るのが賢明でしょか…?」
〘ん~~やっぱ大陸の地理から見るのがええんやない?〙
「そうします」
悠帆は目次から『大陸の地理・気候』というページを見つけ出し、そのページを開く。
ペラ…
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『大陸の地理・気候』
ー地理の基本情報ー
面積 約1379万km2
人口 不定
面積としては世界第4位の面積を誇る大陸であり、一面を永久凍土で覆われている。
かつては『ツニート』と呼ばれる巨人種の少数民族が厳しい環境の中で、先住民として住んでいたが、政府の、かつての世界陸担当惑者によって別の大陸への移住を余儀なくされた。
しかしここ数年、『ツニート』の血を引く、子孫の者や一般市民から、先住権を認めることや、一部地域で住むことを主張する活動家や意見が多くなっている。特に、ツニートの宗教、『カジグカ教』の信者からは、先住権を強く主張されている。
ー主な地形ー
山脈 ウィリアム山脈
ラムゼー山脈
大河 モーリス河
トラバース河
地形の特徴として山脈や河が少ない。
山脈が少ない理由は、クリプトン大陸のほとんどが一枚のプレートの上に乗っているため、地殻変動が少なく、大地が隆起することが少なかったからと考えられている。実際、クリプトン大陸では、地震が1年に平均14回ほどしか起きておらず、それも、少し別のプレートに乗っている一部地域に限られるため、その説が濃厚である。
標高もあまり高くなく、最高峰であるグラスゴー山は標高1362mと、世界最高峰の、鸞孕大陸の幌山脈の雫山の8252mを大きく下回っている。
河が少ない理由としては、クリプトン大陸は約2億年ほどこの極寒の気候であるため、川を形成するための水が流れることなく凍ってしまうのが原因だと考えられている。
しかし、河は巨大であり、モーリス河は、現在は水が流れていないが、流れていたとしたら、流域面積は約650万km2と、世界最大級である。
P16
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ー大陸樹ー
木の種 亜ジャイアントセコイア
高さ 729m
円周 約5.9km
大陸を支える大陸樹。クリプトン大陸を支える大陸樹は、なぜか永久凍土にも生える特殊なジャイアントセコイア、亜ジャイアントセコイアである。
円周は大陸の面積と同じく各大陸の大陸樹の中で4番目であるが、高さは雲を突き抜け、729m物高さがある。この高さになっているのは、厚い雲を突き抜け、光合成をするためだと言われている。
根は高さに対してあまり深くなく、地下20m程しかない。しかし、他の大陸樹同様、大陸全土に根が伸びおり、大陸の自分を支えている。
樹木自体は、先住民ツニートの宗教、カシグカ教のご神体、および最高神『クルッジーアシュア』が宿っていると考えられており、現在も少数の巨人種や人間種から信仰されており、聖地とされている。これが、カジグカ教信者から先住権を強く主張されている原因だと目されている。
P17
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ー気候の基本情報ー
平均気温 約−12℃
平均積雪量 約35cm
主な気候区分 氷雪気候(EF)
ツンドラ気候(ET)
気候としてはまさに、別名をアネクメーネ大陸と言われているのも納得だろう。大陸全土が一年を通してほとんど雪の下に埋まっている。
また、一年を通して平均気温が0度を下回るため、大陸内に液体の水はほとんど存在することがなく、近海の水も凍り、流氷となる。
陸地には、ほとんど生物が生息しておらず、少数の渡り鳥が夏に生息する程度である。しかし近海には寒ブリやシャケ、イワシ、カミナラ、ショライなどの魚介類、オームナイト、メンダコ、ダイオウイカ、テイオウタコなどの軟体動物、シャチ、イルカ、セイウチ、イカイノキバなどの怪獣類、海底にはタカアシガニ、ダイオウグソクムシ、クリプトエビなどの甲殻類、その他様々な水生生物が存在している。
(詳しくはP245『大陸近海の生物』)
P18
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ー気温ー
過去最低気温 −76℃(鸞暦1481年12月4日)
過去最高気温 19℃(鸞暦1511年8月25日)
気温は平均気温が0度を下回り、この気温は、世界のどこを見ても下回ったことはなく、寒冷な地域は、鸞孕大陸の東端部、ネオス大陸北部のヘリオス列島、硫黄大陸北東部の弗列島などがあるが、その地域を凌駕する寒さであり、最低気温は−76℃であり、毎年冬には−60℃を下回る。
また、最高気温は北東部で過去に19℃を記録した事があるが、それ以降は夏に15℃を超えることは少なく、夏でも0℃を下回ることもゾラである。
P19
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ーその他の自然現象ー
・オーロラ
・白夜、極夜
・蜃気楼
オーロラは恒星から放出されたプラズマが惑星の磁場に引き寄せられ、極地の上空で大気の酸素や窒素原子と衝突することで発光する自然現象である。
南極圏や北極圏で確認することができ、南極圏に属しているクリプトン大陸では頻繁に確認される。
白夜、極夜はオーロラと同じく南極圏、北極圏で見られる現象である。主に自転の傾きにより起こる現象である。この地域では約半年昼が続く白夜と、約半年夜が続く極夜が起こる。
クリプトン大陸では、3月から7月までが白夜となり、9月から1までが極夜となる。極夜の間は、ヴァルハラの警備兵が強化される。
P20
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読み終わり、悠帆はぐったりとしていた。
「長いですよこれ…これ全部読めとか言われたわ俺は死にますよ…」
〘頑張るんや悠帆、知とは最大の武器やぞ、〙
「活字は苦手なんですよ…長編小説とか読めたもんじゃないですし…こんなのよく書けますね…偶冥にちょっと尊敬…」
〘まぁまぁ、自分のペースで読むんやで、〙
ヘリウムは悠帆をなだめながら、地味にまだ読むことを強要していた。鬼畜である。