大図書館"グリームニルの言葉"
「ごめんね、こんなに広くて…」
悠帆とパラジウムは、ウンブリエルに連れられ、図書館の中心部を目指していた。
「いえいえ、それはいいんですが…なんか…むちゃくちゃ暑くないですか、ここ?ウンブリエルさんも温帯地域の制服着てますし…」
「あぁ…それにはちょっと理由があってね…まぁ、中心部に行けばよくわかると思うから、もうちょっと頑張れ」
そう言われ、2人はスタスタと頑張って歩いた。
「お二人さん、ここがグリームニルの言葉の中心部だよ」
「…は?」
悠帆は上を見上げ、絶句した。
円形の建物は、200メートルほどしかなかったはずなのにも関わらず、頭上にある螺旋状に続く道は、果てしなく続き、霞んで、終わりが見えない。
「ここが熱い秘密…というか理由?です。ここは世界のありとあらゆる情報をかなり細かく、紙媒体で記録、保管しています、ゆえに図書館をどんどんと大きくするしかなかった。そこで、われら政府は、ほぼ無人であるここに作った、このヴァルハラという施設で、図書館を作り、それを地下へ地下へと拡大してきました。そしてその拡大はいまだに続いておます。現在最深部となっているここは、地下約1800メートルにあります。上の施設は、温度調節を調節する能力を組み込んだ機械で温めているんですが、ここは逆に冷やしているんです。地殻に近づくにつれてどんどんと暑くなるから。そして、その熱がここにも少し伝わってくることによって、ここは熱いのです」
「1800メートル…!?…そんな事が可能なんですか…!?」
「アハハ、驚きすぎですよ。そうですね、世界をまとめる世界政府ですもの、このくらいの技術、持っています。まぁ、この広い世界では、そんな能力を持った人くらい、ひっきりなしに出てくるってことですよ」
「…それと魔女狩りは、関係があるのですか?」
パラジウムがぼそっとそう質問する。その質問を聞き、悠帆が体の内からドクンと大きく打ち付けられた。そして、気持ちの悪い汁が体中から染み出てきた。
「ここの図書館には、政府の法律に関する情報がすべて載っています。せっかくですし、答え合わせはこの図書館にある法律の本を見つけに行きましょう」
そうして、3人は中心部にある転移装置に乗った。その間も、悠帆の中はグツグツと何かが煮えていた。
「ええっと…フロアΕ、区間Αへっと…」
転送装置を起動し、別のフロアへと転送される。
シュウウーーー…
「さぁ到着したよ…寒!…やっぱ上の方のフロアは寒いですね…」
「その恰好、ここでは寒そうですもんね」
パラジウムとウンブリエルが会話をする中、悠帆はずっと黙っていた。
〘悠帆、急に黙っとるけど大丈夫か?〙
「うわっ、びっくりした…」
〘あんま大きい声出すなよ?周りに気づかれるで〙
黙っておる悠帆を見かねて、ヘリウムが声を掛ける。
「いや…魔女狩り…て、政府の口から聞くとなんか…凄い変な気持ちになるんですよ…なんか…怒り…悲しい…恨み…全ての感情がぐちゃぐちゃと煮えて…気色の悪い気持ちになるんですよ…」
〘なるほどな…悠帆、そういうときは逆に考えるんや〙
「逆…?」
〘こういう時は、それの弱点を探すんや。例えば、嫌いな相手と話しているとき、そいつの嫌いなものや苦手なものを聞き出せれば、そいつの弱点をつけたりすることができる。それと同じように今回の魔女狩りの資料を見て、魔女狩りを潰すために弱点や欠点を見つけ出すんや〙
「なるほど…そう考えればいいんですね…助言ありがとうございます」
〘ええんやけで。頑張れ〙
悠帆は、少し明るくなった顔で、2人について行った。
「ん~~と…ごめんなさいね…お二人さん…どこにあったかちょっと忘れちゃった…」
ウンブリエルは、本を探してへとへとになっている。しかし本は見つかっていないようだ。
「大丈夫ですか…?」
「いやぁ、もうデータが膨大すぎてね…全部は覚えてられないんですよ…しょうがないから《《あれ》》、やります」
「あれ…?」
ボワァ!
そういった途端、ウンブリエルの目が燃える。能力だ。目には目印と浮き出ている。
《栞》
「へっと…ああ、あっちだ」
特に何の変化もないように見えたが、ウンブリエルには、何かが見えているようだ。
「その能力は何ですか?」
「ああ、これですか??これは目印者。自分の視界に、自分が触れたことのある物を
、光らせて見つけられる事ができる能力です」
能力の説明を聞いていたら、どうやら本を見つけ出せたようだ。
「これです。この、『魔女狩りおよび能力者に関する法律および罰則』という本です」
そう言いながらウンブリエルは明らかに重たい本を本棚から抜き出し、開いた。