12年前…?
ヴィーーーーン!!ヴィーーーーン!!
音割れした、気味の悪いサイレンが、街を越えて、山や川まで駆け巡っていた。スチームパンクの街の建物は崩れたり燃えたり、はたまた破片が宙に浮いてる物もあった。まさに混沌的な状態だった。
「あーあー、えー、抵抗しても無駄でーす、すみやかに出て来なさーい」
気だるげな声でそう言っているのが拡声器を通して聞こえる。声の方を見ると政府の者たちが、前線を押し上げるように横一列で迫ってきていた。
一般市民達は逃げ惑ったり、隠れる者、どうにか一矢報いてやろうと思う者、倒れている者、はたまた残酷にも体を欠損したり、亡くなってしまっている者もいた。
「主犯格ーさっさと出てこーい、じゃないと市民全員捕まって、死者所行きになるぞー、刑務所送りだぞー、見殺しにする気かー?」
「お前ら…!なんでこんな事ができるんだ!…」
片腕を失った男性が、12ほどの娘らしき少女を庇いながら震えた声で叫んだ。
「文句なら最高議会組織である神位八星に言ってくださーい。そいつらが世界法律を決めてるので、この方法を変えるにはそうするしかありませーん、我々はそいつらの指示に従ってるだけでーす」
世界政府の奴らは市民の発言に無慈悲にも、理不尽にも踏みにじり、進軍してきて、人々を拘束していっていた。
「そっちの建物、もう確認終わりましたか?」
「ああ、この辺一体の建物は調べ終えたぞ、おそらく、もう隠れている人間は見当たらなかったぞ」
崩れた建物の中に2人の政府の男がいた。1人は長身の大柄なスーツ姿の男、もう1人は、政府の制服を着ている華奢で小柄な男だった。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
その2人の近くの物陰に1人の、5,6歳くらいの少年が息を潜めていた。顔は青ざめ、悲しみとも怒りとも取れる表情をしていた。
「次はあっちの方の確認ですね…なんでこんな残酷なことやんなきゃいけないんですかね…正直傷ついてる市民を見るのきついんですけど…」
「まぁしょうがない、俺だってここまで悲惨な状況、政府に属してきて2回目だ」
「なんでこんなことやるんですかね…」
「しょうがない、これに関しては、政府のトップの…」
「ハァ…ハァ…クッ…」
会話をしている男たちを見て、影に隠れていた男の子は、つばを飲み込むと大人の拳ほどの大きさの建物の破片を拾い上げると、
「オラ!…」
男達の方に投げた。
「!?!?」
「誰だ!」
バァン!
投げた破片は、長身の男の左目に直撃した。
「だぁ!…ハァ…ハァ…ハァ」
悠帆は飛び起きた。酷く寝汗を掻いていた。悪夢だ。
「悠帆ー?起きたか〜?」
ヘリウムの声が聞こえる。呼ばれたようだ。艦内はよく声が響く。
「今行きます」
悠帆は寝汗を拭い、ペットボトルの水を一気に飲み干して、ヘリウムが呼ぶ方へ向かった。