チタニアとウンブリエル
外見の大きさに反して、内部の通路は簡素…というより小さかった。普通の商業ビルの通路とあまり変わらない広さだった。が、その普通の通路と普通の通路をつなぐ普通の通路が存在している。上下に存在している階段も張り巡らされ、まさに、人体を駆け巡る毛細血管のようだ。通路には職員が大量に移動したり、業務の話をしたり、時には休憩している職員もいる。
所々に、と言ってもかなりの数の部屋がある。医療室やら…通信室やら…いちいち部屋がでかい、多分、小さくてもコンサートホールくらいはでかい。マジで。
「今回は2つのグループに分かれてもらいます。2人は屋上の警備兵に、2人は『グリームニルの言葉』の情報整理をお願いしたいです」
「グリームニルの言葉って何ですか?」
メイコがオフィーリアに質問する。
「『グリームニルの言葉』は、ここの最深部にある図書館です。さっきうっすらと、外から200メートルほどの円形の建物が見えませんでしたか?それです」
「なるほど…なんでこんなに建物がでかいんですか?」
「それは、最深部の情報を守るためです。侵入者が入ってきても、最深部まではかなり遠いです。所詮、面積77,86万平方キロメートルのこの建物は、情報を守るための鎧でしかないのです。あ、あと断熱材、」
「…え?7786万平方キロメートル?さすがにでかすぎないですか…?」
「世界政府が管理する情報とはそんなにもしないといけないものなんですよ」
「はえ~…」
〘ほうほう…7786万平方キロメートル…これはいい情報聞いだで〜〙
ヘリウムさんがワクワクした声でウキウキでメモを取ってる音が聞こえる。楽しそうだ。
「まず、屋外の警備兵には2人…ネオンさんとメイコさんでしたっけ?お二方に担当していただきます」
「は、はい!」
「わ…わかりました…」
「では、そこの部署の担当の衛者のところまで連れていきますね」
そして4人はオフィーリアに連れられ、4人は謎の台に連れてこられた。
「みなさんこちらに乗ってください」
「なんだよこれ…?」
悠帆が小声でつぶやく。
〘まぁまぁ、見とけばわかるで、世界政府のめんどくさい装置や〙
キュイイイーーーン!!
「!?!?」
オフィーリアが、ホログラムの液晶パネルをポチポチしだしたと思ったら唐突に、台の縁が光りだしたと思ったら、立方体の骨組みのようなモノがレーザーポインターのようなもので組み立てられる。
その骨組みから、カーテンが閉まるように、上からホログラムのような、透けてる壁のようなものが、シャッターのように降りてくる。
「な、なにこれ…?」
「初めてですか?大丈夫ですよネオンさん、すぐ終わりますか」
透けている壁が、ガラスが結露するように、ぼやけて見えなくなる。
シュウウーーー!ガシャン!カタカタカタ…
機械音のようなものがしばらくなり、鳴らなくなると、ぼやけていた壁が少しづつはっきりとしてくる。
「!?!?!?」
「さぁ、到着しましたよ、」
そこは唐突に違う場所になっていた。先ほどまでは、普通の通路にいたはずなのにもかかわらず、現在は、武器がずらりと並ぶ武器庫のような場所に変わっていた。
「さ、行きますよ」
「ヘリウムさん、今のは何ですか…?」
メイコが小声で質問する。
〘今のは転送装置や。世界政府が持ってる技術だ。能力を機械に組み込み、応用できる技術らしい。これは転送者って能力を組み込んでるんやと思う。この技術も盗みたいんやけどなぁ…いかんせん難しいねん…〙
ヘリウムは、がっかりとした顔を多分しながらそう言った。
「チタニアさーん、例の人たちを連れてきましたー!」
オフィーリアは、リストを持ち、リフトに乗りながら高い壁にズラリと並べられた武器の点検をしている、長身の女性へ話しかける。172cmくらいだろうか?女性にしてはそれなりに高い。鋭い目つきをしており、いかにも軍事という感じがする。
背中には翼が生えており、腰辺りからウロコのついた太めの尻尾が生えている。明らかに龍種だ。その尻尾、むき出しだけど寒くないんですか?
「みなさんご紹介します。ヴァルハラ防衛担当衛者のチタニアさんです」
オフィーリアは、リフトを下げ、降りてきた女性の紹介をした。どうやらチタニアと言うみたいだ。
「いかにも、わたしが、世界情報神、第3衛者、チタニアだ。ここの防衛に関するすべての責任者だ。よろしく」
「よ、よろしくお願いします!」
「よ…よろ…しくお願いしま…す…」
メイコとネオンは緊張しながらそういった。
「こちらの二人は世界政府補助神のメイコさんとネオンさんです。チタニアさん、二人をよろしくお願いしますね。お二人はチタニアさんの指示をしっかり聞くんですよ」
オフィーリアがお母さんのように二人に言い聞かせる。
「はい…!」
〘ヘリウムさんが聞かなくていいって判断した命令は聞かなくてええで☆〙
「あ、はい…」
ヘリウムさんの、その発言ふざけて言うべきではないだろと言う、重要そうな発言を横耳に、悠帆とパラジウムは再び転移装置に連れてかれた。
「ではチタニアさん。よろしくお願いしますね」
「あぁ、了解だ」
「では、お二人さんは最深部へ行きますよ」
キュイイイイーー!シュウウーーー!ガシャン!カタカタカタ…
悠帆たちは再び転送装置によって違う場所へ連れてこられた。
「ここは…?」ウンブリエル
今度は、いわゆる図書館の司書がいるカウンターに移されてきた。とはいえ、本棚のない中央ににドンと居座っていた。
社長椅子のような椅子に堂々と座りながら紙に大量にさまざまなことを、万年筆でカリカリと書いている人がいた。まるで、小説家のようだった。外見的には、人間種か、もしくはドール種であると思う。
「ウンブリエルさん、レイの人たちを連れてきました」
「ん?ああ、オフィーリアさんですか、ありがとうございます。そちらのお二人ですか?」
「配送です!えっと、こちら世界政府補助神の、パラスさんと悠帆さんです」
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします!」
「お二人さん。こちらが、グリームニルの言葉担当衛者のウンブリエルさんです」
「こんにちはお二人さん。ご機嫌いかがかな?僕がグリームニルの言葉担当衛者、いわゆるここの司書だね。世界情報神の第2衛者、ウンブリエルだよ」
「お世話になります」
「よろしくお願いします!」
「お二人さんには、ここ、"グリームニルの言葉"の情報紙媒体の整理を手伝ってもらうよ」
ウンブリエルは優しく、二人へそう言った。