半減群と転移者
ー9日後 独龍大陸
・リウ地域の街 ヤアンー
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『独龍大陸』
大陸全土がスラム街と言っても過言ではないほど治安が悪く、地域差はあるが窃盗や暴行は当たり前。挙げ句の果てには殺人や暴漢さえも起きるほど治安が悪い地域も存在する、終わってる大陸。
大陸管理組織であるである半減軍が反世界政府組織であるため 一部地域を除き、 世界政府の手もあまリ届いてないため能力者も蔓延っている。6大陸の中で1番危険な大陸と言っても過言ではなく、逆に、一番安全な大陸と言っても過言ではない。
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「ええっと…『バー・マング』…ここか…」
カランコロンカラン…
悠帆はとあるバーに入った。店内はいたって普通のバーだったが、客が多く、賑わっていた。うるさい、バーと言うより、酒場に近い状態だった。客とは対照的にマスターは静かにグラスを拭いていた。
「…ご注文は…?」
「神山の水銀割りを…」
「なるほど…こちらへ…」
店の奥へ通さた。一見、バーのよう見えるそこは、半減軍の本部だった。
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『半減軍』
それは、独龍大陸政府、そして、世界政府が、最も危険視する反世界政府組織の通称。
発足したのは12年前と最近である。当時、ある1人の少年、現在の半減軍トップが世界政府へ恨みを持ったことが原因で発足した。
半減軍は、トップが1番上に1人。その下に最高戦力の7人「鬼凱子」(きがす)がおり、その下はあまり細かく決まっていなく、少しだけ上下関係があるが、あやふやである。
半減軍には部隊と呼ばれるものがあり、「戦術部隊」「技術部隊」「潜入部隊」の3つの部隊で構成されている。
規模が非常に大きく世界中で活動しており、世界の多くの人が認知している。しかし、所属人数は規模に対しあまり多くなく、構成員約130人程度。理由は、半減軍はジェリー種のみ、正式な構成員になれるからであるしかし、協力者を含めれば300人ほどになる。
協力者とは、協力者契約を結んだ者であり、基本的には、ジェリー種以外の種族。『人間種』『ドール種』『龍種』『巨人種』などが結ぶもので、これを結べば、構成員と同等の扱いを受けることができる。
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「すみませーん・・・?」
奥の窓口へ通されたが、人が1人もいなかった。窓口のカウンターに呼び鈴があったので押した。
「 はーい、ちょっと待っといてくださーい、今行きまーすんでー」
奥から関西弁の叫び声が飛んできた。人はいる。けれどなかなか人が来ない。
しばらく待っていると奥から白衣を着た青髪の小さな女の子が走ってきた。背格好的に12、3歳くらいだろうか?多分さっきの声の主ではないだろう。
「すいませんね、今色々と立て込んでまして・・・」
「いやいや・・・大丈夫ですよ・・・」
悠帆は少し戸惑っていた。
「ご用件は何でしょうか?」
「あ、協力者契約をしにきました」
「お!そうなんですか!ではその場合は奥でお願いします」
そう言ってさらに奥の部屋に通された。「では、こちらにお名前。こちらに種族、性別。こちらに生年月日と年齢。 こちらに契約動機。そして最後に印鑑がサインをお書きください」
「はい・・・わかりました・・・」
「お兄さんは、どうして協力者契約を?」
「世界政府を潰したいから」
「おぉ、お兄さん直接的ですねぇ」
「まぁいいじゃないですか。ていうか、半減軍ってあなたみたいな幼い方も所属しているんですね」
「そうですねぇ私、鬼凱子の1人ですから、いろんな人見てきましたけど・・・」
「え?鬼凱子……!?」
悠帆は驚きなが聞き返した。
「ああ、自己紹介が遅れました。私は半減軍最高幹部「鬼凱子」の7人のうちの1人であり、半減軍技術部隊副隊長の"キセノン"と申します。以後お見知り置きを」
「鬼凱子なんですか・・・!?え、何歳ですか!?」
「女性に躊躇なく年齢訊くのはナチュラルに失礼で草W。おっと失礼、素が出ました。私は12歳です」
「若ぁ・・・半減軍ってすげー」
「鬼凱子はもう1人12歳の子がいますよ。逆に、5000歳のお姉さんもいますよ。ま、今はそんなことどうでもいいんですよ。書類は書けましたか?」
「あ、はい。お願いします」
「はい、お預かりします。壁ノ実悠帆さんですね」
(幼いのにすごく丁寧だなぁ…)
悠帆はそう思いながら書類を手渡した。
「あとはトップのサインがいるで、もうこのまま貰いに行っちゃいましょう」
「今、トップがいるんですか?」
「トップと言ってもトップ代理ですけどね。いま、トップはいないので」
「そのトップは今どこにいるんですか?」
「世界政府です」
「・・・は?」
「うちのトップは結構ガンガン攻める人でね、自分から世界政府本部、『オリンポス』ヘスパイとして潜入しているんですよ。ほんと、すごい人です」
「なるほど・・・とんでもない人ですね・・・」
「まあまあ、あの人はそんな人間ですから。物心ついた時から何も変わっていません。組織のためなら何でもする。私たち幹部たちのことを第一に考えている。孤児だった実の拠り所のない、まだ1歳だった私を、拾ってくれた、そんなこの組織が、大好きです」
「…思ってたりより、半減軍ってすごいホワイトな組織なんだな…」
「そうですよ、まずそもそも、人を保護しているような組織がブラックだったら、それはそれで問題ですよ」
「…それもそうか」
そんな話をしながら廊下を歩いた。バーの奥にあるとは思えないほど複雑で広いな。地下に広がってるからまぁそうか。とか思いながら悠帆は歩いていた。
「おーい、トップ代理ーいますー?」
「その呼び方しんといてー」
「さぁせーん」
病室のような場所でキセノンが呼んだその先にはピンク髪の人がいた。関西弁。さっきの声の主だろうか?病室にはもう2人、人がいた。2人とも少女だった。1人はベットの横で立っているオレンジ髪の女の子。ピンク髪の人を見つめていた。背丈的に、キセノンと同い年くらいに見えた。もう1人はベッドに入っていた。服も、 この辺りというか、この世界ではあまり見ないものだった。何か異質な雰囲気が
「証明書に確認のサインをお願いします」
「おお、契約か、久しぶりの契約者やな」
ピンク髪の人は、「そんなこと、わかっていた」みたいな顔で、そう言った。
「なるほどなるほど・・・壁ノ実悠帆君やね、昨日見た通りやな。ほい、サインしたで・・・これで君も立派な半減軍の協力者・・・詰まるところ、ほぼ半減軍の一員や」
(昨日見た通り…?)
悠帆は、少し気になったが、スルーした。
「そういえば、まだ自己紹介やってないやん。忘れとったわ。俺は鬼凱子の1人で技術部隊隊長、そして半減軍トップ代理の"ヘリウム"や。これから色々あると思うがよろしくな」
「はい、よろしくお願いします…」
「あの…ヘリウムさん…」
横で、ヘリウムを見つめていた少女が話しかけた。恐る恐る、オドオドしながら話
しかけていた。
お?どないした?なんか困ったことがあるん?」
「えっとね・・・この女の子ね・・・さっきまでね・・・シブヤ?って街にいたんだって」
「そうなんか!ありがとうな!あとでまた詳しく教えてな!」
ヘリウムはさっきより、やけに笑顔でそう言って、その子の頭をなでなでした。
「ロリコン・・・」
悠帆は、ぼそっとそう言った。
「悠帆さん、それは言ってはいけないお約束。ついでに、ヘリウムさんはロリコンじゃなくてネオコンな人ですから」
「ネオコン・・・?」
「あの子はさっき言ってもう1人の12歳の鬼凱子のメンバーの"ネオン"。人と話すのが苦手でちょっと会話する時辿々しくなっちゃうことが多いけど、すごくいい子だからね」
「なるほどね・・・」
「さてと。では質問の続きを始めよう。話飛んじゃったからもう一回最初から質問するさかい、ごめんけど答えてな」
ヘリウムが、ベッドの上の少女に話しかけた。
「は・・・はい」
「彼女は誰?」
「通報を受けてね、路地裏で倒れている人がいるから保護してほしいって。駆けつけてみたらびっくり、みたことない服、数日間何も食べてないのか、顔色が悪かった。最初はマジでびっくりしたよ。さっき目を覚ましばっかなんだけど、あらびっくり、この世界のこと何も知らないの。うちは最初、記憶喪失かと思ったけど、記憶はバッチリ残ってて、けど彼女が話してることは逆にうちたちが何も知らない状態だったんだよ」
その少女は混乱しているような、怯えているような様子だった。
「まず名前と年齢は?」
「"遠獄メイコ"。年齢は15歳です…」
「出身地は?」
「日本の東京都千代田区です…」
「ここに来る直前。何していたんや?」
「渋谷で友達と放課後買い物していました…」
「ジェン語や鸞鏡語、英語という名前の言語を聞いたことがあるか?」
「英語という言語は聞いたことがあります。話すこともできます…他の言語は…生まれて初めて聞きました…」
「聞いたことない地名やな・・・出身地も今までいた場所も。極め付けは転来言語のみ知っている・・・これは確実に・・・」
「確実に・・・?」
「転移者やな」
「転移者・・・それなら何も知らないことに説明がつく・・・」
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ー転移者ー
この世界とは違う世界からやっきたとされる人々の総称。
転移者には、共通する特徴が存在する。転移者の共通する点として、
①例外なく人間種である。
②例外なく「地球」と呼ばれる少し技術の進 んだ天体から転移してきている。
③10歳以上30歳以下の人物である。
④五体満足で健康な人間である。
⑤突出した才能がある。
⑥この世界に大きな波紋を落とすようなほど影響を与える。
…という特徴が存在する。世界に大きな影響を与えるとは、革新的な技術を伝えるものもいれば、戦争などで多くの功績を残し、活躍するものもいる。
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「転移者…?」
「まあ簡単に言えばあんたは神表しにあってこの世界に来たっちゅうわけや」
「なる・・・ほ・・・ど・・・?神表し・・・?」
「神現しは人が急に現れる現象。神隠しの対義語や」
メイコまだ状況が飲み込めないようだった。当然である。唐突にこの世界に転移させられ、通過も身の拠り所もないまま数日が経ち、倒れて、起きたと思ったら、訳のわからないこと告げられているのだから。
「まぁ、とりあえず衣食住はこっちで揃えるから安心してな」
「あ…ありがとうございます!・・・」
「さて…この世界のことをいろいろ知ってほしいんやけど…せや、キセノン、このあとどっか行くってゆってなかったっけ?」
「あ、はい。ちょいと買い出しに…それが?」
「この世界のこと、いろいろ知ってほしいからメイコちゃん連れてってくれ。ついでに悠帆もついてってくれ。女2人はちょっと不安やから」
「え?俺もですか?」
「まあええやないの。さあ、行った行った」
そう言ってヘリウムは悠帆達にそう言って外に出した。
「…なんなんだ…あの人ろ」
「…あの人は前からあんな感じですよ。飄々としていて、けれど、なんか先を見てるような…そんな感じなんですよ。まぁ、言われた通り買い出し行きましょう。メイコさんも行こう。体、もう大丈夫?」
「あ、はい…。大丈夫です…」
「では2人とも行きましょう」
そうして3人は外に出た。
「あの…ヘリウムさん…」
「ん?なんや?ネオンちゃん」
「倒れていたとはいえ、転移者を名乗る人を何の疑いもなく、そんな簡単に保護してよかったんでか?…」
「あれは正真正銘本物の転移者や。起きる前に、少し彼女の身体を検査したら、転移者にしかない特徴があったんや」
「え・・・・あ・・・そうなんですか?」
「後、ええか?ネオンちゃん」
ヘリウムはネオンの目を見て、真剣な眼差しで語りかけた。
「俺たち半減軍は確かにどんな組織か問われると、世界と敵対している反政府組織だ。だけど、トップが前こんなこと言っていた。『我々は反政府組織である以前に、困っている人には手を差し伸べ、壁にぶつかったのなら協力して、人に、世界に、感謝と偉大なる愛を持って生きなければいけない。それが革命家である我々のあるべき姿である』ってね」
「・・・つまり・・・?」
「俺たちはどんな人にだって手を差し伸べ、助けなければいけなあかん。世界をつぶそうとしている我々が言うのは、矛盾しているかもしれへんけれど、そうするのが正しい。そうするのが、俺たちの掲げる正義やと、俺はそう思うんや」
「なるほど・・・」
「しかも、昨日見えたんや。今日、世界が変わる導火線に火が付くって」
「…つまり…?」
「これとさっきの状況重ねてみい、転移者と革命を志す青年。これはもう、 世界がこれから変わりますって世界が言うてますやん。これはもう昨日見えた縁のことでしかない」
「…なるほど…さすがです…"縁産者"なだけありますね…」